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星屑クラブ  作者: 氷月 蓮
其の一
13/37

第十二話  親父。帰っている

 ガチャリ……

 誰かが、家に入ってきた。

 というよりも、ここにいる人物以外に、家に入ってこれる人物は一人だろう。

 帰ってほしくない人物が、帰ってきた。

 その男は、玄関に靴が一足多いのに気が付いたのだろう。

「おい。他人を家に上げるなと言ったはずだぞ」

 家じゅうに、その声が響いた。

「今の声、誰?」

 何も知らない天乃は、玄関へ向かおうとする。

「待て!」

 俺は小声でそういって天乃の腕をつかみ、外へ出ないようにする。

「今の声は、父親だ。とりあえずどこかに――」

「どうしよう……どうしよう」

 リサは、おびえて膝を抱えて震えてる。

「お母さんが何とかするから。みんなおとなしくしておいて」

 母さんは、一人リビングから出ていく。

「リサ、ゲーム隠しとけ」

「う、うん」

 テレビを消し、出していたゲームを二層になっている棚の奥に隠す。

「何で焦ってるの?」

 天乃は、一体何が起こっているのかわからず。といった状態で、小声で俺に聞いてくる。

「いろいろ迷惑かけるかもしれないが、今は静かにしておいてくれ」


 バンッ。

 勢いよく開けられたドアの音に、天乃とリサが驚く。

「誰が、他人を家に上げたんだ」

 威圧感のある声で、俺たちに聞く。

「その娘は誰だ」

「わたしは、月見里天乃です」

「月見里……天乃だと?」

 親父は少し驚いたようだが、すぐに今までと同じ態度に戻る。

「真くんと高校で同じクラスで、星屑クラブに所属しています」

「星屑クラブ? はっ、真。そんな得体のしれない部活に入るのはやめろ。俺の顔に泥を塗るつもりか」

 得体のしれない。という部分は、少し認めよう。

「まだ、ライトノベルなんぞというしょうもない小説とも呼べないような小説を書いているんだろう? それもやめろ」

「お前な……」

「――ない」

 俺が、おやじに反論しようとすると、天乃がなにか言い出した。

「許さない! どんなに有名な政治家の人だったとしても、星屑クラブの仲間をバカにするのは許さないし、許されない! それに、真の小説は、あなたにそんな風に言われるような作品じゃない」

 普段おとなしい天乃が、そんな風に怒鳴ったので、驚いてしまった。

「他人は、口をはさむな」

「他人だけど、仲間をバカにされたら、そうせざる負えない」

 いつもの冷静さを失い、俺の落ち着け。という言葉は届いていない。

「黙れ。と、言ったつもりだったのだが」

「黙らない。真に謝って」

「はっ。なぜ謝る必要がある?」

「真の才能を否定した! それが許せない」

 なかなかいいことを言うな。親父には、まったく届いていないだろうがな。

「まったく。いつ桜庭学園はこんなガキどものたまり場になったんだ。私がいたころは、もっとまともだったというのに」

 親父は、卒業生だったのか。

「こんな『クズ』が集まるような部活、理事長に連絡し、消してもらおう」

「……っ!」

 確かにどうしようもないクラブだが、そこまでする必要はないだろう。

「天乃ちゃん。悪いけど、一人で帰ってくれる?」

「はい。じゃあね、真」

 怒りが収まらないまま、天乃はカバンを持って帰って行った。

「客人を家から追い出すのが、有名な政治家様のすることか?」

「家の主人の許可もなく家に入ったものなど、客ではない」

 どこまでストレスをためさせるんだ。

「今まで食ってこれたのは俺が働いてきたおかげだろう。少しは従え」

「全部、汚いことにつかってるだろ」

「なっ……」

 昔、おやじの机の上に置かれていたレシート類や、ケータイを見ておいてよかった。犯罪だと分かってからはしてないが、今も続けているだろう。

 親父は、胸ポケットからケータイを出す。電話がかかってきたらしい。

「なんだ。……そうか。すぐに戻る」

 電話を切る。

「仕事が入った。しばらくまた帰ってこれないだろう」

「そうですか。お気をつけて」

 そうして、嵐は過ぎ去った。

「終わった~」

 リサは、バタリと後ろに倒れる。

「天乃には、謝っておかないとな」

「そうね。天乃ちゃんには、お父さんがひどいことをいっていたからね」

「親父のことだから、本当に廃部にするだろうな。こっちも、先輩に伝えておこう」

「頑張って、真」

「はいはい」

 俺は、自分の部屋に戻り、すぐにケータイで今日新しく登録した叶先輩の電話番号にかける。

 すぐに、叶先輩は出た。

『もしもし。どうしたんだ?』

「ちょっと、話したいことがあって……」

『そうか。では、お前の家から一番近いコンビニへ向かってくれ。迎えを送ろう』

「はっ?」

『ではな』

 ぶち。切られた。よくわからんが、行くしかないだろう。

 ぴろろーんと。メールが来た。

 叶先輩からだった。

 泊まりになるかもしれない。着替え等を持ってこい。

 という内容だった。

「どういうことだ」

 適当なカバンに、宿泊するのに必要なものを一式つめ、それをもって一階に降りる。

 二人は、ダイニングで紅茶を飲んでいた。

「あら、どうしたの? カバンなんてもって」

「ちょっと、いろいろあって今日は外に止まってくることになりそうだ」

「そう。もう夜だから、気を付けてね」

「じゃあ、行ってきます」


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