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星屑クラブ  作者: 氷月 蓮
其の一
32/37

第二十九話  ライブ。最終確認

「真!」

 ウェイトレス姿となった天乃が、俺のもとに来る。なかなか似合っていて、夢の中と同じくしばし見とれる。

 教室の奥にいる中田が、こちらをニヤニヤとみてくるが気にしない。

「どう?」

 スカートを翻し、その場でクルリと一回転。

「似合ってるぞ」

 そう答えると、少しむすっとした。ほめたつもりなのだが。

「かわいい?」

「か、かわいいぞ」

 言うだけで恥ずかしい。

「よかった。今日、ライブって一時からだよね」

「ああ。そうだったと思う」

 

 ピーンポーンパーンポーン。

 校内放送だ。

『学園祭準備中に失礼します。十時より学園祭が開始されます。実行委員会の皆さんは、職員室前に集合してください……』

 よく通る声で、放送部の生徒が言った。

 級長がすぐ、教室に集合するように呼びかける。

 最終確認を行う。ほとんど、レジ係の俺に関係ない内容だったが。

「では、今日一日楽しみましょう!」

 校内放送がやがて流れ、学園祭の開始を生徒会長が宣言した。

 

「お、あれ面白そうだな!」

 なぜか偶然会った中田と二人で校舎の中を回っているころ、放送が始まった。綾乃しのの放送だ。

『初めまして。綾野しのです!』

その瞬間、廊下がうるさくなる。

「綾野しのだってよ! 今の聞いたか」

「聞いた」 

 なんせ、これは俺が仕掛けたものだしな。ちゃんとできているか、確認するのが当然だ。

『今日、午後一時から、講堂で星屑クラブの皆さんとライブをします。ぜひ見に来てください』

 放送はそれだけ。

 よし。これが流れたということは、俺のそろそろ会場の黄道の方へ行かないとな。

「おい! 今のどういうことだよ!」

 半分パニック状態になっている中田が、俺の肩をゆすってくる。

「そのままのことだ。この放送が流れたんで、俺は部活の方へ行かせてもらう」

 急いで講堂へ向かう。

 途中、早瀬と会った。

「僕の制服って、確かソラが持って行ってくれたんだよね」

「予定ではそうなっている」

「この服、本当にいい迷惑だよ。足がすーすーする」

「もう少しで脱げるんだから、我慢するしかないだろ」

 講堂という名前が付いているが、ほとんどホールのような講堂に正面からではなく、後ろに回り、大道具などを入れるための大きな扉。その横にある入口からなかに入る。

 楽屋や給湯室が並んでいる。

「早瀬の制服はこっちにある予定だ」

 と、一〇二号室を指さす。

「じゃあ、着替えてくるね」

 俺は、一番大きい楽屋、一〇一号室に入る。

 中では、天乃と叶先輩。そして東雲が待っていた。

「茅蜩は着替えだな。友華と閏は舞台裏の方で最終確認をしている」

 叶先輩と天乃は、椅子に座ってのんびりと紅茶を飲んでいる。東雲はメイクやら衣装の準備やらをしている。

「そんな余裕でいいんですか」

「焦ったって仕方ないだろう。もう、後はすべて綾芽と観客の反応次第だ」

「まあ、そうですけど」

 東雲は、メイク台の前でクルリと回る。

 すでに、どこからどう見ても綾野しのだ。

「よっしゃ! 完璧」

 相変わらず、普段とキャラが違うな。

「お待たせ」

 ちょうどいいタイミングで、早瀬も着替えを済ませ、いつも通りパーカーを着て首にはヘッドフォンをかけている。

「しの。もう、大丈夫だよね」

「もっちろんです。ヒグラシ」

「じゃ、確認いくよ」

 早瀬は、楽譜などが入っているファイルを持つと、東雲と楽屋を出ていった。

 すぐに、音楽が流れ、綾野しのが歌っているのが聞こえてくる。


 俺も確認をするため、楽屋をでる。

「――で、これを押せばいいんだな」

「うん。そうそう」

 すでに、最終確認にはいっている。

 今は、織田さんが音響設備の使い方の確認を早瀬に取っているところだった。

「マコくん。通信機の電池大丈夫かな」

 ユーさんが、俺の周りをぴょこぴょこウサギのように飛び回っている。

「昨日確認しました。大丈夫ですよ」

「これつけてると、警備員の人みたいだね」

「……そうですね」

 そのあたり、正直どうでもいい。

 が、通信機は何かが起こった時に必要になるな。

 叶先輩より、このライブの総監督を任されているので、そのあたりはしっかりしておかなければ。

「全員、集まってくれ」

 叶先輩が、天乃を連れて楽屋から出てきた。両手には、ビニール袋を持っている。

 音楽が止まり、東雲はステージから回ってきた。

 時計を見ると、観客の動員まであと五分。

「ライブの間、綾芽以外はこれを着てもらう」

 渡されたのは、ユーさんと織田さんが一緒に作ったと明らかにわかるTシャツ。

「あ、この前作った奴か」

 織田さんは、知っているらしい。

「女子がピンク。男子が黒だ。今着ている服の上からで構わない、すぐにきてくれ」

 ユーさんはすぐに叶先輩からビニール袋を奪い、中からTシャツを出して着た。

「やっぱ、こうこないとだよね!」

 ご機嫌だ。

「僕は、パーカー着ててゴワゴワするから、着替えてくるよ」

 と、Tシャツを一枚出すと、楽屋へ戻っていった。

 叶先輩に俺も渡され、その場で着替える。大きめのサイズにできていたので、着るのに苦労はしなかった。

「天乃と椎名は、もうここを会場して観客を誘導してくれ」

「はい」

「うん」

 あらかじめ舞台裏に置いておいたダンボールから、パンフレットをだして、天乃がそれを。俺は机を持ち、正面入り口でそれらをセットした。

 入口前には、すでに大勢の人々が列を成していた。

「ただいまより、開場します。こちらでパンフレットを受け取ったから、中に入ってください」

 天乃が、メガホンを使ってライブを楽しみにしている人々に呼びかけた。

 渡して、渡して、渡しまくる。

 いったい何人来てるんだ? 

 やはり、綾野しのの名前はものすごい。

 客の中には、クラスメイトもいて、

「頑張れよ」

 と、声をかけてくれる。


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