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24話:どうしたら湖の女神からオリハルコンの斧が貰えますか?







資料館2階の最奥にある部屋は様々な絵画が飾られており、ショーケースには綺羅びやかな魔道具が置かれてあった。そして部屋の右の壁には金庫室に繋がる丸い金庫扉があり、既に開いてしまっていた。中にいた四人のうち一人はソファに座っており、もうひとりは金庫室の中。あとの二人の片方はこちらに腕輪型魔道具を付けた腕を向けて魔術はすぐに発動できるよう構えており、もうひとりは剣型の魔道具を握っていた。



「魔道具を捨てろ。」



ソファに座っている獣人で大柄の男がこちらを睨みながら言う。灰色を基準とした迷彩の作業服のズボンに黒い半袖。腕にはドクロの入れ墨がされており、とても一般人には見えない。腰ベルトにナイフや拳銃を付けており、腕には金色の腕輪型魔道具を付けている。尻尾と獣耳は黒と黄色だ。



何も答えずにいると大柄の男は舌打ちをする。



「やれ。」



腕輪型魔道具を付けた腕を構えていたほうの人間が光弾を無詠唱で3つ後ろに作り、放つ。それを全て避けると次は剣が自分を襲ってきた。剣を全て光剣で受け流し、片手を離して光弾を放つが防御魔術で防がれる。



派手な魔術を使って資料館自体をぶっ壊すわけにはいかないため、小技で勝負するしかない。



「我が刀身よ、弾き切れ。インパクトブレード。」



インパクトブレードは相手の剣が自分の剣に触れた瞬間に衝撃を与え、相手の剣を吹き飛ばす魔術。主に犯人の無力化を目的に軍や警察が使う魔術だ。



インパクトブレードを纏った剣が俺に向けて振り降ろされ、避ける。振り下ろした剣が振り上げられる。また避け、光剣を構え直す。



「バインド!押し潰せ、グラビティ!」



俺の身体をバインドで固定し、重力を強くして動きを制限させる。剣が振り下ろされ、俺に迫ろうとするので光剣をあてた。



「なっ!」



しかし光剣が宙を舞うことなく。



「光属性の攻撃魔術である光剣は物理現象ではない。地獄で勉強し直せ。」



バインドとグラビティを身体に纏わせた魔力で解除し、足で床を蹴って剣を持っていたほうの人間の喉を切り、頭部と身体を離す。そのまま魔術を使用し、腕輪型魔道具の方の人間を囲むように光弾を作り、蜂の巣にした。そしてそのまま金庫室にいる人間が見えたため、腕を向けて狙いを定めて光弾を撃ち、頭を貫く。



「あんたナニモンだよ。こんな動ける高校生、おらぁ知らねぇ。」



「世界は広い。俺みたいな高校生はいくらでもいるだろ。」



「そうだな。だが、こうも殺生に躊躇いのねぇ奴はそうそういねぇ。ウチのだって多少は躊躇いがある。お前本当に高校生か?」



「さぁな。本当はお前より年上かもしれないぞ。」



「はっはっ、大和国はついに不老の薬を開発したのか。そりゃすげぇや。」



「俺も一つ聞きたい。解放軍って何だ?」



「俺は雇われの傭兵だから知らんが、どうやら人間族からの解放を目指す組織らしい。」



「人間族からの解放とアーティファクトに何の関係性があるんだ?ただの大義名分にしか思えないが。」



「ふっ、さぁ?雇われの俺には関係ない話だな。」



「そうか。雇われならここから退散してほしいのだが。」



「それは出来ねぇ相談だ。」



「そうか、それは残念だ。」



土魔術で剣を作り、光剣を被せる。そうすることにより光剣より強度が増し、重さを得ることが出来る。重さは威力に直結する。



「名前を聞いていいか?」



「ジェイドだ。」



「ジェイドか。俺は優希だ。」



「優希か。親がニンホア教だな?良い名だ。」



「ありがとう、大切な名だ。」



俺が日本から来たことを証明出来る、唯一の宝物だからな。



「やっぱ敵と話すもんじゃないな。躊躇いが出る。でもまぁ仕方ない。やるか。」



「おらぁ何時でも準備良いぞ?優希。」



「俺もだ。何時でも始めてくれ。ジェイド。」



光剣を乗せた剣を構える。仮装・聖剣エクスカリバーは使わない。何故なら現代魔術にない魔術だから。誰が見ているかわからない学校の敷地内で誰も知らない魔術を使うのはリスクだ。今は良くても今後に響く。



ジェイドも腰ベルトに付けたホルダーから片手斧を取り出し、右手に握る。片手斧には装飾がされており、刃がデカイ。きっとアーティファクトだろう。左腕に通した腕輪も見るからにアーティファクト。きっと事前情報にあったものだろう。右手にも腕輪が見えたが、それもきっとアーティファクトだ。現代に作られた魔道具にしては派手な装飾がされており、剥き出しの魔石が見えたからそう判断した。



ジェイドが身体強化魔術で強くした脚力を使い、一気に間合いを詰めて斧を振る。それを避けると次は左手に風魔術を纏わせて掌で殴り掛かる。掌に当たると吹き飛ぶタイプの風魔術。インパクトとは違い威力自体は弱いが、吹き飛ばす力は強い。相手の体勢を崩すことを目的とした魔術だ。



斧を振り、また避ける。剣を当てて避けるよりも避けた方が負担が少ないのだが、その分体力を使う。



斧を避けたことにより出来た隙に、糸を通すように剣を差し込む。すると土魔術で作られた壁が床から出現し防がれた。



アーティファクトは現代に作られた魔道具と違い、魔力を濾過する機能も中継器としての機能もない。アーティファクトは単純な魔力の増幅器としての機能や、アーティファクトに備わっている魔術を発動する機能を持つメリットしかない物だ。つまり、魔道具だと火と風しか使えないとされている獣人でも、土魔術が使えるのだ。



