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25話:過去②





ケイロンさんは腹を貫かれ、意識を失った。アマデウスがまだ生きており、近くでケイロンさんが倒れたため生存確認はしていないが、恐らく亡くなったのだろう。



ケイロンさんが倒れてからアマデウスの注目は俺に移った。自分が勇者だとバレたのだから当然だ。



そして今、俺はアマデウスと戦っている。



戦っていると言うより遊ばれていると言った方が適切なのではと思われるほどの実力差。アマデウスからしたら俺の剣技は子供とじゃれ合っているようなものだ。



「おーお、これは効いたな。強い強い。」



アマデウスの最大の特徴は再生力だった。ありとあらゆる火力を受けても即座に再生する力はケイロンさんのホーリー・インフェルノでさえ耐えうる。この俺がようやく付けることの出来た切り傷は次の瞬間かさぶたになり、跡を残さずに回復された。



「先程のケイロンの一撃。中々であったなぁ?流石は王国の生きる宝剣。あっぱれであった。まぁ無駄であったがな!」



何が面白いのか爆笑し始めるアマデウス。明らかな隙を見逃さず、剣を振るってまた傷を付けるが再生されてしまった。



アマデウスの剣と俺の聖剣エクスカリバーが激しく当たり、金属音を発させる。俺は全力で剣を振るうがアマデウスにいなされるだけ。当たり前だ。俺の剣の師匠であるケイロンさんが負けたのだから、俺が勝てるわけがない。それをわかった上で戦いを挑んでいるのは時間稼ぎと祈りによるもの。いつか、何かのきっかけで勝てるかもしれないだなんて淡い期待を抱き戦う。



「ケイロンは良い師であったのだろー?分かるぞ分かるぞ。最後の最後までお前に気付かっていたからな。生前はさぞ優しい奴だったのだろう。だが、死んだ。何故かわかるかー?答えは単純、弱いから!弱いから死んでしまったんだなぁ。ぎゃっはははっ!」



如何なる強者に対しても立ち向かうことの出来る力を人は勇気と呼ぶ。なら、今の俺は勇者と呼ぶに相応しいのかもしれない。無謀な戦いに挑むこの不格好な姿が勇者の戦いだと知ったらきっと勇者に憧れている子供は白けるだろう。



「弱い者は死ぬ。弱い者は何も守れない。弱ければ弱いだけ手からこぼれ落ちていく。妻、恋人、子供、兄弟、家族、部下、仲間、国、好きな物守りたいもの全てがこぼれ落ちていく。あぁ、なんてケイロンは可哀想なのだ。これからケイロンが守りたかったもの全てが奪われていく。このオラにすべーて強姦されてしまうのだ。可哀想、可哀想なケイロンだ。」



「そろそろ黙れよ豚野郎。ブヒブヒ、うるさいんだよ。」



「あぁぁあ?豚やろぉーーお?雑魚の癖に生意気なのだよこの雑魚が!弱者は黙って強者に媚びてりゃそれで良いのだよ!躾のなっていない雑魚だ全く!」



俺が振った剣にアマデウスの剣を叩きつけ、脇腹を斬る。致命傷は避けられたが、それでも傷は傷だ。痛みと出血により足がふらつく。内臓が出ないよう即座にヒールを掛ける。ハイ・ヒールは使わない。聖剣に使う魔力を残しておくためだ。



「剣を使うのはやめであるな。これからお前を殴って遊ぶことにするとしよう。そうすれば少しは楽しめようぞ。ほれ来い。このアマデウスが引き続き相手してやろう。」



ニヤニヤと頬を緩ませて剣を捨てる。俺が剣を振りアマデウスの片手を切り落とすが、もう片方の腕で殴られる。切り落とした手は即座に再生した。



「ほれもう1発!」



脇腹を殴られ、あばら骨が折れる。痛みが脳に響き、肺が必要以上に空気を求め、神経を通した電気信号として身体を動かさらないように身体全体へ伝わる。足が震える。立っている事すら出来なくなっていく。



「お?くたばるか?負けてしまうのか勇者よ。人間族最後の希望たるお前は諦めてしまうのか?」



自分の身体を律して再度剣を構え直す。残りの魔力を考えるとあと数分で聖剣を維持出来なくなるだろう。ありとあらゆる魔術を切ることが出来、魔術の火力上げや効率上げをしてくれる聖剣エクスカリバーが無ければアマデウスに勝てる術がゼロになってしまう。



「そうだそうだ。お前は勇者。人間族の希望。ここで立ち上がらなければいつ立ち上がる。さぁ、巨悪を打ち砕くのであるぞ!」



既に掛かっている身体強化魔術の上からさらに身体強化魔術を掛ける。ただでさえ身体に負荷のかかる身体強化魔術を2重掛けするのだ。きっとこの後激痛が襲うだろう。だが、ここで負けるよりマシだ。



