第七話 妹。もしかしたら最強
それからというもの、いろいろなことがありすぎて、もう覚えていない。
「やっと二人が帰った!」
「兄貴うるさい!」
お前のほうが、声大きいぞ。
リサはだらりと、ソファーに横になってマンガ雑誌を読んでいる。
「織田さんとアドレスを交換してうれしいのはわかるが、おとなしくしろ」
ソファーから立って俺の方へ近づいてきた。
「今日は機嫌がいいから、食べようと思ってたアイスあげる」
渡されたのは、水色のパッケージのアイスキャンディー。
「お前から何かをもらったのは、一体何年ぶりなんだろうな」
「たまに、お菓子とかあげてんじゃんか」
「ありがたくいただこう」
今は七月。丁度いい。
パッケージを開け、ガブッと二、三口かじると、棒が見えてくる。
確か、このアイスはくじが付いていたな。あたりなのか、はずれなのか、気になるところだ。
「なあ、兄貴って、星屑クラブに入んないのか」
「何で、お前が名前を知ってるんだ」
「織田さんにメールで教えてもらった」
余計なことを。
「兄貴ってさあ、小説書き始めたころから全然学生らしいこととかしてねーと思うんだよね。だから、部活くらいしてみたら? 高校生なんだし」
リサが、そんなことを言うなんてな。
「お前、織田さんと仲良くしたいだけじゃないのか」
ぺしっと、頭を軽くたたく。
「いいじゃねーかよ。ほっとけ」
やはり、そういうことか。らしくないとは思っていた。
「あ、そだ。兄貴~今度勉強教えて~。来年、桜庭学園の中等部の入試受けることにしたから」
「何だと」
「だ、か、ら、来年桜庭学園の中等部に入りたいんだよ」
「誰がだ」
「あんたの妹が!」
俺の顔面に向かって、天才格闘家少女の妹の足が飛んできて、完全に俺の意識はブラックアウトした。