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星屑クラブ  作者: 氷月 蓮
其の一
12/37

第十一話  学園祭。来週

「みんな、遅れてすまないな」

 叶先輩が、プリントを持って入ってきた。

「こんにちは~っ」

 電話が終わったらしく、東雲は叶先輩に挨拶をした。

「綾芽、今日は来れたのか」

「今日だけっ」

 叶先輩は、プリントを自分のデスクに置くと、パンッと手を打ち注目させた。

「閏は取材で、友華は個展の用意で、今日来れないらしい。なので、ここにいるものだけに話すが、来週は学園祭だ。そろそろ今まで放置していたこの議題を解消しておかなければいけないのだが……何をしようか」

「叶先輩。俺のところにクラスとか、何もしていなかったような気がするんですけど」

「そうだ。この学園では、学園祭の一週間前から準備期間というものがあってな。その期間は授業がすべてなくなる。どれだけ早く作業ができるか。と、言うことが問われるものとなっているな」

 教師の中にも、かなりの変人がいると見た。

「みんなの得意なことを合わせたのをしたい」

 と、天乃。

「いいんじゃない?僕は、それに賛成だよ」

「わいも」

「俺もそれでいいんですけど、共通点がほとんどないので、難しいんじゃないですか?」

「それもそうだ。考えようか」

 今いる全員で考える。

「お化け屋敷? お茶屋さんとか?」

「ソラ。それって絶対誰かの一芸使われないと思うよ」

 と、いうことで天乃の案はなし。

「はいっ」

 東雲が手を挙げた。

「何か思いついたのか」

「思いつかないから、家で考えてくるのはっ」

 時間がないのに、そんなにゆっくりしていていいのか。

「そうか。明日からは、準備期間ということで自由投稿になっているが、絶対来いよ。仕事がない限りで構わないからな」

「はーい」

「うん」

「わかりました」

「あ、叶先輩。僕と綾芽、仕事あるから明日来れない」

「そうか、残念だが、仕方がないな」

 話が終わり、全員それぞれの作業に入った。


 プツリ。と集中力が切れ、時計を見たらもう下校しなければいけない時間になっていた。

「そろそろ帰る時間だ。鍵を閉めなければいけないので、早く出てくれ」

 その声で、一斉に片付けが始まる。

「椎名。悪いが、アドレスなどを教えてくれないか」

「わかりました。赤外線通信でいいですよね」

「ああ。頼む」

 ケータイをだし、叶先輩のケータイにくっつけ、送信ボタンを押した。

「届いた。これを、ほかのやつらにも送っていいか? 連絡を取り合うときに必要だからな」

「いいですよ」

「全員、メールを受け取ったら後で椎名にメールを送っておけ」

 すると、叶先輩はメールを送信したらしく、至る所からケータイのメロディが流れた。

「マコ。空メールでいいよね」

「自分の名前だけ打ってくれ分からなくなるからな」

「うん。わかった」

 するとすぐにメールが来た。

「ほら、急げ。悪いが、メールは下校中に頼む」

 全員ぞろぞろと部室からカバンを持って出て、最後に叶先輩が鍵を閉めた。

「解散!」

 早瀬はもう下駄箱にむかって歩きだしているのに、叶先輩はそういった。


「真。途中まで一緒に帰ろ」

 下駄箱で靴を履きかえていると、天乃がそういってきた。

「いいぞ。帰り、電車か?」

「うん」

 靴を履き替え、校門へ向かって行くと、一台の車が停まっていた。

「こんな時間に学校に用かな?」

「そうだったら、駐車場のほうに止めないか」

 遠目でよく見えないが、井口さんのものとは違う、もっと小さい。

 一人、そこから降りてこちらに手を振っている。

「天乃の知り合いの人か?」

「わからない。ここからじゃ暗くて」

 相手は、俺たちが気づかなかったことが分かったのか、何か叫んでいる。

 どこかで聞いたことがある声だった。

「真~」

 俺の母さんか。

「俺の母だ」

「真のお母さん? 挨拶しないと」

「いいって。おい!」

 天乃は、俺の言葉を最後まで聞かずに走って行ってしまった。

 もちろん、俺はそのあとを追う。

「真、やっと気が付いてくれた。そちらの御嬢さんは?」

 俺の隣の天乃を見る。

「月見里天乃です。初めまして」

「あなたが天乃ちゃん? もう暗いし、家まで送ってあげるから、早く乗っちゃって」

 ほらほら。と、強引に車に連れ込む。

「真も乗りなさい」

 そういわれ、俺は後部座席。天乃の隣に乗り込む。

「母さん、この車どうしたんだ」

 見たことの無い車の中をぐるりと見渡す。

「これ、実は応募したキャンペーンで当たったから、前の車は売っちゃったの」

 恐ろしいほどの幸運だな。

「わざわざすいません」

「いいのいいの。よかったら、うちの家をでご飯を食べてって。真も喜ぶから」

 母さんが、俺を見てにやにやと笑う。

「じゃあ、お邪魔させていただきます」

「真、いい子見つけたわね」

「はいはい。早く出発しないのか? リサが家で待ってるだろ」

「ふふふ。そうね。じゃ、二人ともシートベルトしてね」

 エンジンがかかり、車は家に向かって出発した。

「私、友達の家に行くの初めて」

 突然、隣の天乃が話始めた。

「今まで行ったことなかったのか?」

「うん。中学校のとき、あやちゃんと遊びに行ったりもしたけど、それよりも前は学校に行っても一人だったし、ほとんど学校にも行ってなかった」

 なんとなくわかるような気がする。

「物心ついたころには、もうお父さんの研究を横で見てた」

「お前の父親って、天文学者なのか」

「うん。小学校に入ってからは自分の研究を始めて、論文を書き始めたころは、ほかの子がすごいって言ってくれたりもしたけど、論文を発表してからは学校にまでマスコミが来るようになって、みんな遠くから見るだけになっちゃった」

