恋1話『恋の魔法を手に入れたい!』
ねぇ神様…
どうかお願いです
もしも『恋の魔法』があるのなら…
どうか私に授けてください!!
爽やかな朝!!
窓から差し込む朝の光!!
ん〜気っ持ちいい〜っ。
私は、ブラのホックを留めながら、いつものように自分を姿見に映し何度も繰り返す。
キレイになぁ〜れ
キレイになぁ〜れ
恋する乙女はキレイにならなきゃ相手のハートを奪えないからね!!
私は姿見にうつった下着姿の自分を上から下までゆっくり眺める。
私はキレイ!?
イヤ…
お世辞にもキレイとは言えないな。
背は…
そんなに高くないし。
顔も…
別に飛びぬけてキレイという訳でもない。
どこにでもいそうな顔立ち…
どこにでもいそうなスタイル…
どこにでもいそうな高校1年生…
どこにでもいそうな…
やっぱり私めちゃくちゃ普通な女の子じゃないですか!!
あ…あった…
どこにでもいそうではない私だけの特徴が…
それは…
誰よりも胸が小さい事…!!
うわあぁぁ〜!!
そんなんじゃますます先輩のハートは奪えないじゃないですか!?
私は高校に入学してすぐ、友達に誘われサッカー部のマネージャーになった。そして、そこで先輩に出会ったのだ。
グランドを駆ける先輩…
ひたむきにボールを追いかける真剣な目…
そのキレイな中性的な顔立ち…
風になびく少しブラウン色した髪が爽やかでなんともいえない。
私は一瞬にして恋に落ちた。
先輩の事が一日中頭から離れない。毎日毎日の退屈な授業も放課後グランドで先輩と一緒に部活が出来ると思えば、全然苦にならなかった。
しかし…
その恋には大問題があった。
先輩が学校中であまりにも人気がありすぎる事!!
事実サッカー部の練習が始まると、グランドの金網越しに学校中の女の子が集まるのだ。
イヤイヤそんな昔読んだ青春マンガじゃあるまいし、と最初は信じられない光景だったけど、その光景は毎日続いた…
私の片思いの相手は、学校中の人気者。
そして私はどこにでもいる普通の女の子。
こんなのハナから勝ち目ない…
だけど…
だけど…
先輩の事が好きで好きでたまらない…
私は鏡に映った小さな胸を両手で包み込み、憎らしげに眺める。
やっぱ男の子は大きな胸の女の子が好きなのかな…!?
口惜しい!!
ねぇ!!神様どうか私に『恋の魔法』を授けてよ!!
胸は小さいけど、先輩への愛は誰よりも大きいんだから!!
「なんばしょっとね。里香…」
―――!?
きゃぁああああああ!!
ちょ…っ!!孝介!!
なに勝手に人の部屋入ってきてんのよ!!
―――スケベ!!
私は部屋の入り口で、ボーとつっ立ってこっちを見ているそのデリカシーのない男に、思いっきり近くにあったお気に入りのペンギンのぬいぐるみを投げつける。
見事命中…
男は顔を覆いながらうずくまる。
「ちょっと孝介!!なに人の部屋あがりこんでんのよ」
「なんば言うとね。里香。学校まで案内するから迎えに来いっち言ったのはそっちからばぃ。」
「だからってねぇ…ナニ女の子の部屋勝手にあがりこんでんのよ。」
「玄関で待ってたら寒かろうって、おばさんが部屋に案内してくれたとよ。」
母さんが!?
まったくもぅ!!ナニ考えてんのよ!!
ウチの母親は…!!
年頃の娘が着替え中っていうのに、こんなフザケタ男部屋に入れるなんて!!
