中編
試合を終えた部員たちが楽しげに話しながら帰る中、マネージャーの私は片付けに勤しんでいた。
その途中、ふと目をやった校門の側で見つけた二つの影。あまり見たくはなかった光景がそこにはあった。
そこにいたのは他校の制服を着た可憐な少女と、うちの学校の王子様の寄り添う姿。
ニヶ月前にできたという彼女さん。そのことを教えてくれたときの雅樹くんは本当に幸せそうで、太刀打ちできないんだって容易に分かった。
それでも、少しでも側にいたくて。思いが通じなくてもいいと、時折微笑んでくれることで満足だと思ってた。
けど目の前に突きつけられた現実は、私の心に重くのしかかってきた。
やっと全て片付け終えた頃には日はとっくに暮れていた。
荷物を両手いっぱいに抱え、薄暗くなった道を部室に向けて歩き出す。
「……げっ」
ドアを開けた瞬間、思わず口に出してしまってから慌てて口を噤む。
部室のドアを開けてすぐ見えたのは、椅子に腰掛けたまま動かない篠崎圭の姿だった。
誰もいないと思っていた部室内にいた一番会いたくない奴の姿にげんなりする。さっきのショックに加えてのダブルパンチだ。
じっと入り口から観察したところ、どうやら眠っているらしい。それを遠目ながら確認して、私は音を立てないよう中に入った。
荷物をそっと下ろし、定位置に戻していく。本当は今すぐにでも部室から去りたいんだけど性格上ちゃんと戻さないと気が済まない。
なるべく音を立てないよう、けれど手早く荷物を片付けていく。
全て戻し終えて恐る恐る振り返ると、まだ篠崎は眠っているようだった。
ユニフォーム姿で椅子に腰掛けた状態のまま寝ていることに若干呆れてしまう。
汗をかいただろうに、気持ち悪くないのやら。てか、そのままだと風邪をひくだろう。
そう思うと放っておけず、小さくため息をつくと私は大きめのタオルを一枚手にとった。
起こしてしまえば済むんだろうけど口論になりそうなのは目に見えている。けどそのまま出て行く訳にもいかないから、タオルをかけていってやることにした。
タオルじゃあまり意味ないかもしれないけど、ないよりはましなはずだ。
ずり落ちないように肩までしっかりかけてやりながら、私は篠崎の寝顔に目を奪われてしまった。
いつも憎たらしい顔つきなはずなのに、寝顔となると一転してなんだか可愛かった。
男のくせに睫毛長いし。よく見るとカッコいい部類に入る顔立ちだ。
「……ん」
近くで見ていると、篠崎が僅かに身じろいだ。
ここで起きられるとまた嫌味を言われそうだ。
私は慌てて部室の出口へと忍び足で向かった。




