第二十四話 夢。家族ごっこ(?)
久しぶりんび投稿!!
「はぁ。これは死んだな」
あたりは見渡しても、どこまでも何もない真っ白な空間が続いている。
俺の肉体というものはどこにもなく、意識だけがふわふわと浮いている。
「まさか、織田さんがつくったグラタンに殺人能力があったとは」
完璧人間だと思っていたが、完璧な人間なんてこの世にいないことを思い知らされた。
「でも、逆に言うと、ある意味すごいのか」
人を殺せるわけだしな。
ところで、三途の川はどこだ。天国への門はどこだ。または、地獄への扉か?
死んだのだったら、さっさと次へ進めてくれ。
「真!」
遠くから、天乃の声が聞こえてくる。
ははは。
「死んだ俺の肉体に声をかけても、何も起こらないぞ」
いったところで 、聞こえているわけがないか。
「マコくん起きろ~」
ユーさんの声まで聞こえる。
俺の最後の言葉が、
「お世辞にもうまいとは言えません」
だったのが少し心残りだが、仕方ない。
「真、起きて」
天乃の悲しそうな、今にも泣きそうな声が聞こえてくるが、死んだから無理だな。
最後、もう一度天乃の笑顔を見たかっ――
「がッ!」
俺の腹部に、激しい痛みが走った。
「なかなかいいパンチだぞ。閏」
「そんなことねえって。これ本気じゃねーし」
って、おりたさんのせいか。この激痛は。
パッと、目を開く。
どうやら、死んでいなかったな。
「よかった」
すぐ目の前には、半泣きの天乃の顔。
だから、声が一番大きく聞こえたのか。
自然と、顔が熱くなっていく。
「マコくん、顔赤いよ~。ヒューヒュー」
からかってくるユーさんを、俺はにらむ。
俺と天乃周りで叶先輩たちが立っていることと、周りの風景から調理室の床に寝かされていることが分かった。
「誰が、枕持ってきてくれたんですか」
向こうで座っている早瀬か。それともそこでPSPのゲーム。なんかロリっぽいキャラが映っているから、いわゆるギャルゲーか。を、している東雲か? 違うな。
「真。今の状況を楽しんどけよ。こんなことめったにないからな」
織田さんは、ニヤッとしながら俺に言うが、どういうことだ。
「よかったね、マコくん」
「よかったな。椎名」
「ユーさん、叶先輩。どういうことですか」
「いい加減に気づいたらどうだ。せっかく天乃が膝枕をしてくれているというのに」
なんだと!
上を向き、天乃お顔色を窺う。
こくりとうなずく。顔が耳まで赤い。
「ラブラブだな」
叶先輩。それはちょっと違う気がする。
「……」
普通の女子ならば否定するところを、天乃は否定せずただただ俺を見ている。
目が合うと、少し視線を逸らした。
「二人とも、否定しないんだな」
と、この状況を楽しむかのように笑う叶先輩。
先輩トリオは、俺の天乃に対するものに気が付いているということか。
「お、重いだろ。もう大丈夫だと思うから、どくぞ」
「うん。わかった」
立つとまだ少しふらふらするが、大丈夫だろう。
「マコ。まだ横になってなくて大丈夫?」
「大丈夫だ。もう殺人グラタンは食べないしな」
「ひどいな~その言い方」
織田先輩。自分のせいだろ。
テーブルを見ると、皿からはグラタンがきれいになくなっている。
「グラタン、どうなったんですか」
恐る恐る聞いてみる。
「オレが、すべておいしくいただいた。なかなかいい味だったろ」
味音痴なのか。織田さん。
「で、悪いんだが、茅蜩と綾芽の料理は食べてしまった」
「何でですか」
少し気になっていたんだが。
「君が一時間以上気を失っているのでな。つい」
時計を見ると、九時を回っていた。
なら仕方ないか。