地面を踏みしてめて、蹴りあげる。そして剣を頭上にあげて、アマデウスに振り下げた。



「ふん!勇者、敗北なり。」



「がぁ!……ぁあ。」



しかし振り下ろしきる前に腹を殴られ、飛ばされる。身体は空にあがり、そして地面に叩きつけられた。



もう、身体が動かない。息が出来ず、身体は立ち上がれず、意識は朦朧とし始めた、眠い。とにかく眠い。早く楽になって目を閉じたい。これを意識が飛ぶと言うのだろう。失神と似た現象が俺を襲う。痛みを感じなくなってきていることに恐怖する。



……お父さんとお母さんは元気だろうか。俺が居なくなって1年と少し。息子のいない生活に慣れただろうか。友達は今青春真っ盛り。彼女なんかが出来ているのかもしれない。羨ましい。俺は異世界にまで来たのに彼女どころかまだ童貞だ。



日本が恋しい。地球に戻りたい。異世界転移なんてもうごめんだ。ラーメンが食べたいし、お寿司も食べたい。柔らかい食パンにジャムを塗って食べたい。硬いパンに味の薄いスープはうんざりだ。



もう、十分頑張っただろう。平和な日本からやってきた未成年の男の子として見たら随分と頑張った方だ。少しくらい寝ても許して貰えるはずだ。



少し寝よう。少し寝て、ゆっくりしたらまた頑張ろう。明日は何をしようか。調味料の高い世界で小さな塩と砂糖の瓶詰めを買って料理でもしようか。この世界にも卵はある。卵焼きでも作ってみようか。昔の俺はお母さんの甘い卵焼きがあまり好きではなかったが、今ではたらふく食べられそうだ。



そうだ。明日は稽古が休みの日だ。好きな物を見つける散歩でもしようか。雑貨屋に行ってまた変な陶器の置物でも買おう。不格好な動物の置物を買い集めるのが今の俺の趣味。少し歪なのが可愛い。きっとケイロンさんにあげたら喜んでくれるはずだ。少し困りながら笑ってくれる顔が目に浮かぶ。



「……勇者は、負けない。」



違う、俺はもう負けたんだ。



「勇者を、ごっっ、馬鹿にっ、するな。」



仕方ないんだ。実力が違いすぎる。



「僕の勇者を、馬鹿にするな。」



「何故生きている。お前の心臓はオラが潰したはず。」



そうだ。もうケイロンさんはいないんだ。死人はもう喋らないでくれ。



「闇魔術だよ。闇魔術ダイイング・ソウル。自分が死んだ時に、初めて発動する、遺言を残すための魔術。まさかこの僕が闇魔術を使う日が来るとはね。聖騎士を心の中で自称していた事が恥ずかしいよ。」



これ以上喋らないでくれ。俺はもう頑張ったんだ。



「優希。君はまだ立てるはずだ。あばら骨が折れていようが、肺が潰れていようが、心が折れようがまだ立てるはずだ。そう僕が育ててきた。だから言える。君はまだ立てるはずだ。」



やめてくれ。そう背中を押さないでくれ。もういいじゃないか。俺はもう頑張ったよ。



「君は頑張った。あの七大将軍アマデウスによくそこまで奮闘した。凄いよ。師匠として誇らしいよ。でも、ね?君はまだ勝っていない。勝っていないのならまだ倒れてはいけない。何故なら君は僕の勇者だから。」



立てないんだ。身体強化魔術を2重掛けしたせいで身体が動かないよ。だからもう期待しないでくれ。



「他の御伽噺に出てくるような英雄なら、負けることだってあるかもしれない。でもね?君は僕の勇者だ。僕の勇者がそう簡単に負けはしない。倒れたのだってただの一時休憩。攻撃はあえて受けて油断させようとしただけ。全て戦略のうちさ。」



本当は俺、勇者じゃないんだ。ただ異世界転移の魔術に巻き込まれただけの一般人なんだ。だってそうだろ?もし勇者なら元の世界では格闘技世界大会で1位なはずだし、数学オリンピックは金メダルなはず。剣道かフェンシングで日本チャンピオンになっていなきゃ勇者である資格は無い。選定の聖剣・エクスカリバーだってたまたま土台から剣が抜けただけ。ちょっと剣のハマリが緩かっただけなんだ。



だから、俺は勇者じゃない。期待なんてしないでくれ。



「いいかい?僕の勇者は決してクールじゃない。僕の勇者は土臭くてダサいんだ。諦めが悪くて汚い手を使う英雄譚に相応しくないただの少年。闇魔術だって使っちゃう聖剣使いの恥さらし。きっと歴史に語り継がれる時は、それはもう酷く書かれるだろう。でも、ダサくて潔悪くて汚い手を使う分、最後には必ず勝つんだ。そうな、最高にかっこいい勇者なんだ。」



恐怖で足が震える。緊張で今にも漏れそう。あばら骨が折れて痛い。肺が潰れて息が苦しい。腕が重い。息の吸いすぎで喉が悲鳴をあげている。頭が言い訳ばかりを考える。



「もう一度言うよ。僕の勇者は負けない。僕の勇者を馬鹿にするな。僕の勇者はこんな所で終わる男じゃない、死んでも勝つ男だ。僕が憧れた僕だけの英雄だ。だからもう1度最後に見せてくれ。君の、君だけの英雄譚を。」
































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