最終話『恋の魔法が世界を包む』
さぁついに運命の2月14日が来ました。
今回は里香目線で物語が進みます。
爽やかな朝!!
窓から差し込む朝の光!!
ん〜気っ持ちいい〜っ。
私は、ブラのホックを留めながら、いつものように自分を姿見に映し何度も繰り返す。
キレイになぁ〜れ
キレイになぁ〜れ
今日は、ついに2月14日バレンタインデー!!
私…少しはキレイになったかな!?
やっぱり『おまじない』なんかには頼らない!!
わたしは、わたし…
いくらライバルが多くても、私はこの里香っていう自分自身で、先輩にぷつかってやる!!
私は姿見にうつった下着姿の自分を上から下までゆっくり眺める。
……ん!?
私はなんとなく殺気を感じ、後ろを振り返える。
―――孝介!?
……いる訳ないか…
そっかアイツいま病院のベッドなんだもんなぁ…
『男にはっ……守らなきゃなんねぇ……ぎっ!!…もんがあるんば……がぁっ!!』
何が守りたいものよ!!
何を守りたいんだかしらないけど、ホントにバカなんだからアイツ!!普通、足首骨折してんのに、15kmも走るヤツどこにいるっての!?
あーヤダヤダ!!
やっと私の前から消えてくれたのに、ナニ私は孝介の事なんて思い出してんだろう…
今日は私にとって大切な日なんだよ!!
そんな事を考えながら、時計を見ると…あぁぁ…ヤバい!!遅刻する!!忙がなきゃ!!
着替えを済ませた私は、鞄の中に、キレイにラッピングした手作りのチョコレートを入れ、急いで玄関を出る
「ちょっ…孝介!!ヤバい遅刻する!!バイクに乗せて!!」
私は、隣の孝介の家の庭先に走る。
……あっ
そうか……いる訳ないよな…
入院中だもん。
どうしたんだろう私!?
さっかから…
孝介の事ばっかり思い出してる…
『ずっと里香が好きだった……』
孝介の家の庭先には、いつも孝介が可愛いがっていたバイクだけが、寂しそうに留守番をしていた。
その日のお昼休み。教室はどことなしか、いつもよりざわついていた。
もうすでにチョコレートを渡した女の子。そして嬉しそうに照れてる男の子……いろんな顔が教室には溢れていた。
しかし……1年生の棟には、ほとんど女子は残ってなかった…
みんな、窪田先輩目当てで3年生の棟に行ったんだろう…
私は、そっと鞄の中のチョコレートを握りしめる。
私の気持ち…
…ちゃんと伝わるかな
―――そして
いよいよ部活も終わり、夕焼け空が私の影を長く長く写し出した。
よし!!いよいよだ!!
私は覚悟を決め、校舎の影で、窪田先輩が出てくるのを待つ。
神様お願い…!!
どうかこの一瞬でいいんで『恋の魔法』を授けて下さい!!
―――来た……
窪田先輩は、サッカー部の連中を引き連れ、こっちに向かって歩いてきた!!
―――お願い神様!!
私は先輩のもとに走る…
「窪田先輩……っ!!」
「おぅマネージャーどうした!?」
―――ヤバい!!
告白するって、こんなに緊張するの!!
……私は…ムリだよー!!
先輩の顔を前に、心臓の鼓動が早くなりすぎて息ができない!!
―――助けて!!
お願い神様―――!!
「なんだ!?マネージャー!?キミも……チョコか……!?」
どれくら無言が続いたんだろう…
口を開いたのは先輩だった…
「マネージャー悪りぃ。チョコならオレ入らねぇ。アイツらにやってくれ。アイツらまだ誰からも貰ってねぇみたいだし…。」
窪田先輩は、いきなり私が後ろに隠しもっていたチョコレートを手に取り、部員たちに渡す。
部員たちは、私のラッピングをビリビリに破き、チョコレートを食べ始めた……
「うわっ!!ウメーこれっ!!窪田さん…これ超うまいっスよ!!」
「うん、うん、窪田さん、コイツのチョコ、形は気持ち悪いけど、なかなかうまいっスよ!!」
……えっ!?
