EP.1
電車を逃した。無論、終電を。冷たい風が吹きつけてくる。ジャージを貫通して体を冷やしてくる。もう、やらかしばっかりで嫌になってしまいそう。
自分でもわかってる。オレは出来損ないだ。オレの先代の恥。
せっかくいい高校に入れてもらったのに、入学二日目から不登校。なんという親不孝だろう。
オレは自販機で買ったよくわからないコンポタを握り、手を少々温めてから開けて口がやけどしそうなことなど気にせず飲み干した。缶を握りつぶそうとしたが力が足りない。
この時間になるとタクシーもいないからどうしたものか。ここで野宿か。
オレは思わずため息をついた。そして、自然にもれた。
「死にたい」
「そうかぁ!」
腹に痛覚を感じる。目をやると、腹が包丁で刺されていた。反射的に声のしたほう(つまり後ろ)を振り向いた。そこにいた人間とも呼べない物は、目をガンギマリにして、舌から血をドバドバ出して、オレに顔を向けていた。
「ひぃっ!」
我ながら情けない声。痛さがあとから来る。
「死にたいといったのはお前のほうだろう?」
助けを求めないと…やばい...!声を振り出そうとしたが出たのは血だけだった。吐血。オレは手で口をおさえる。嘔吐しそうな声が出る。死ぬ…。
「やめろ…」
出たのはその声と血だけだ。急にめまいが起き、足がガクンと折れた。包丁は無様に血をまき散らし、オレの腹から、背中から抜けていった。目の前が見えない。
「どうだ、苦しいか、苦しいのか!?答えやがれ!」
鋭く、鈍い音とともに右足に痛みを感じた。ふくらはぎの真ん中あたり。なんだか切られたあたりがスースーする。風が吹きつけている?とれたのか!足が!やばい…。
痛い。痛い。痛い…。いたい…。死にたくない。嘘だ。嘘だろ。まだ。まだなのに。
きっとオレの顔も今、オレを刺した物と同じになっているのだろう。
オレは次の台詞を叫んでから、意識はなくなっている。
「死にたくない!」
なんだか歌が聞こえる。不気味で、エコーが効いている。体が妙な浮遊感を感じている。目がだんだんと開く。あれ。オレの目は刺されなかったのか。なんだか死が、死というワードが弱い。光が見えてきた。俗にいう天国か。地獄じゃなくて、よかった。
目覚めた。「はっ」というお決まりの声は出なかったらしい。あれ?ここは…?
オレの目の前に広がるのは雲の上の世界ではなくこじんまりとした質素な部屋。誰もいないのか?
「あ~」
声を出してみる。どうも反応がない。響いただけだ。明かりも月日だけで、なんだか刑務所のようだ。しかし、窓という窓はなく、ただただベッドとトイレが適当に配置してある。天井は高いが子供の時に作った段ボールの基地くらいの床面積だ。
一旦冷静になってみる。ベッドに座ってみよう。ギシという音だけで特に異常はないベッドだ。マットレスが極端に薄いくらいか…。まず、あれは悪夢とかではない。れっきとした現実といってもいいと思う。殺されたで間違いない。いや、ここが施設という説もあるか。あの狂人のことだ。そんな施設でオレを実験体にしてもおかしくはなさそうだ。つまり、オレがあそこで死んでいたかはわからない。
ただ、足がある。もし本当に死んでいれば、オレはいわゆるあれをしている。
「異世界転生か」
新作です!結構自信作です