それを知っているジェイドが何者なのか気になるところではあるが、今はそれどころでは無い。



土魔術で作った壁に剣が刺さった為引き抜くと、一瞬遅れて壁からトゲが生えて襲ってくる。魔術で作った土の壁を再利用するのは高等技術だ。それを獣人が使ってくるとは、ジェイドは相当腕が立つと言えよう。襲ってくるトゲを切り落とし、距離を取る。



「これを避けるとはな。獣人が土魔術を使うなんて驚きだろう?」



「あぁ驚いた。その技術は誰から習ったんだ?」



「詳しいことは言えねぇが、解放軍の上層部とだけ言っておこう。」



「その情報だけで十分だ。」



斧を構えて上に振り、避けると次は上に振り上げた斧を両手で叩きつけるように振り下げた。振り下げた斧をまた避けると、斧は振り下げたまま床に刺さる。



明らかな好機だ。攻めない手はない。と、思わされるが、俺の度重なる戦闘経験が足を竦ませる。これは罠だと警告を鳴らしている。



その躊躇った一瞬の隙にジェイドは斧を手放し、斧を離した手を横に振り、それに合わせて引き寄せられるように斧が手元まで浮いて移動する。そして斧を再度握り、横に振る。



横に振って俺の首元目掛けて向かってくる斧に対して剣を使って軌道を上に曲げる。そのまま振り下ろしてくる斧を自分の身体にインパクトを当てて後ろに下がることで避け、距離を取った。



距離を取ったことで斧の間合いからは離れたがそれでも猛攻撃は止まらず、斧を投げながらファイアーボールを撃ってくる。投げた斧は壁に刺さる前に止まり、投げた手元に戻ってくる。斧を投げて、俺が避けての繰り返しだ。



「地獄の猟犬よ、煉獄の業火で焼き尽くせ。インフェルノウルフ。」



マグマが犬の形となって魂を吹き込まれたかのようなものが2匹現れる。そしてその2匹が俺に襲いかかろうと走る。2匹のうち1匹がジェイドが投げた斧に当たるが、構わず俺に向かってくる。インフェルノウルフは土魔術と火魔術と闇魔術の3つが混ざったかなり技量が必要な魔術。闇と土の属性が苦手なのではないとかとついジェイドに尋ねたくなってくる。



インフェルノウルフが俺に噛み付こうとするのを、氷の壁を作って防ぐ。だがそれを斧で壊され、インフェルノウルフに溶かされる。



インフェルノウルフは基本的に何でも溶かす。氷はもちろんの事、岩や鉄、剣も溶かし、魔力さえも灰にする。唯一の対処方法は魔術を切ることの出来るオリハルコンだけ。しかしオリハルコンは土魔術で作ることが出来ず、アーティファクトのような特殊な魔道具にしか使われていない。



俺の聖剣エクスカリバーはオリハルコンで作られているが、ここで使うには仮装・聖剣エクスカリバー以上に危険だ。ならどうするか。この場にある唯一のオリハルコンで作られた魔道具を使うのみ。



俺は氷の壁と土の壁を魔術で作る。当然その壁を斧が壊しに来る。その斧を掴んで、壁を溶かして襲ってきたインフェルノウルフに振るって2匹とも斬る。すると、インフェルノウルフを構成していた魔術が魔力となって消えた。



手に持っていた斧をジェイドに向けて投げ、床を蹴ってジェイドに迫る。ジェイドは土魔術で壁を作り、斧を避ける隙を作る。



斧が壁を壊す。その事により正面の視界が開けたが、そこには優希がいなかった。



「……瞬間移動魔術か。」



ジェイドに壁を作らせ、瞬間移動魔術で背後を取り、貫く。この予想の1歩先を行く戦法はモモ先生から習ったものであり、勇者時代に培った経験を元にした技術だ。ポイントは出し惜しみをすること。相手に瞬間移動魔術が使えると思わせないことだ。魔王討伐の旅終盤では俺の瞬間移動が有名になってしまっていたのだが、この時代の人間は誰も勇者の俺を知らない。今だから使える戦法である。



瞬間移動魔術は現代でもある魔術。しかし使い手が少なく、難易度が高い。属性は光で、難易度は上級魔術を超えた最上級魔術。魔力を大量に使うくせに移動魔術なんて火力に繋がらない魔術であり、移動は視界の範囲のみというコスパの悪さから実用性はないとされている。



「聞かせてくれ。ジェイドらの目的はなんだ?」



「さぁな。だがひとつ言えるのは、俺が陽動役ってこった。解放軍の奴らは俺にアーティファクトの回収を頼んだが、どうも怪しい。学生の奴らに生徒を襲わせるのも作戦にしては雑だ。」



「ちょっと待ってくれ。学生の奴らって何だ?」



「あぁ、知らねぇのか。確か学校から処罰されたんだっけか?今頃校舎で暴れてるだろうよ。」



「何故、校舎組から連絡が来ない……?」



「そりゃあ、俺が妨害電波を出してるからだろうな。なぁ、もう死んでいいか?息が辛ぇんだよ。」



「あぁ、安らかに死んでくれ。重要なことを話してくれてありがとな。」



「いんや良いんだ。俺もコイツの時間稼ぎになったからな。」



そう言って脇腹を見せる。そこには赤い魔石のついた機械が脇腹に巻かれてあった。



爆弾だ。



「クソが!」



爆弾が強烈な光を放ち、そして轟音を響かせて機械が爆発するのであった。












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