……えっ!?
なんで……
なんでなの……
それ……
私が、先輩への想いをを込めて作ったもんなんだよ…
なんで他の男の子に食べられちゃうの……
私の瞳からは、涙がポロポロ…ポロポロ…落ちてきた。
ひどい……
―――ひどいよーっ!!
言いようのないくらいに心が痛かった。
ブァアアアアアアア!!
えっ……
ナニこの音……!?
言いようのない悲しみ包まれ、私の手作りのチョコレートを、他の男の子たちに食べられてるのを、ただ呆然と見ているだけ私の耳に……なんか聞き覚えのある音がはいってきた。
この音はまさか……
―――孝介!?
後ろを振り返えると……
なんと右足にギプスを巻きつけた孝介が、バイクに乗って校舎に乗り込んできたのだ!!
バイクから放たれるそのエンジン音は、どこか怒りに満ちており、耳をふさぎたくなるような爆音が校舎に響き渡る。
「ちょっ……孝介!!あんたナニやってんの!!そんな足で!! ってゆーか、なんでバイクごと校舎の中に入って来てんのよ―――!!相変わらずムチャクチャなんだらか!!」
しかし、孝介は、私の声には全く耳をかさず、バイクを停めたかと思うと、その痛痛しい右足を引きずりながら、こっちに向かって歩いてきた……
「お前かぁ―――!?」
「あぁぁあー!?」
「お前もかぁ―――!!」
なんと、孝介はフラフラになりながら、思いっきり、サッカー部の部員をひとりづつ殴ってゆく。
その表情は、真っ赤に染まり怒りに満ち溢れている。
「お前も里香のチョコ食ったのか!?」
「お前も食っただろー!!」
「ふざけやがって……!!どいつもこいつも!!」
「里香を悲しませるヤツは絶対ぇ許せねぇ!!」
……孝介
そして最後に先輩の前に立った孝介。
「窪田ぁ―――!!お前なぁ……お前が絶対ぇ許せねぇ……!!」
「何がお前ぇ学校中の人気者だよ……ふざけやがって!!」
「こちとらなぁ……スケベ、ぶさいく、頭悪いのサイテーな三拍子そろってっけどなぁ……」
「人を愛するハートは誰よりも熱いぜ――!!」
――ふざけんじゃねぇー!!
孝介は喉が枯れ果てるくらいの叫びを上げ、思いっきり窪田先輩を殴る。
窪田先輩は、すごいスピードで後ろに飛ばされ、派手にひっくり返った。
サッカー部員数名を殴り終わった孝介は、右足を引きずり、よろめくながら、はぁはぁ肩で息をしている。
「いいか!?お前ら……里香を悲しませたら、承知しねぇからな!!」
すごい形相でサッカー部員たちを睨む孝介の目……
―――えっ!!
あの孝介の目……どこかで見たことある……
一瞬私の身体全体に衝撃が走りフラッシュバック―――!!
『お前、里香をイジメただろう!!』
幼稚園の頃、砂場で泣きじゃくる私の元にかけつけ、私をイジメた男の子を殴る孝介……
『お前……今……里香を悲しませただろう…』
小学校5年生の頃、初恋の男の子に『オトコ女』なんてキライって逃げられた時……その男の子を殴る孝介……
里香…
里香…
里香…
この16年間当たり前のように聞こえきた孝介の声が、ナゼか走馬灯のように頭にこだまする。
『男にはっ……守らなきゃなんねぇ……ぎっ!!…もんがあるんば……がぁっ!!』
孝介……
あんたの守りたいものって……
もしかして私の事…
足の痛みで熱が出てるのだろう、真っ赤に染まった顔でこっちを見る孝介……
苦しいのに…ボロボロになりながらも必死に私を守ろとしてくれていた孝介……
―――しかも16年もずっと!!
そんな孝介を見ていると、私は急に身体中が暖かい光に包まれた。
虹色に輝やく大きな大きな光―――
―――そしてそれはあったかい…
ナゼか涙が溢れる……
孝介……
孝介……
私…
『恋の魔法』にかけられちゃったみたい!!