フザケタ男…
そう、コイツは私の昔からの幼馴染。
小さい頃からずっと一緒に遊んでたクサレ縁…
小学校の頃からクラスの女の子のスカートはめくるわ、人の鞄にカエルは入れるわ…
あ…そうそう私の好きだった初恋の男の子もコイツに殴られた気がする…
もうやることなすことハチャメチャで、なんどコイツのせいで泣かされたか…
そして、そんなクサレ縁のコイツとも、中学校に上がる前に、コイツの両親の転勤とともにやっと切れたと思いきや…
なぜかこの正月に東京に戻ってきて…
そして、なぜかまたまた私の家の隣に引っ越してきやがった!!
まぁ、ウチの母さんとコイツの母さんが学生時代の親友ってのもあるんだろうけど…
とにかく…
クサレ縁復活は悪夢!!
これから東京で新しい学校生活が始まるってんで、人がせっかくの親切心で学校まで案内してやろうと思ったのに、勝手に人の部屋に上がりこんでくるなんて…!!
なに『スケベさ』パワーアップして戻って来てんのよ!!
しかもなんなの!?その変な九州弁!?
たった3年間くらい福岡にいたからって、そんなダサダサなしゃべり方になって戻って来ないでよ。
アンタが生まれたのは東京なんですけど…!!
そんな事を考えながら思いっきりため息をついていると…
「ああああ!!孝介何やってんのペンちゃんに!!」
コイツはよりによってさっき投げつけた、私のお気に入りのぬいぐるみのペンちゃんに顔をうずめてるのだ。
「里香ぁ、オマエ見ねぇうちにバリ女の子の香りがするようなったとね。」
「ちょっと!!スケベ!!ヘンタイ!!早く部屋から出てけー!!」
「ははは!!ジョークばぃ。ジョーク。じゃぁ玄関で待っとくっち、はよ来いよな。それから、この時間からやったら遅刻するから、今日はバイクで行こう思うとね。だからちゃんとズボンはいて来いよ!!」
逃げるように部屋を出ていった孝介に向って、今度は近くにあったクッションを私は思いっきり投げつける。
―――バカ孝介!!
そんなこんなで、なんとか着替えをすませた私は孝介の待つ玄関へと急ぐ。
私の通う高校は私立で制服がなく、他の学校の友達は羨ましがるが、実はコレ結構毎日のオシャレが大変なんだ。
「へーカッコイイじゃん。孝介。」
玄関先で自慢げに大きなバイクにまたがる孝介に一応お世辞を言う。
「コイツ…オレの相棒ばぃ。」
「ハイハイ。何カッコつけてんの。さぁ出発よ」
「OK!!」
孝介が思いっきりアクセルを回した瞬間、その相棒とやらはまるで歓喜の声を上げるかのように、大きくエンジン音を響かせ、ものすごいスピードで走り出した。まだ肌寒いこの季節に、容赦なしに私に吹き付ける風は少し冷たく辛かった。
「ねぇ!!孝介…さっき見たでしょう!?」
「あぁー!?聞こえんばぃ?何ぃ?」
ものすごい音のエンジン音と吹きつける風が邪魔をしてなかなか会話ができない。
「だから…さっき見たでしょ!!私の胸!?」
「あぁー!?聞こえんばぃ!!いまコイツと風を感じてんだから、いちいち話かけるな!!」
何よそれ!!
ハイハイ!!あんたは一生バイクにでも恋しときなさい。
わたしは…
わたしは…
バレンタインまでに『恋の魔法』手に入れて、絶対先輩と幸せになってやるんだから!!
バレンタインまであと20日。
絶対頑張ってやる!!
私を乗せたバイクは、表参道をまっすぐと風を切って走り抜ける。
春風舞う季節はまだだけど、私の心の恋の風は大きく大きく表参道を包み込んだ。
こんばんわ。
あいぽです。
さぁ、バレンタインまでいよいよあと20日ですね。
みなさん、チョコレートの準備はできてますか?
あいぽは、大好きな大好きなみんなへチョコレートの代わりに小説を贈ります。笑
このお話は2月14日に最終話を迎えます。
2月14日には世界中が幸せに包まれますよう祈りを込めて頑張って執筆しますので、どうか最後までお付き合いのほどヨロシクお願いいたします。




