9話:ダンジョンでラブコメしないのは間違っていますか?
川岡駅から電車で15分。乗り継ぎを1度し、秋葉原に着いた。
秋葉原は前の世界と同じでアニメの聖地ではあるが、同時にダンジョンの聖地となっていた。アニメの専門店やメイド喫茶が立ち並ぶ中に、ダンジョンを潜るのに使う道具や武器屋も立ち並んでいるのはなんとも不思議な光景だ。
大和国には50を超えるダンジョンがある。秋葉原のダンジョン以上に難易度が高いダンジョンから難易度の低いダンジョンまである中で、何故秋葉原が聖地なのか。それは転移門の数だ。
転移門とはその名の通り、今いる場所からワープの出来る門。原理は未だ不明だが、ダンジョン内にある転移門を使えば即座に地上と行き来できる仕組みをしている。
秋葉原ダンジョンは転移門の数がとにかく多く、総数50階層の中で5階層ずつ転移がある。地下に潜れば潜るほどモンスターが強くなるダンジョンのシステムを考えると、自分の目標とする難易度の階層へ即座に行ける秋葉原ダンジョンは大変便利。故にダンジョンの聖地なのだ。
そのダンジョンの中、ふたり巨大な洞窟のような場所を歩いている。
「お前やっぱ騙しただろ。44って壁に書いてあったぞ。そもそもモンスター強かったし。今日行くのは初心者に毛が生えた冒険者向けってゴールディア言ったよな?」
冒険者とはダンジョンに潜る者を指す。ダンジョンに潜ることを専門とする者をプロ冒険者と呼ぶそうで、プロ冒険者と真反対のバイト感覚でダンジョンに入る者が多いらしい。
もちろん勇者時代でも冒険者はいたが、もっと命懸けで危ない仕事のイメージがついていた。まだ体感年齢では若いのにジェネレーションギャップを感じる。
「別に間違えていないだろう?プロ冒険者ではない私達は本業に比べたら、初心者に毛が生えた程度だ。」
「ゴールディアの言ってる毛は大木くらい太いんだよ。40階層からはプロでなきゃ行かないことくらい想像出来るわ。」
「どうせお前のことだから適当に弱いふりをして乗り切ろうとか思っていたのだろう?そうだと思って予め強いモンスターしか現れない階層にしといたのだ。」
「弱い振りをしようにもゴールディアは1ミリも手助けしようしてくれないから実力を出さざる負えないわけだ。流石盗撮魔、やり方が汚い。王族としてのプライドはないのか。」
実力を出してはいるが、出しているのは1割程度だ。聖剣を使って勇者としての実力を100パーセント出せばダンジョンの通常モンスター程度一瞬で片付くし、そもそも1時間あれば50階層全て回ってもクリアが出来るだろう
。
「我が家の家訓は勝てばよかろうだ。きっとお前にしたことを父上に話せばお喜びになるだろうな。」
「性格の悪さは家系譲りなのか。おっと、モンスターだな。」
足音が聞こえ、身構えると現れたのはキメラ。ライオンの頭と上半身に、ヤギの頭と下半身、蛇の胴体をしっぽに付けた化け物だ。前足の爪は大変鋭利で地面を引き裂き、下半身に付いた頭は魔術を唱えることが出来る。しっぽに付いた蛇の頭からは猛毒が出る。
強さは無理やりRPG風なレベルにするならレベル55程度。ゲームなら冒険始めたてなら出会ったら死を意味し、冒険終盤であろうと油断したら死にかねない強さだ。つまり、初心者に毛が生えた程度ではまず勝てない。
「ひとつ思ったんだが、ゴールディアはキメラを倒せるのか?さっきから一回も戦闘してないから実力がわからない。」
「ギリギリ倒せる程度だ。」
「なら俺を連れてくるなとは思ったがそこは一旦置いておくとして、中々強いんだな。」
先程も言ったがキメラは中々に強い。とても魔術の勉強をしていただけの若者には勝てない強さを誇る。
「私はこれでも入学試験の順位自体は1位だからな。ある程度は戦えるさ。2次の面接を含めない点数だとジェヘラに負けてしまうが。」
俺は寝ていたからあまり覚えてないのだが、入学式の新入生代表スピーチを入学試験の成績が1位だった者が行ことになっている。
「つまり戦えはするわけだ。」
「もうそろそろ実力を見ておきたいと?いいだろう。」
腰に付けていた豪華な装飾をされた剣の柄を握りしめる。剣や刀タイプの魔道具は刀身に実体があるタイプと無いタイプの2種類あるが、ゴールディアの使う魔道具は刀身があるタイプだ。
刀身のあるタイプはないタイプに比べて値段が高い。しかも刃こぼれをする為、メンテナンス費用もかかる。つまり金食い虫なのだが、それを凌駕するメリットが2つある。
1つは魔力伝導率が良いこと。それにより刀身に魔力を吹き込むことが可能で、魔法の杖みたいに刃先から魔術を使うことも出来る。
2つ目は柄などに魔石の埋め込みや魔術回路を書き込むことで使用者に影響を与えることが可能なことだ。例えば使用者がよく使う魔術属性の魔石を埋め込むことで魔術の威力を底上げしたりが出来る。
刀身のあるタイプはその特異性と数の少なさから宗教などの関係もあり異名で呼ばれることが多く、聖剣や魔剣などと呼ばれている。
俺が太古に使用していた聖剣も厳密には魔道具とは違うが、似たような力を持っている為に刀身のあるタイプの剣型魔道具と呼べるだろう。
「我が一族は火炎魔法の名家。ゴールディア家の力を見せしめてみせよう。爆ぜろ、聖剣レッドローズ!」
