第十八話 呼び出し。教室に
叶先輩は、一通りの説明をおえたらしく、自分の椅子に座った。
「さすが、小説家だ。脳の八十パーセントがアイデアで埋め尽くされているんじゃないか?」
「そんなわけないでしょ」
「いやいや。ただの冗談だ。では、椎名の案でいくぞ」
「やった~!」
ユーさんははしゃぎまくる。
「早瀬。曲って一曲大体どのくらいで作れそうだ?」
スケジュールを立てるため、確認する。早瀬は、少し悩むと答えた。
「僕の中の予定では、三曲作るつもりなんだけどね……その三曲で頑張って二日かな」
早いのか遅いのか俺にはよくわからないな。
「私は、とりあえず企画書を校長に届けてくる」
叶先輩、いつの間に書いていたんだ? 仕事が早いな。
部室から飛び出して行った。その時、俺の方を見て笑ったように見えたのだが、いったい何だったんだ。悪いことが起きなければいいんだが。
「よし。ついでに校内宿泊の許可も取ってきたぞ」
「何するつもりですか? っていうか、早かったですね」
「校長が丁度そこにいたからな。で、合宿をするぞ。朝から夜まで作業をしないと、間に合わないだろ」
やっぱりそうか。
「でも、間に合うと思いますよ。最近はインターネットとかもありますし」
「椎名。わかってないな。合宿なんて面白そうなこと、高校生活でしかあとはできないと思うぞ」
「そういうことですか」
「マコくんのってないな~。だめだよ」
「ユーさんは静かにしましょうよ」
「よし。オレ、家からいろいろ取ってくるわ。ちょっと出てくるからな。それに、さっき教頭に呼び出しくらったし」
呼び出されたのか。
「わたしも、いろいろ取ってくる」
「僕も、ギターとか必要なんだけど」
それぞれ、必要なものがあるんだな。
「わかった。では、一度それぞれ自宅の方へ戻り、学校に宿泊する用意をしてきてくれ」
みんなが帰宅の準備をする中、織田さんだけがさきにふらふらと部室から出ていった。
それとすれ違うように、咲原が入ってくる。
「どうかしたのか? 星華がここに来るのは珍しいな」
と、叶先輩はドアの咲原のもとへ行く。
「か、叶先輩じゃなくて……」
咲原の右手人差し指が、俺を指した。
「し、椎名くん。ちょっとだけクラスの方に来ていただけませんか? 衣装の採寸ができてなくて」
そういうことか。
「わかった。すぐに行く。ちょっと行ってきます」
「できれば、そのあとちょっと買出しに行ってもらいたいのだが。茅蜩と一緒に行ってもらえないか? 君の着替えなどは、閏に持ってきてもらうということで」
「はい。わかりました。終わったらここに戻ってこれば……」
「いや、待て。校門前の方にしろ」
なぜだ。
「……わかりました」
「そうだ。よし。行ってこい」
叶先輩が、なぜか笑顔で許してくれたので、部室を出る。
閏さんが、俺の家まで取りに行くのか。少し不安だが、何もしないだろう。きっと。
「ハヤくんもらったああ!」
「うわあああああ!」
「何としてでも捕まえろ!」
部室のドアを閉めた直後、そんなユーさんと早瀬、叶先輩の声が聞こえたが、無視だ。
俺が歩き出すと、咲原は少しあとをついてくる。
一体、いつの時代の奥さんだ。
教室のドアを開けると、採寸してもらっている中田。
「よお」
と、体を動かすので、採寸をしてくれている女子に動くなと注意される。
「できるだけ早く部室の方に戻りたいのだが」
咲原に言う。
「え、えっと……じゃあ、今、誰も手が空いていないんで、あそこのダンボールを開けておいてもらえませんか」
あそこって。
教室の隅に、大量のダンボールが積まれている。
「整理すればいいんだな」
「はい。お願いします」
ブンッ。と頭を下げる咲原。
大げさすぎるだろ。
まあ、言われた通りにダンボールを開けては中身を出し。開けては中身を出し。と、ただただそれだけの作業を繰り返す。
なんかタイトルが徐々にテキトーになってる