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星屑クラブ  作者: 氷月 蓮
其の一
30/37

第二十七話  家族ごっこ。夢の中

 ピピピッ。と、間覚まし時計が俺を叩き起こそうと必死に鳴っている。

「あ~はいはい」

 枕元に置かれているスイッチ―を切り、ベットから起き上がる。

「……どういうことだ」

 なぜか、自分の部屋にいる。

 昨日の寝る瞬間まで、織田さんと早瀬に挟まれ、次郎で寝ていたはずなのに。

 一階の方からは、とてもいい匂いがしてくる。

 気になり、一階へ降りる。ダイニングの方は、明かりがついている。

「誰かいるのか」

 ドアを開け、中に入る。

「おっはよ~。マコくん」

 ユーさんが、エプロン姿で料理している。

「真。起きてきたのかよ」

 ダイニングでは、織田さんが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる。

「……ユーさん、織田さん。これ、どういうことですか」

「ユーさんじゃなくて、ママでしょ~」

「織田さんじゃなくて、パパだろ」

 二人ともニヤニヤしながら言う。

 これ、夢だな。夢確定だ。

「ふふ。二人は今日も元気だな」

 と、叶先輩はリビングでソファーに座り、くつろいでいる。

「か、叶先輩?」

「先輩じゃないぞ。私は閏んの姉だぞ? どうしたんだ」

「いえ。何もないです。すいません」

 ガチャッと、ダイニングのドアが開いた。次は誰だ。

「おはよー」

「おはよう」

 早瀬と東雲か。

「おはよー。……マコお兄さん」

「前から思ってたけどっ、あの世に行っちまえっ」

「兄に向かって言うことか」

 こういう流れだったら、東雲も俺の妹だろう。

「今日も我が家の双子は元気がな」

 織田さんは、うれしそうに言う。

「ハヤくん、シノメン。トースト焼けたよ!」

「「はーい。いつもみたいに、墨はやめてよ」」

 ハモっている。って、ここでも墨をかけている設定なのか。

「え~。やな匂い消すのにさ」

「「それはスミはスミでも違うスミ」」

 二人並び、ダイニングの椅子に座る。

 ユーさんが、その二人の前にキッチンから持ってきたトーストを置く。

 天乃がいない。

 一体、どのポジションなんだ。

「ユーさ、じゃなくて、母さん。天乃は?」

 はたして、この呼び方であっているのだろうか。

「さっすが愛妻家。気にするね~」

 あっ、愛妻家?

「今は、お庭のお花に水やりしてくれてるよ」

 開いている席にトーストを置き、俺に座るように言った。

 とりあえず座り、ただ焼いただけのトーストを一口かじる。よかった。普通の味だ。

「よし。私はそろそろ行ってこよう」

 叶先輩はソファーから立つと、スーツを着てカバンを持った。

「数学者は大変だね~。行ってらっしゃい」

「ああ、行ってくる」

 スーツがすごく似合っていて、キャリアウーマンといった感じだ。

 ダイニングからでて、もう家からも出たかと思えば声が聞こえてきた。

「天乃か。驚かせないでくれ」

「叶さん。もう行くの?」

「今日はいろいろあるからな」

 玄関に鍵のかかる音がし、天乃がダイニングに入ってきた。

「おはよう、真」

「……」

 しばし停止。

 いつもは結んでいない髪は、ゆったりとした三つ編みにされ、桜色のワンピースの上からは淡いオレンジのカーディガンを着ている。似合いすぎている。天乃のためにあるとしか思えない。

「どうしたの?」

「な、何もない」

 炎が出ているのではないかと思うほど、顔が熱い。

「ひゅーひゅー」

 織田さんが、冷かしてくる。

「顔、赤いよ。熱でもあるんじゃ」

 一歩、近づいてきた。

「大丈夫だ」

 俺は、一歩下がる。

「心配」

 天乃は、また一歩近づいてくる。

「だ、か、ら、大丈夫だ」

 俺もまた後ろに一歩下がった。その時に何かにつまずき、そのまま後ろにしりもちをついた。

 今がチャンスだと思ったのだろう。天乃が、俺の上に乗ってきた。

「じっとして」

 天乃は、右手で肩をつかんできた。

 ぐっと天乃の顔が近づき、彼女の左手が俺の額に当てる。

「熱、無いだろ」

「ん~。よくわからない」

「よし、だったら大丈夫だな」

 頼むから早く降りてくれ。いくら夢の中だったとしても!

「理性なくすなよ」

 織田さんが、のんきにコーヒーを飲みながら俺に言ってくる。

「な、何言ってるんですか!」

「いっけいけ~早く孫の顔がみたいよ~」

「話を変えるな!」

「仕方ない。おでこをくっつけるという昔ながらの方法を使うしか」

「天乃、大丈夫だ。俺から降りてくれ」

「妻として心配してるのに、ひどい……」

「そこまで言ってないだろ」

「いっけいけ~」

「母さんは黙って!」

 天乃が前髪をあげた。

 ただ額を合わせるだけのはずなのに、顔がものすごいスピードで近づいてくる。

 それじゃあ、ただの頭突きだ。

「うあぁぁ!」


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