剣を鞘から抜き銀色の刀身を露わにすると、その数秒後には白かった刀身が赤く染まり燃え上がる。その輝きは名前の通り赤く、薔薇のように美しい。聖剣レッドローズがアングロ・ドミニオンの国宝に指定されているのも納得だ。
「参る!」
剣を持つ両腕を上に挙げ、まるで剣道の踏み込みを伸ばしたかのような挙動でキメラまで迫る。しかし近付くことを許さないのか、キメラのヤギの頭部が呪文らしき言語を口にし、数発の火球を放つ。
「この私に火球で挑もうとはいい度胸だ。だが!」
全ての火球を斬り、無力化する。火の玉を炎の刀身で切るのは水で水滴を弾くようなものだが、それを可能とするのは炎の刀身の温度が高いからだろう。
「私に炎は通用しない。」
ゴールディアに火球を斬られ学習したのか雷撃、水球、大岩、突風で作った斬撃と試すように魔術を使用するが、雷撃を避けて水球を炎で蒸発させ、大岩を剣で斬ってから風の刃を避ける。
魔術による攻撃が効かないとキメラは判断し、蛇の頭が紫色の毒霧を吐く。
それに対しゴールディアは刀身から炎を広げ、撒くように炎を放った。そしてその炎が毒霧を焼き焦がす。この俺でさえ知らなかった毒霧の対処法に驚愕だ。
毒霧を焼き切りそのまま足を進め、キメラの刃渡り圏内までに入る。キメラが慌てて爪を振るが、彼女を傷つけるより早く剣を斜めに振り、腕を落とす。そのまま頭からかち割るように剣を振り切り、キメラを絶命させた。
「……どうだろうか?お前が指導するに至る納得の実力か?」
「正直びっくりした。ゴールディアは本当に強いな。」
俺が見てきた過去の冒険者の中で見るならかなりの上位。冒険者ランクならAランクからSランクはあるだろう。
「誰かの指導なんかいらないんじゃないか?」
「……私には自分を強くしてくれる者が必要だ。今の私には、力が足りない。」
もしかしてこれは身の上話をしてくるパターンだろうか。何か偉い親の娘だし脅してくるし身の上話してきそうだしで俺の1ヶ月を凝縮したかのような女だ。モンスターとの戦闘もしているのでそこも含めて完璧。身の上話をした後で泣いてくれたら言うことなしだろう。
……炎に関するエピソードだけない。とりあえず火の元には気を付けようと思う。
「そうか、それは頑張ってくれ。」
「そこはちゃんと聞いてくれ!今のは聞く流れだろうが!」
「流れだとか言われてもなぁ。それで……、何故ソナタは力を求める。力が、欲しいか?」
「あぁ!私は!私は力が!!ってそうじゃなくてだな。……何故お前は素直に話を聞こうとしないんだ?」
「お前の身の上話を聞いたらつい同情しちゃって力を貸したくなるからだよ。なんせ俺は優しいからな。悲しい過去だとか努力しなくてはいけない理由なんかがある人にはつい助けたくなる。だから、聞きたくない!」
と言うのはただの建前で、本音はただからかうと面白い反応をしてくれるからなのだが。
「なら喜んで話してやろう。お前は私の腹違いの兄、アルダー・K・ゴールディアを知っているか?」
「金色のアルダーだろ?どんな物も炎によって溶かすブリティッシュガーディアン。アングロ・ドミニオンでは3本指に入る実力者だ。」
そう昨日調べたサイトに書いてあった。
「そうだ。私の兄は実力者。魔術の腕はよく特異な炎も持っている。だが、アイツはゴミだ。性格が腐っている。ゴールディア家は実力主義。このままでは間違いなく次の当主は兄だ。兄が当主となればゴールディア家は、私の好きなあの家は地獄となるだろう。」
サイトの筆者曰く、アルダー・K・ゴールディアの素行が悪いのは有名な話らしい。屋敷の使用人には手を出し、自分の部下を蹴り飛ばして遊ぶ。ガーディアンとして出動したら必要以上の火力を出した魔術を使うことで建物を破壊する。ありとあらゆる犯罪に手を出しているが、お咎めなしなのはその圧倒的なまでの実力故。そんな人間が当主になればその一族は腐敗していくのは目に見えている。
「私は兄よりも強くなり、当主にならなくてはならない。その為には兄を超える圧倒的な力が必要だ。だから村田。お前の力を貸してくれないか?」
そう頼み込む彼女の真っ直ぐな瞳を見て、思い出す。ゴールディアは俺が異世界に来た当初に初めて戦い方を教わった騎士団長に似ているのだ。
太陽のような輝かしい瞳に黄金色の髪。自分より10歳も上なのに同じ目線で話してくれる。若くして騎士団長になったのにも関わらず傲ることなく勤勉。そして、人一倍愛国心のある騎士として理想的な男だった。
決して魔族に腹を貫かれて死んでいい男ではなかった。
ゴールディアの瞳は彼の瞳に似ている。理由はきっと彼が国を愛していたように、彼女もまた家を愛しているからだろう。
「お前に兄ちゃんほど強くしてやれるかはわかんないけど、たまにならダンジョン付き合ってやるよ。」
「本当か!ありがとう村田!いや、師匠!私のことはこれからマギーと呼んでくれ。マーガレットの愛称でマギーだ。」
「わかったよ、マギー。」
「では早速先程の戦闘のご指導を聞かせてもらいたい。」
「そうだなぁ。強いて言うならだが、動きが中途半端なところだろうな。火炎魔法でスタミナを温存しておきたいのか動きで魔力を温存しておきたいのかいまいちわからん。あと、剣の振りが大げさだな。最小限を意識しろ。他には……。」
「メモ、メモを取るから待ってくれ。」
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