心が叫んでる……
心が叫んでるんだよ…
…ねぇ孝介!!
16年間もずっと私をみてくれて
「ありがと」
って……
そして……
―――孝介大好きだよって!!
私は今まで、顔やルックスばかりを気にしていた。キレイになればいい恋ができると思っていた。
でも孝介…あんたは違う。カッコ悪くても、ださださでも、心だけはキレイに磨き、16年間で、こんなにもあったかい心を持った男の子に成長していたんだね。
ねぇ孝介……
私も頑張るよ……
もうルックスは気にしない……背は高くなくても……顔は普通でも……胸は小さくても……いつも心だけはキレイに磨くね!!
孝介…大好きだよ!!
だめだ……涙が止まらないよ……
孝介…
孝介…
孝介は、フラフラしながら私に近づいてきて、泣いている私の頭をくしゃくしゃって撫でる。
はは……ナニかっこつけてんのよ!!
あんたなんか…
あんたなんか…
大好きなんだから!!
もぅ!!優しくされたらどんどん好きになっちゃうじゃん
「……バーカ」
「バカは生まれつきばぃ」
私は不覚にも孝介に『恋の魔法』にかけられた事を気づかれないように強がる。
「ねぇねぇ……孝介!!」
「なんばぃ?」
「目を閉じて……」
「……えっ!?」
孝介は、顔を赤くしてそっと目を閉じる…
口びるが少し震えてる……
きゃはっ!!可愛いぃ!!孝介!!
ナニ期待してんのよ!!
私のファーストキスはまだお預けだよ。
やっぱりファーストキスはもっとロマンチックなとこでしよーね!!
「ハッピーバレンタイン!!」
私はポケットからパラソルチョコを取り出し、孝介の口の中に入れる。
「……んぐっ!!」
突然、口の中にチョコを入れられた孝介は、むせる。
「ははっ…きゃははは」
そんな孝介が可愛くて愛しくてしょうがない私だった。
「こらぁー!!お前ら校舎にバイク乗りあげて何やってる!!」
げっ!!やばい、守衛さんが怒りながら、こっちに向かって走ってきた。
「里香ぁ、まずいばぃ!!はやく乗るとよ」
「おっけー!!」
私は孝介のバイクの後ろに乗り、思いっきり孝介の腰に手を回す。
ぎゆっと…ぎゅっと力込めて……
だって孝介の身体があったかいんだもん。
私と孝介を乗せたバイクは、思いっきり歓喜の声を出し走り出した。
そして、表参道をまっすぐとまっすぐと風を切って走り抜ける。
春風舞う季節はもうすぐそこだった。私の心の恋の風は表参道から空高く舞い上がり、世界中を大きく大きく包み込んだ。
MyLove 君へ届けたいよ
走り出したこの恋
True Love
こんなに深い気持ち
心にあるなんてね
気づく事が出来なかった
君に出会うまでは
前のめりに頑張る
ぶきっちょな人だけど
何故かわからない
ひかれてゆくよ
太陽がとけ
運命が動き
まわりだす時間
日曜日の午後
つないだ左手
ぎこちない私
信じていいの?
MyLove 恋の魔法に今
かかっている
初めてだよ
どうしようもない
Only you 君へ伝えたい
いつもそばにいさせて
Yes!!
『君が大好きだよ』
ずっと
川嶋あい『MyLove』
ねぇ!!孝介…っ!!
大好き!!
大好き!!
―――大好きーっ!!
☆Happy Valentine☆
Present From
『夢へ続く道』http://x25.peps.jp/tenshinouta
こんにちわ。
あいぽです。
『バレンタインラブ』最後まで読んで下さってありがとうございました。
あいぽが描く初めての『ラブコメ』いかがでしたでしょうか!?
あいぽは思います。
『恋の魔法』……それはきっと誰にでも使えるもの。誰かを心から愛し、誰かの幸せを心から願うこと、それはきっと『恋の魔法』です。
2月14日
この日に、誰かを愛するたくさんの『恋の魔法』が世界中を包み、今日は、誰もがハッピーに過ごせる事を心より祈っています。
2007,2,14
あいぽ




