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星屑クラブ  作者: 氷月 蓮
其の一
17/37

第十六話  早瀬。危機に面する!?

「誰か、捕まえろ!」

 突如、廊下からおおきな声が聞こえた。

「何だよ、今の声。ひったくりでも校内で出たのか」

「本当に、なんだろうな」

 教室のドアを開け、廊下を見る。

「あそこは知ってるの誰だ?」

 中田も見る。

 走っているスピードは、少し速め。制服である半そでのシャツの上から、パーカーを着ている。首には、ヘッドフォンをかけているのがちらちらと見える。

「あれ、早瀬だな」

 あいつも、運動できたんだな。インドア派だと思っていたんだが。

 にしても、いったい何が起こったんだ。

「中田くん。体育の授業の時、足速かったよね」

 級長が、中田にふる。

「よし。任せろ」

 捕まえるのか。

 中田は廊下に出ると、いわゆるクラウチングスタートの態勢をとる。

 すると、ビュン! と、床を蹴り、前に飛び出した。

「速いな。あれは、全国クラスだろ」

 そのまま、早瀬を追う。

「よし」

 中田が、叫んだ。

 が、あと少し。というところで、早瀬はこけた。

「あ……」

 天乃が、声を漏らす。

 こけた。何もないのに。顔面から。

ビッターン! と、いうおおきな音が響いた。

 痛そうな音だ。

 中田は、倒れた早瀬に引っかかり、そのまま早瀬よりも少し遠い所へ吹っ飛んだ。

 早瀬は、額を押さえながら立ち上がった。

 俺は、教室からその現場へ向かう。

 C組からも、級長らしき男子生徒が一人出てきた。

「茅蜩さあ、くじで学祭のコスプレが『女装』になったからって、逃げるのはないだろ」

 その生徒が、早瀬を取り押さえて話す。

「本能からの行動だよ」

「俺は、お前が男用のくじのはずれを引いたのはよかったと思うぞ。今三年の姉貴が言ってたが、上の学年の先輩たち……主に女から絶大な人気があるんだよ。かわいいって」

 慰めるように言う。

「そんなことを言われたって、なんの励みにもならないよ。運動部のむきむきたちに着せた方がおもしろいよ」

 早瀬、それはそれでどうかと思う。

「はじめは、こっそり女用のくじを引かせようと思っていたところを、親切に男用のにしてやったんだぞ」

「もっとたちが悪いよ。高木くん。で、僕はA組を手伝えばいいんだよね」

「おう」

 どうやら、C組の出し物の話だろうな。

「早瀬。C組は何をするんだ」

「あ、マコ。C組は、『隣のクラスを手伝います。コスプレサポーター』ってやつだね」

「どういうことだ」

「A、B組のお店の手伝いを、コスプレして手伝うっていういたって簡単なものだよ。そっちは?」

「こっちか。こっちは、カフェだ」

 高木とかいう、C組の級長が反応した。

「ウ、ウェイトレスの恰好とかするのか」

 がしっと、肩をつかまれえる。

「そ、そうだな」

 高木が、ふふふ。と笑う。

「茅蜩。ウェイトレスの衣装を着ろ」

「いやだよ」

「級長命令だ」

「級長にそんな特権があることを、僕は今まで知らなかったよ」

 そんな時だった。

「ちょっと待てよ、一年ども!」

 どこからか、そんな声。

「閏先輩。どこにいるんだろうね」

「今の声、織田さんなのか」

「うん。マコは気が付かなかった?」

 音楽をしている人は耳がいいというが、こういうことなのかもしれないな。

「お前、高木……だったか。本当にウェイトレスで満足してるのか?」

 再びどこからか織田さんの声。

 あの人は、何を言っているんだ。

 突然、織田さんが廊下の窓ガラスを蹴破り、廊下に着地する。

「どっから入ってるんですか。窓割って」

 俺は、恐ろしいことに慣れ始めているが、今まで織田さんのことを爽やかな人だと思っていた中田と高木は固まっている。

「まあ、窓からだろうな」

「もういいです。織田さんに常識が通用しないのはわかりました」

「閏先輩。頼むからこれ以上しゃべらずに教室に帰ってよ」

 早瀬が何かを悟ったのか顔が蒼白へと変わっていく。

「もう一度聞くぞ。本当にウェイトレスで満足しているのか。もっと高みを目指さなくていいのか!」

「だから、もうやめてって」

 織田さんは、早瀬の言葉を完全に無視。

「もちろん思うであります!」

 高木は、なぜか敬礼をして答えた。……って、日本語が何か変だぞ。

「俺も、ちょっと気になります」

 中田までそんなことを言い出す。

