【もしもネタ】レニーちゃん達を魔王と勇者で考えてみた
以前活動報告に書いたネタに少し加筆したものを発見したので掲載しますです。
ざっくりとしたネタ。お遊びです。
★レニーが魔王でミリオンが勇者の場合
※モフス達のとはちょっと違うバージョン
「げほげほっ、私が寝込んでばかりだから世界征服もままならない」
今代の魔王は病弱だった。寝込んでばかりだった。はじめからこうだったので、王が代替わりした途端、有能な部下達は次々と去ってしまい、さらには下克上を狙って自軍を編成する輩まで現れた。今はなんとか対処できているが、もう時間の問題だろう。
「この国は私の代で終わってしまうのだろうか……」
そう思うと、申し訳なくなって、魔王は残った配下達に給料を払うと全員解雇した。
「ここへ向けて人間の国々から勇者が派遣されたそうだ。いつ来るかわからないから、お前たちは去れ。むやみに命を散らす必要はない」
残りたいとすがる者もいたが、魔王は強制的に退去させた。
「城にひとりきりになってしまったな」
魔王は苦笑しながらがらんとした大広間を眺める。自分で淹れた薬草湯を椀からすするが、かなり濃かった。
「薄めるか……」
厨房へ行こうと席をたつと、入り口に見知らぬ人物が立っていた。
相手は人間の青年のようだ。軽装ながら胸当てや手甲をして、背に槍を背負っている。
勇者だ。魔王は直感的にそう思った。予想以上にはやくここまで到達したらしい。
初めて直視する「敵」に震えそうになるが、ぎゅっと手を握りしめ、勇気を出す。
「よ、よく来たな、勇者よ」
魔王をじっと見ていた青年は声をかけられると足早に近づいてくる。
ついにその時がきた。これでこの国は終わり、人間のものになるのだろう。できればあっさりと、一瞬でケリをつけてほしいものだと、魔王は思わず目をつぶる。
だが予想していた衝撃は何時まで経ってもやってこなかった。
不思議に思い、魔王はそっと目を開くと、足元に青年がうずくまっていた。
「な、なんだ……?」
「どうかご安心ください魔王さま。俺が来たからにはもう安全です」
「は?」
青年は片膝を立てた状態で魔王の足元に跪いていた。騎士が主に忠誠を誓うかのように。
「お前は……誰だ?」
「やだなあレニー、ミリオンだよ」
「いやそれはわかるが、お前勇者じゃなかったっけ? 私を殺しに来たのか? 早いな」
「そんなことするわけ無いじゃない。就任の挨拶に来たんだよ」
「ど、どういうことだ? お前、勇者じゃないのか」
魔王は驚き、勇者はその隙に彼女の手を取り、満面の笑みを浮かべる。
「ええ、俺は勇者です。魔王専用の勇者です」
「は?」
魔王は混乱し、それから罠ではないかと思って後ずさろうとするが、手を掴まれているため逃れられない。
「とびきり強い勇者ですよ。他国の同業者にも負けたことがありません。お買い得ですよ」
「は、はぁ……」
「君に仇なす奴は全て消し炭にするから、安心してね!」
そして魔王の座は安泰になりましたとさ。
★ミリオンが魔王でレニーが勇者の場合
最小限の荷物を持ち、一人孤独に旅する勇者レニー。
「私が勇者でいいのだろうか……病気のせいで余命幾ばくもないし、あまりあてにはされてないんだろうな。とにかく魔法でステータス強化しながら魔王退治を目指すか」
「ついでに世界を回って治療法を探そうね」
「ああ、もちろんそのつもりだが……あれ、ミリオン、お前は確か魔王じゃ? 魔王は城にいるんじゃないのか?」
旅立ったばかりの勇者の前に突然魔王が現れた!
おののく勇者、だが魔王は満面の笑みを浮かべている。
「うん、そうらしいね。でもレニーが心配だから城から出てきちゃった。あ、そこ木の根出てるから足元に気をつけて!」
「ああ、ありがとう。いや、私は魔王退治にだな」
「治療法を探さないとね!」
「う、うん……うん?」
勢いに押し切られ、勇者レニーはミリオンと行動を共にすることになった。
「目ぼしい情報がありそうな場所は地図にマッピングしておいたから、近場から行こうよ」
そう言って魔王は懐から地図を出すと、勇者レニーと並んで肩を寄せてよく見えるように広げる。
「あ、うん。地図はありがたいが……えーとほら、私は勇者だから魔王の軍勢の侵略を止めたりとか、そういった事もしないとならないんだ」
「魔王の軍勢って俺の支配下の軍の事? みんなレニーの治療法探しで出払ってるよ。幹部はマッピングしてある箇所それぞれで俺の到着を待ってるから、そこに行けば自然と魔王軍と出会えるよ」
「そうなのか。じゃあ、いいか」
こうして二人仲良く旅に出ました。
★両方が勇者陣営 の場合
「病弱な私だが、今の世界では魔術師は私しかいないから、戦うしかないんだな。それに、幼馴染のミリオンも一緒に旅に出る事になっている……と(台本確認しながら)」
出発のための荷物を用意し、最終確認をするレニー。
「私は生き延びるかわからないが、せめてミリオンだけは生きて帰れるように頑張らないと」
そこに登場する幼馴染。
「レニー、安心して!」
「ミリオン、どうしたんだ? 出立の準備はできたのか?」
「レニー、俺達もう旅に出なくて良くなったから。ほら、これ王様からの証書。もう戦わなくていいですってさ」
「え? そうなのか?」
驚いてレニーが受け取った証書を見ると、確かに正式な書面に、国王のサインもちゃんとある。
「本物みたいだな……というかなんかこれ、ふちに赤黒いシミが」
「気にしないで。きっと泥水が跳ねたからだから。さ、ごはんにしよう」
「あ、ああ。しかし、結局旅の準備は無駄になってしまったんだな」
「そのうち二人で近場に旅行にでもでかけようよ」
「でもまだ魔王軍が暴れているんじゃ」
「大丈夫、魔王からの証書もあるから」
こうして二人は平和に暮らしましたとさ?
★二人とも魔王陣営
「勇者討伐かぁ。レニーは危ないから後衛にいてね」
そう言って魔王の配下ミリオンは同じく配下のレニーを背にかばうようにして進む。
「わかった。あ、ミリオン、勇者一行は今ちょうどそこの峠を越えたあたりにいるそうだ」
「え、なんでレニーわかるの?」
「砦にいるジルニトラくんから伝書サラマンダーをもらった」
そう言うレニーの肩には(ミリオンから見ると)生意気そうな顔つきの小型サラマンダーがとまっている。
「へえ、あいつと何時から知り合ったの?」
「こないだ勇者達の偵察に行った帰りに偶然一緒になったんだ」
「ふぅううん。偵察ね」
「ああ、それ以来ジルニトラくんとは情報のやりとりをしているんだ」
「ジルとね、うん」
「ミリオン、どうした? その手の中の魔力の塊、どうするんだ?」
ミリオンの手の中に集まっていくエネルギーを感じ、レニーは質問する。
「うん? どうせ砦に勇者一行が来るんでしょ? ひとまとめに破壊しちゃおうと思って。ね?」
「ね? じゃないだろう。砦にいるみんなが危ないじゃないか」
「高位魔族だから大丈夫だよ」
「そ、そうなのか?」
「うん(棒読み)」
もういっそ魔王とか勇者とかもいなくていいんじゃないかな。byミリオン