表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

後編


 なんで私はバカなんだろう。

 慎重に音を立てないようにしていたはずなのに、最後の最後で私はゴミ箱を勢い良く倒してしまった。


「……なにしてんだ」


 私の祈りも虚しく、やつは起きてしまったらしい。

 言い訳をあれこれ考えてはみたけど、思いつくはずもなく、私は諦めて散らかしたゴミを黙々と片付け始めた。


「お前バカだな、倒したのかよ」


「悪かったわね。別に好きで倒した訳じゃないわよ」


 一緒にしゃがんでゴミを拾い始める篠崎に、申し訳なく思うけどどうしても憎まれ口を叩いてしまう。素直にありがとうも言えない自分が腹立たしかった。


「お前……可愛くねぇな」


 ため息混じりに言われてムカつく反面、気分が落ち込んだ。

 確かに自分でも可愛くないとは思う。だから好きな人にも選んでもらえなかったんだ。

 けど、面と向かってそうはっきり言われると正直傷付く。まぁ自業自得なんだけど。


「はいはい。私は可愛くありませんよ」


「お前なぁ……ったく、なんで俺はこんなやつを……」


「は? 何?」


 最後の方からゴニョゴニョと声が小さくなって聞き取れず、イライラした私は篠崎に食ってかかる。


「言いたいことあるならはっきり言えば?」


 拾ったゴミをゴミ箱に突っ込んで、立ち上がった私は篠崎を見下ろす。するとやつは何を思ったのか、私を睨みつけてきた。


「……鈍感な奴」


「はぁ? なにそれ。あんたね……っ」


 言い返そうとした私の言葉は、声として発せられる前に消えてしまった。

 突然された甘い行為。離れていった温もりに、思わず確かめるように唇に触れた。


「……お前が好きなんだよ」


 ぶっきらぼうにそう告げて、篠崎はさっと視線を逸らす。


「……は?」


「は?って……お前な、人が告ってんのに……」


 呆れたようにため息を疲れるけど、私は頭が正常に働いていない。


「篠崎は私のこと嫌いなんじゃ……」


「なんでそうなる」


「だって……いつもからかうじゃん」

 いつもの言動を考えると、好きだなんて言われても信じられない。すると篠崎はガシガシと頭をかいて、グイッと私を抱き寄せた。


「あれは……悪かった……その、ついな……」


 抱き締められた腕の中、そっと見上げればいつもと違う紅い顔。


「……見んなよ」


 照れくさそうな、いつもと違う表情に、不覚にもちょっとときめいたのは内緒にしておこうと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