第十九話 登場。少女
そして、一時間がたった。
「まだなのか?」
一人、せっせせっせとダンボールを開けながらぼそっとつぶやく。
「椎名くんお待たせ! はっかり~ましょ!」
元気にメジャーをビューっと伸ばし、小山がこっちに寄って来る。
「はいはい」
やっとか。
「では、腕をお伸ばしくださいませ」
敬語がおかしいぞ。言うんだったら、正確に言ってもらいたいな。
言われるがまま、腕を伸ばす。
「腕の長さ、結構平均的だね」
「だったら言わんでいいだろ」
「ごめんごめん。なんとなくだよ」
やれやれ。
サイズを測るのはすぐに終わり、やっと教室から解放された。
すぐに教室を出て、校門へ向かう。
早瀬、かなり待っているだろうな。申し訳ない。
校門まで行くが、早瀬らしき人物はだれもいない。
いるのは一人の少女。と、それを取り巻く三人の男子生徒。きっと、先輩だろうな。
どうやら、何か話しているようだ。
「君、何かこの学校に用事?」
「案内しようか。校舎の中とか、迷路みたいなもんだしさあ。迷ったら大変だよ」
と、ナンパする先輩方。
「いや。結構です」
遠慮する少女。
「いいじゃんか。こっちは親切に言ってるんだしさ」
「それか、どっか遊びに行く?」
一瞬、少女と目が合ったような気がした。中性的な顔立ちだ。
俺に向かって手を振ってくる。
「何だよ。あいつ彼氏?」
「……違うけど。友達。今から、一緒に行かなきゃダメなところがあるんだよ」
「んだよ。つまんねーな」
「行こうぜ。学祭の用意しなきゃいけねーし」
と、少女から離れて校舎へと戻っていった。
「ええと。大丈夫か?」
なんとなく、声をかけてみる。
「……」
少し不機嫌な顔で、長い髪をサラサラと揺らし、こちらに近づいてくる。
どこかで、見たことのあるような顔だ。
「マコ」
何で、俺のあだ名を知っているんだ?
と、驚いていると、再び話し出す。
「僕だよ。茅蜩早瀬。何で気が付かないのかな」
衝撃。
頭のてっぺんからつま先まで見てみても、ただの少女だ。
「は、早瀬か?」
「だから、そうだって言ってるじゃんか」
初めてあったころから中性的な顔つきだとは思っていたが、女装をするとこうなるんだな。
「さっき、織田さんがマコの着替えとかは持ってきてくれてたから、もうマコは家にもどらなくてもいいよ」
「早瀬は、どうするんだよ」
「叶先輩に車出してもらって、もう取りに行った。マコが遅かったからね。……まだ信じてないでしょ。ほんと、失礼だと思うよ」
にらんでくる。
「わ、悪かったな。でも、誰にそんな恰好させられたんだ?」
「そういう話は、買い出しでもしながら」
早瀬が、先輩たちから持たさせられたと思われるかわいらしいバックからメモを出す。
「まずは、手芸店だね。ここから歩いて十分くらいのところだよ」
どうやら、織田さんが注文していたものを取りに行くということらしい。学祭で使う、衣装だそうだ。
あははははは。タイトルの少女、早瀬だったね!!
(自分できめたけど)