「早瀬、安心しろ。何も痛いことなんてしないんだからな」

 くいっと、織田さんは自分よりも身長の低い早瀬の顎を少し持ち上げ、腰を支えて抱き寄せる。

「ここ、校内なんですけど」

 そういったところで、織田さんには通じないだろう。

 二人の体勢は、いかにも一部の女子が喜びそうなものだ。

 早瀬の瞳からは、光が失われていっているように見える。

「高木。さっきオレの質問に『はい』って答えたよな」

 どこからか、紙の束をだし、宙へばらまく。

 いつの間にか教室から来ていた天乃がそのうちの一枚を取ったので、見せてもらう。

「かわいい」

「げっ……」

 先が天乃。後が俺の反応。

 それは、織田さん――OZが書いたと思われるデザイン画。

「なんでメイド服」

 早瀬が、げっそりとした表情で聞く。そろそろ、精神的な負担が限界まで来ているように見えるが、大丈夫か。

「織田先輩、さすが!」

 と、高木。

「冗談じゃないよ」

 早瀬にとっては、そうだろうな。

「スカート短いな」

「これが普通なんじゃないか? 最近は」

「私はかわいいからいいと思う。早瀬、これはどう」

 天乃が、床にばらまかれたうちの一つを見せる。

「僕、女装するとか言ってないんだけど」

「いいから選んで。というより、これを着て」 

「へえ、それが女子目線ってことでことか。よし、すぐに用意させる。サイズは、制服を作った時のが学校の方に残ってるはずだしな」

 天乃からデザイン画を受け取ると、それだけを持って、今度はちゃんと階段を使い、教室の方へ戻っていった。

 それを見て、C組の早瀬と高木も自教室に戻っていった。

 天乃は、堕ちているデザイン画をすべて披露。

「これ、かわいいからもらってもいいよね」

 なぜ、俺に聞く。

「いいんじゃないか? 気になるんだったら、後で聞けばいいだろ」

「うん。そうする」

「ところでよ、このガラスとかはどうするんだよ」 

「……」

「……」

「……」

 誰も、考えていなかったな。

「と、とりあえず先生に見つかる前に」

 と、ガラスを拾い集める中田。

 やはり細かい物は危険だと思ったのか、大きい物だけを拾っていく。

 割れたガラスを拾ったところで、窓が割れているのは一瞬で分かるんだから、拾ったところで意味がないと思うのだが。

「ちょっと、あなたたち! さっきの音はなんですか」

 廊下の向こう側から、カツカツとヒールを鳴らし教師の誰かが来た。

「やべっ、教頭だ!」

「わたし、あの人苦手」

 二人がそういうのだから、かなりの人物なんだろうな。

「そんなことを言っている間に、こっちへ向かってきているぞ」

「と、とりあえずなんとか――」

 その言葉を言い切る前に、教頭がついてしまった。

 割れたガラスを一度見た。

「いったい何が起こったのか説明してもらえますね」

 威圧感が半端ない。

「え、ええとですね」

 中田がビビりながら起こったことをすべて話し始めた。

 教頭は時々、分厚いメガネのレンズの向こうから俺と天乃の方も見つつ、中田の話を聞いている。

「織田閏が、そんなバカげたことをするはずがないでしょう。変わっている部分もありますが、そこまで異常なことはするような生徒ではないですし」

 先生から、どんな風に見られてるのかわからんな。

「本当のことですよ」

 ちょっと俺もイラッと来たので反論してみる。

「ここにいるのが、あなた達だけなのだから、一番初めに疑うのは当然でしょう」

 この学校の教師は、まともだな。まともすぎるのもいやだが。

「先生って、担当の教科理科ですよね」

 いきなりどうしたんだ。天乃。

「ええ。それがどうしたんですか、月見里さん。私には、関係がないように思うのですが」

「わたしたちが割ったんだとしたら、ガラスは外側に飛び散ってるはずでしょ? わたしたちは中側にいたんだから」

「そんなもの、外で割ってからこちら側に戻ってこればいいだけの話でしょう」

「織田先輩がガラスを割った時、C組の高木くんと茅蜩くんが一緒にいました」

 先生がおされている。すごい……はずだ。

「そうですか。では、後で織田閏に確認を取っておきます」

 覚悟しておいてください。と言い残し、教頭は去って行った。

 それから、すぐに教室の方へ天乃とカバンを取りに行くと、もう部活の時間となっていた。


織×早ってアリなのかな?

とかとか、ここの部分を読み直してる時に思ってしまったり……

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