 俺とはちがうな。

「天乃ちゃんも大変ね~。着いたわよ。さ、降りて」

 外を見ると、最近引っ越してきた我が家。

「これが、真のおうちなんだ」

 俺と天乃は、車から降りる。

「お父さんは、何してる人なの?」

 思い出したくもない父親のことを聞かれ、返事が遅れてしまう。

「政治家だ。テレビとかで見たことだあると思うぞ」

「そんなにすごい人なんだ」

 玄関で鍵を開け、先に天乃をなかに入れる。

 リサの靴が、散らかってる。なので、きれいにそろえる。

「妹がいるが、気にしなくていいからな」

 ダッダッダ。と二階から誰かが。というか、リサしかありえないのだが。降りてくる。

「兄貴おかえり~。って誰? 彼女! 妹のリサです。兄をよろしくお願いします」

「リサ。違うぞ」

「まだ彼女じゃないけど、よろしくお願いします」

「まだってことは、これから?」

 天乃は顔を赤くして下を向く。

「リサ、困ってるからやめろ」

「はいはーい。ご飯食べてくの? お父さんがいないから、ゆっくりしてっていいよ~」

 母さんも家に入ってきたので、とりあえずダイニングに向かうことにした。

 リサがお茶を運んできたので、ゆっくりと飲んだ。

「ユーちゃんと閏さんがここに来たって言ってたから、わたしも来てみたかった」

「あそこに母さんが 来てよかったな」

「あそこに、真のお母さんがいなくても、ここまでついてきてたと思う」

「だから、一緒に帰ろうなんて言ったんだ」

 一口、おかわりをしたお茶を飲もうとする。

「一緒に帰りたかったのは、本当だよ」

 ブー。

 お茶を噴出した。

「ごほっげほっ」

「兄貴、汚い」

「大丈夫?」

 天乃は、リサが自分が拭くといっているそばからテーブルを拭く。

「遊びにきたのに、ごめんね」

「いいの。気にしないで」

「ところでさ、何で天乃さんは兄貴を部活に誘ったの。なんでさ」

 リサが、天乃に聞く。

 キッチンからは、母さんが夕飯を作っている。野菜を切る音と、いい匂いがしてきた。もうすぐできそうだ。

「えっと」

 顔を赤くして、黙り込む。

「みんな~ご飯できたわよ~」

 天乃が、ほっとした。

 母さんがオムライスを盛った皿を運んでくる。

「おいしそう」

「冷凍庫のなかにアイスがあるから、後で食べてね」

「アイス!」

 天乃、やっぱりアイスが好きなんだな。

 全員腹が減っていたからか、時間を争うかのようにオムライスを食べ、そのままアイスも続けて食べた。

「ごちそうさま」

 一番早く食べ終わった俺は、食器を重ねてキッチンへもっていく。

「真、早いね」

 まだアイスを食べている天乃は、視線をアイスから変えずに言った。

 その手は、止まることを知らず、ひたすらスプーンでアイスをすくい、口に運んでいく。

「おねーさん。アイス食べ終わったら、ゲームしよ」

 溶けかけのアイスを食べながら、リサは天乃に言う。ってお前、いつから天乃をおねーさんと呼ぶようになったんだ。

「でも、そろそろ帰らないと……」

「少し遊んでやってくれ。帰りは、母さんが家まで送るから」

「どうしよう……」

 と、少し考える。

 少しでも遊んで行ってくれると、おとなしくなって助かるんだがな。

「どう? おねーさん」

「いいよ。お父さんに連絡する」

「やった!」

 天乃はケータイをカバンを出すと、短いメールを打った。

「妹がいるっていいね、楽しそう。わたし一人子だから」

「そうか? うるさいだけぞ」

「ふふ。また今度も来ていい?」

「いいぞ。母さんとリサが喜ぶ」

 リサは、テレビゲームの用意をしている。そのため にテレビをつけると、人気のバラエティー番組が流れていた。レギュラーの芸人たちがひな壇に並び、最前列の中心にゲストが座ってる。

「しのが出てる!」

 最近大人気の、綾野しのという高校生アイドルだ。あ、そういったらリサに怒られる。

「わたしも知ってる。声がきれいだし、かわいい」

 知っているのが当然のような人物だからな。確か、小学生下声優になり、デビュー作でヒロイン役に抜擢。たちまちその演技力、表現力が大人顔負けだということですぐ有名になった……らしい。いわゆるアイドル声優と言われる奴だな。

 妹がそういう物のファンになると、いろいろ聞かされて大変だ。

「真は、知ってた?」

 ちょうど椅子から立ち上がるところだった俺は、天乃に聞かれたので、椅子に座るなおす。

「何をだ?」

「あやちゃんが、綾野しのだってこと」

「はあ?」 

 驚いて、大声をだしてしまった。

「兄貴、なに? 大きい声だして」

「い、いや。なんでもない」

 こいつに言うと、またうるさくなる。

「おい、天乃。一芸は二学期まで秘密にしておかないとダメだって言われなかったのか」

「言われた」

「だったら、言っちゃダメだろ」

「だって、同じクラブの仲間だもん」

 それもそうだが……

「おねーさん。兄貴~。用意できた!」

 番組が終わったらしく。ゲームの用意を終わらせたらしい。

「何のゲームをするつもりだ?」

「これとかどう」

 と、出してきたのは,カーレースのゲーム。

「面白そう。やろっか」

 と、なぜか天乃の闘志に火が付き、二人はゲームを始めた。

 俺は、仲間外れか。

「おりゃ~っ」

 カチカチと、コントローラーを操作する音が聞こえる。


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