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23話:味噌汁を作るのは簡単ですか?






警戒しながら走り、作戦を話したりなんかしながら資料館の入口近くの塀まで来た。塀に隠れて敵からの狙撃に警戒しつつ、息を整える。風紀委員が持ってきた無線機を耳につけて、送受信の確認をした。



「突っ込む前に情報を整理しようか。テロリストの人数は不明。辰曰く実力者がふたり。そいつがどんな魔術を使ってくるかも不明だ。資料館にあるアーティファクトで特に注意すべきなのは3つ。魔術の使用効率を上げてくれる腕輪と、誘導弾を撃てる銃。そして動物を操る闇魔術が使えるようになるペンダントだ。ペンダントについては闇魔術の耐性を上げる防御魔術を皆に掛けてあるから大丈夫だ。もしかしたら情報にないアーティファクトを持ってるかもしれない。事前情報は事前情報でしかないと覚えておけ。」



「操られている人間が歯向かってきたらどうすればいい?」



「他の敵と同様に対処してくれ。自分の身が第一だ。」



「職員とか生徒が中にいたらどうすればよいであるか?」



「魔術で拘束だな。今ここにいる三人以外は信用するな。」



相手はあらゆる卑怯な手を使ってくるだろう。学校職員の制服を着て近寄るくらいは普通にしてくるはずだ。



「初めての殺しを含めた対人戦だ。体調悪くなったらいつでも言ってくれ。……準備は良いか?」



ふたりが頷く。覚悟が決まったみたいだ。



「動きを合わせて、3、2、1で行くぞ。・・・・・・3、2、1、GO! 」



資料館の入口に向かって駆け、火炎魔術のファイアーボールを放つ。ただのファイアーボールではなく、爆発性のあるファイアーボール。なので当たると爆発する。ファイアーボールが資料館の扉に当たり、戸が吹き飛んだ。



「エル!」



「了解した!」



エルが黒い棒を弓に変形させて弓形魔道具を起動させる。そして魔力を矢の形にして放つ。放った矢は資料館の入口から見える壁に刺さり、煙を吹き上げた。要は煙幕だ。



煙幕により視界が不鮮明になったので中に侵入し、敵の居場所を見つける探知魔術のサーチを使ってから受付カウンターに隠れる。



「右奥の柱に二人。左壁に三人だ。マギーとエルは右のふたり。俺は左をやる。いけるか?」



「いけるとも。だが、師匠はひとりで三人相手出来るのか?」



「俺の心配とは随分と余裕そうだな。冗談だ。いける、心配するな。俺が飛び出したら続けて出てくれ。3、2、1、GO。」



カウンターを跨いで出る。すると柱にいた二人が実弾銃を俺に連射させてきた。この世界でも実弾銃は強い。魔術を使わずに生き物を殺せる武器と言うのは魔術のあるこの世界においても重宝される。なら何故魔術が今も尚戦術に組み込まれているのか。何故モンスターを狩るのに実弾銃を使わないのか。答えは単純。ある程度を超えた強者に対しては有効ではないから。



実弾に対して防御魔術で作った防壁を盾のようにして防ぎ、そのまま左壁に身体を向ける。



俺は迷った。ここで眼の前にいる三人のテロリストを殺すのは簡単だ。だが、殺してしまったことにより二人の心情がどうなるかは予想できない。特にエルに関しては人が死んだ恐怖でもう二度と戦えない精神性になってしまうかもしれない。やはり、柱の二人を相手させるのは不味かったか?と不安になる。



とりあえずナイフと短機関銃を構えた三人にスリープを掛けて眠らせておく。そして振り返ると、眉間が貫かれた人間と装備が焼かれて剣で真二つされた人間が倒れていた。



「……殺しては、不味かったか?」



「いや、問題ない。それよりエル、深呼吸をしろ。吸って、吐いて、吸って、吐いて。メンタルキツイだろ。マギーも深呼吸しろ。息が荒いぞ。」



エルの手が震えていたため深呼吸をさせて落ち着かせると同時に考えさせないようにする。無理もない。はじめは皆そうなる。それが普通だ。マギーは平然を装っているが、動揺していた。無理をしているのだろう。



「精神的な負荷がキツイだろ。最初は誰しもそうなる。俺も通った道だ。それに、俺らは共犯者だ。絶対のお互いを責めない。だから気にするな。あっ、悪い。俺もやるべきだな。」



スリープで寝かせている敵の三人に光魔術の光弾を順番に撃ち、腹を貫いた。これで皆、人を殺している。



「知っているだろうが、法律的にこれは何も問題はない。無抵抗なテロリストを魔術で殺害すること自体は違法だが、そんなのはどうとでもなる。まぁ最悪なんかあった時は、マギーの王族パワーでなんとかして貰うしかないな。」



「一気に不安になったