26話:雑種の犬は可愛いですか?
ジェイドによる魔道具を使った自爆は俺が防御魔術を自分とマギー、エルに使ったことで爆破を凌いだ。
自分たちの身は防いだが、建物は全壊してしまい俺ら瓦礫の下だ。こうなるなら最初から火力を上げて戦えば良かった。絵画に少し気を使って戦っていたので損をした気分だ。
「エル、マギー、大丈夫か?」
浮遊魔術を使って瓦礫をどかして上がる。マギーとエルの瓦礫を浮遊魔術でどかしてやると、2人が出てきた。特に出血箇所が見られなかった為、とりあえず一安心だ。
「大丈夫だ。むしろピンピンしてる。」
「ゴールディア殿は凄いでござる。バーサーカーであるよ。」
戦闘によるアドレナリンの高揚感か最初の戦闘よりも明るい。だが、心身的ショックから守るためにあえてテンションを上げさせる効果が人間の脳にはある為、安直に軽視はできない。
「大丈夫なら良かった。周りに敵は居なそうだから警戒を解いて良いぞ。無線機が繋がるか確認する。」
耳に付けた無線機のボタンを押す。
「テストー、こちら資料館前。繰り返す。テスト、こちら資料館前。応答願いたい。」
「やっと繋がった!俺だ、辰だ。」
「辰、そっちはどうだ?負傷者は?」
「負傷者はなしだ。だが、魔術研究部の一件で退学になった奴らが来てる。それと、モンスターが校内をうろちょろしてるぞ。何処からか湧いてるみたいだ。脇場所はまだわかってねえ。おいそこ!右から来てるぞ!」
「部長とその取り巻きか。誰が対応してる?」
「北西先輩だ。」
アリサ先輩は元魔術研究部部長の太秦龍我と相性がすこぶる悪い。魔術の腕などの戦闘力という面では良い勝負をするであろうが、精神的な面では太秦が有利。予算調整などをしに魔術研究授業へ訪れた時の事件から見て、また同じように下衆な脅迫をされたら戦う意思を失ってしまう可能性が高い。
「まずいな。応援にいけないか?」
「無理だ。こっちはモンスターの対処で精一杯だ。」
「様子はわかるか?」
「ちょっと待ってろ。北西先輩と金髪の男が話してるな。他のやつはいねぇ。」
「そうか、わかった。すぐに。」
すぐに行く、と言おうとしたが言葉が詰まる。ジェヘラからの念話だ。
「優希よ!やはりそなたの考えていた通りであった。やはり資料館は陽動。ここまで来るのは億劫であろうから、そなたを召喚するぞ。」
「その前に、こちらの状況を伝えておくとだな。アリサ先輩が魔術研究部の部長だった太秦と戦闘中だ。周りの人間の応援は不可能。とてもアリサ先輩1人に任せておける相手じゃない。」
「助けに行きたい気持ちは分かる。であるが、こっちは世界の命運を分けるのであるぞ。まぁ妾ひとりでも問題はないが、今後を考えると一緒の方が良い。」
「俺もそれは理解してる。だから、ひとつ聞きたい。アリサ先輩は俺の事どう思ってると思う?本人の心情を無視して赤裸々に話して欲しい。」
「何故今それを聞くのか理解出来んのだが。正直に話すと北西先輩は、ソナタに惚れておるであろうな。なんだ?惚気であるか?」
「違う、そうじゃない。少し待ってくれ。すぐに終わらせる。」
念話での会話を終わらせ、再び無線機を付ける。
「辰!俺だ、優希だ。アリサ先輩と連絡が取れないんだが、そっちは取れるか?」
「こっちも取れん。魔術研究部部長が無線機を遮断させる機械を持っているのであろうな。物理部の話によると北西先輩の方角からノイズのような電波が流れているらしい。つまり、送信はできるが受信は出来ん。」
「そうか。アリサ先輩が音声を受信出来てるかはわからないよな。」
アリサ先輩が音声を受信出来てるのかわからない。そもそも激しい戦闘で無線機が壊れているかもしれない。今からすることはアリサ先輩と太秦の勝敗を左右するだろう。だから、確実性が欲しい。
「辰。無線機ってスピーカー機能あったよな?辰の無線機をアリサ先輩が聞こえる範囲に投げてくれ。なるべく落ちた衝撃で壊れない場所が良い。」
「俺も無線機は使うのだが。」
「頼む。やってくれ。」
「……わかった、任せてくれ。衝撃については無重力魔術を使うから心配するな。」
「ありがとう、助かる。」
「おうよ。そんじゃ、投げるぞ。」
・・・・・・・・・
アタシの人生は散々だった。人間族のパパと、魔族とエルフのハーフのママとの間に生まれ、全ての外見的特徴を持った子どもとして生まれたアタシ。人間族の外見以外も受け継いだ子供は医学的に特別な事例らしい。生物学的に見ると人間族の遺伝子が多く含まれているため人間族として見るそうなのだが、正確に見ると魔族とエルフの遺伝子もちゃんと反映されていることから種族不明となるそうだ。つまり、犬で言うところのミックス。即ち雑種だ。
この雑種という表現はアタシの16年と少しの人生の蔑称となっている。
幼稚園から小学生の中盤の当時のアタシはよく意味がわからなかった。賢い両親の家庭の女の子が言い始めたあだ名。きっと両親が家の中で言っていたのを真似したのだろう。初めて自分のことを雑種と言われた時は、可愛くないあだ名だなぁ程度にしか思っていなかった。
雑種が蔑称だと知ったのは小学校の高学年の頃。野良犬が引き取られて飼われる感動系番組を見たときだ。その野良犬が雑種と言う犬種がごちゃ混ぜな犬で、それが世間的に良思われていないとご丁寧に番組内で説明されていた。そこで私は自分が馬鹿にさせていた事を知った。
この世界には人間族の他にエルフ族やドワーフ族、獣人に魔族と言った様々な種族がいる。昔は種族間で戦争をしていたが、今は殆ど無い。種族間は仲が良く、基本的に差別がないのだ。
その基本的に、の例外がアタシだ。混血の、しかも三種族特徴を持つアタシは差別の対象になっている。純血と呼ばれる一つの種族のみの特徴をと遺伝子を持つ人間が一番良いとさせているこの世界でのアタシは世間的にはあまり良く思われていない。もちろん差別は良くないなんて綺麗な主張が社会の常識は存在しているが、内心皆憐れんだり差別しているのだ。
小学六年生くらいからだろうか。明らかにアタシに対する周りの見る目が変わった。
男の子からは性欲の混ざったニヤニヤした目で。女の子からは妬みや嫉妬の目で見られ始めた。エルのは美形が多く、魔族は性的魅力の高い者が多い。そのふたつの遺伝子が混ざったことでアタシの容姿はとても良く生まれた。
アタシはかわいい。そう、学んだ。
その事実に天狗となった時もあった。だけれど、その鼻は孤独感で簡単に折れる。有頂天になるたびにいじめや性的欲求の押し付けによって気分が落ち込む。体育館倉庫でのレイプ未遂では完全に心が折れた。そして、アタシは思った。
アタシは可愛い。だから何だというのだ。こんなにも不自由で、寂しいではないかと。
高校生に上がった今は特に表で差別されることはなかった。根暗だった自分を変え、明るく前向きな理想の女の子と見えるよう努力した。お陰で沢山友達が出来た。
全ては順調。ようやくアタシに追い風が吹いてきた。そう、思っていた。
魔術研究部の部室に部費予算などの打ち合わせをしにいった時の脅迫事件。アタシにイジメやレイプ未遂事件を思い出させた。顔は青ざめ、思考は凍り、その時のアタシは何も出来なかった。
レイプ未遂事件で魔術を使用し大怪我を負わせたことがトラウマになり、体育や競技などと言った実践ではない場での攻撃魔術の使用がアタシには出来ない。
だからそのまま、自分の初めてをこんな事で散らしてしまう。結局、アタシの運命はこんなもん。散々な初体験だったなと。そう諦めていた。
そんなアタシを助けてくれた優希くんは正にヒーロー。勇者のようだった。そんなただ助けてくれただけで好きになったアタシは単純だと思う。でも、仕方ないじゃん。アタシだって女の子なんだから。
それからのアタシは、はっきり言って彼に依存していた。何か判断する時には必ず彼に頼ろうとしてしまう。つい、彼の反応を見てしまう。私生活ではなるべくしないように気をつけてはいるが、生徒会の仕事などの大事な場面では判断を委ねてしまう。彼を頼ってしまうのはアタシの悪い癖だ。
そして今その頼れる彼が隣におらず、目の前には魔術研究部の元部長である太秦先輩がいる。アタシのトラウマであり、恐怖の対象だ。
早く優希くんに会いたい。優希くんに助けて欲しい。あの時みたいに、彼に頼りたい。でも、実際問題彼はいない。
ならアタシが、やるしかない。
「やっぱいるじゃねぇか。久しぶりだなぁゴブリン。いや、アリサって名前があるんだっけか?聞いたぜ?随分と勇者くんとイチャコラしてたみたいじゃねぇか。お前らもうやったんだろ?お手を出すのが早ぇな?」
「気安く名前を呼ばないでください。」
「おっと強がっちゃって、可愛いねぇ。俺は好きだぜ?強気な女。突っ込むとよく鳴くからな。」
退学処分になったのに全く反省しているように見えない。まぁ、テロリストと一緒に学校に攻め込んでいる時点でわかっていたことではあるが。
「なんでテロリストなんかに協力してるのか教えてやるよ。俺らここで成果を上げたら‘‘向こう‘‘で良い地位に入れてもらえることになってんだよ。地位と金、そして女が宛てがわれるらしくてな。だから俺ら頑張っちゃってるって訳。」
調子よくナイフをコロコロ手で回しながら自慢する。どうせ使い捨てにされるだけ、と煽りたいが声に出ない。怖くて仕方ない。
「言っとくが助けなんか来ねぇぜ?校舎の中にはたくさんのゴブリン。資料館にはG・ジェイドだからな。しかも無線は妨害電波で送れねぇ。ゴブリンを無限に出せるアーティファクトも凄いが、1番はG・ジェイドだ。知ってるだろ?戦斧のG・ジェイド。村田優希は資料館にいるんだろ?田村のやつ死ぬんじゃねぇか?まっ、仕方ねぇか。お前の王子様はお前よりお宝だ大事なんだからなぁ?女より宝取るんだから死んで当然だ。むしろお宝と寝れて満足だろ。」
「彼には彼のやることがあります。彼をバカにしないでください。」
「おぉ、お優しいことで。」
さっきからずっとヘラヘラ笑っている。余程余裕があるのか、または戦闘でハイになっているのか。もしくはクスリでもやっているのかもしれない。
「俺が今なんでハイテンションなのか教えてやろうか?コイツだ。このペンダント。お前もコイツ知ってるだろ?」
目のマークが書かれた黒いペンダント。資料館から盗まれているかもしれない物として情報にあったもの。動物を操れるペンダントだ。
「コイツを使ってお前のことモノにしてやんよ。」
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