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29話:蛾の標本の釘は何本ですか?






「おおお!これは勇者に魔王様ではないか!豪華なメンバーであるなぁー!」



紫色の肌にブカブカの白いズボン。ふくよかな上半身をはだけさせた大きな角がトレードマークな大男の魔族。ケイロンさんを殺した憎き宿敵。七大軍将アマデウスがそこにいた。



「噂をすればって、やつなのか?」



「噂には死者蘇生の効果があるらしいな。」



「あってたまるか。」



「勇者に魔王様よ。何故オラを見て狼狽えないのだ。」



「狼狽えてはいるよ。正直ちょっとびっくりした。狼狽えてるついでに聞くが、なんで蘇ってるんだ?アマデウス」



「詳しいことは言えんのだが、邪神様から蘇らせてもらったのだ。しかも、パワーアップしてなぁ。」



あまり興味が無いのかジェヘラは欠伸をしている。



「見よ、オラの新たな肉体!オラの、最強の身体!!」



アマデウスの身体に金色の血管のようなものが浮き彫りになる。その金色の血管は脈打つように光輝き、魔力反応特有の光を放つ。まるで生きる魔法陣だ。



「オラの身体には無限の魔力が溜まっている。つまりオラは無敵。如何なる傷であろうと直せる。また封印体制の魔術を貼っているためエクスカリバーは無意味である!」



「そうか、それは凄いな。ほらジェヘラも褒めてやれよ。元部下なんだろ?」



「洗脳されておった時に雇った部下であるため妾の部下ではない。」



「その最強カード禁止しないか?」



「何故オラを恐れない?何故オラに跪かない?オラは強い。この空間で1番の強者であるぞ?」



「そもそも、お前は俺に敵意があるのか?愚問だが、何故ここにいる?」



「邪神様の核の破片がここにあるとお導きがあって来た。敵意はお前と魔王様の態度次第であるな。」



元上司にそんな横暴な態度をして恥ずかしくないのだろうか。俺なら絶対気まずいし、会ったら逃げる自信がある。



「だってよジェヘラ。とりあえず土下座でもしてみるか?」



「何故妾が格下に頭を垂れて地に額を付けねばならんのだ。さっさと倒してしまえ。」



「まだ情報喋ってくれるかもしれないんだから勿体ないだろ。」



「オラの話を無視するとは何様であるかぁ!余程死にたいようであるな。良かろう!オラがお前らの首をはねてやろーぞ!!まずはお前だ勇者よ!」



腕を脇や背中から生やし、6本となり、土魔術で生成した剣を持つ。6本の剣全てで俺を襲う。しかしその全てが俺の身体を切り裂くことはなかった。



「何を、した?」



「見えなかったか?切ったんだよ、この剣で。」



土魔術で作った剣で6本の腕全てを切り飛ばす。実力と正体を隠さないで良いため、全力で戦うことが出来る。



「もう一度、ゆっくりやってやるから来いよ。」



「この、クソガキがぁ!」



腕を2本生やして剣を作る。そして右腕で俺に切りかかった。その剣を自らの剣で叩き折り、左腕を振るって切りかかりに来た剣もおる。また魔術で剣を作ろうとしたので、両腕を切り落とした。



アマデウスが腕を再生させる。



「やるではないか勇者よ。だが、これはどうだぁ?千手魔神!」



背中から何十本も腕が生え、剣を作り襲いかかる。そして地面から土で出来た巨大な腕を生み出し、俺を潰そうと迫り来る。



「物理オンリーの攻撃は弱いんだよ、やっぱ。」



剣の形をした爆発性のある炎の魔術を放ち、土で出来た巨大な腕を破壊する。そして聖剣エクスカリバーを召喚し、鞘から引き抜いてそのまま斬撃を飛ばす。すると何十本もあった腕が全て切り落とされた。



「なっ!再生されない!何故!何故なのだ!」



「さぁな?地獄でゆっくり考えるといい。答え合わせは100年後だ。」



「くっそがぁ!ヘルポイント・ハンドウェーブ!」



地面から何百、何千もの腕がミミズやチョウチンアンコウみたいにうねり出てきて、波を作るように俺へ迫る。長い長い腕を伸ばして俺を掴もうとする。まるで地獄の亡者が俺を引き摺り込もうとしてるみたいだ。



だが、その並のような沢山の腕は全て切られた。



「それで、なんだっけ?何故オラを恐れないか、だっけか?そりゃ恐れないだろ。アリを恐れる人間はいない。」



「くっそが!死ね!死ね!死ね!しねぇー!!」



魔法陣を宙に何個も展開させて、腕を出し俺に迫るが直ぐに切られる。まるでワニワニパニックだ。



「邪神にパワーアップさせてもらった様だが。前とまるで変わらないな。ただ火力が上がっただけで技術は前と同じ。何時復活させてもらったか知らんが、少しは修行なり練習なりするだろ。」



ゲームで例えるならアマデウスの状況は課金と同じだ。課金によって強くなったキャラクターで戦っている状態。表面的には強くなっているのだろうが、プレイングとしては何も変わらない。技術も小細工も磨いていないのでは、いざホンモノと戦った時に勝てない。



「いや、違うか。お前もお前なり練習はしてたんだろう。だが圧倒的までに格上との命の削り合いの経験がない。お前の口癖の弱い者云々は自分への戒めなんかじゃなくて、自分に酔っていただけだったんだな。」



エクスカリバーを横に振ると、アマデウスの足が落とされ、四肢のない身体が地面に転がる。



「最後に何か、喋りたいことはあるか?」



「……オラは負けてない!一時撤退である!」



まだ腕を生やしたことのない脇腹から腕を6つ生やし、虫みたいに這いつくばりながら逃げようと腕を動かす。もはや腕ではなく脚だ。



「逃げるのは悪い手じゃない。だが、逃げる手は逃げれる相手にのみ有効だ。逃げきれない相手であるなら、立ち向かうしかない。お前は強者との戦闘経験がないから、判断出来なかったんだろうな。」



瞬間移動魔術を使ってアマデウスの頭上まで身体を飛ばす。



「まるで蛾の標本だな。」



エクスカリバーをアマデウスの腹に突き刺し、地面に固定させた。



「お前の他に、魔王軍の幹部はいるのか?」



「わからん!オラが復活した時には周りにいなかった!そんなことより刺さってるものを抜け無礼者が!」



「次に、何故この場所を知っていた?どうやって仲間を集めた?移動手段は?」



「小間使いがオラをここに連れてきただけであって場所は知らん!オラはただ邪神様の信者に連れられてきただけである。移動手段は車だとか呼ばれていた馬車だ。オラは邪神様の信者の指示で動いただけでアジトの場所も仲間の情報も何もかも知らんぞ!ほら、話したであろう。早くこの刺さっている物を抜けぇ。素直に答えたオラを刺したままにすると痛い目を見るぞ。」



「素直に喋ってくれて助かったよ。それじゃあ、お前に用はないな。」



「用はないのであれば早くオラを解放しろ!さっきから刺さってる場所が痛くて痛くてかなわ。」



首に向けて剣を振り、頭と切り離し絶命させた。



「傍から見て呆気ない終わりであったな。」



「弱い者イジメみたいな感じだったな。」



「それ、アマデウスに対する最大の煽りであるよ。せっかくであるし、最深部まで目指すか?」



「それはやめとこう。待たせすぎると皆が心配する。」
















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