序章 少年。星空のもとで……
評価などなど、よろしくお願いします。
「ねえ、あなた。星って好き?」
それが、俺が初めて聞いた彼女の言葉だった。
突然、彼女が橋の手すりに身をゆだねた状態で、空を見上げたまま言った。
「はあっ?」
夜空には、静かに星がキラキラと輝いている。
六月という何とも中途半端なこの時期に、桜庭学園の高等部への転入が決まった俺。
こんな変な時期だというのに、編入を許してくれた理事長に感謝だ。
「だから、あなたに聴いてるの」
今度は、しっかりと俺の方を向いて言った。
「へぇっ!」
この時、やっと俺に向かって言われていたんだと実感し。返事をしようとしたら、声が裏返ってしまった。
「どうなの?」
「あぁ……まあ、好きな方だな」
なんとなく、そう答えた。
「そうなんだ。わたしと同じね」
名前の知らない彼女は、静かに、優しく笑った。
その笑顔は、とても可憐だった。とても儚げで、この夜だけの幻のようで。
俺は―――
―――心をうばわれた。完全に、恋に落ちたのであった。今までこんなことはなかったというのに、はっきりとそう思った。
「そろそろ、家に帰らないと。
バイバイ。また明日ね」
彼女は、自分の足元に置いていたカバンを取ると、手を振って橋の向こう側へ向かって歩いて行った。
「また明日」
俺も、もうこちらを向いていない彼女に向けて、手を振った。
「ん?」
そして、俺は気が付いた。何かがおかしいことに。
「『また明日』って、いったい……」
それは、俺が桜庭学園に転校してから二週間がたったころだった。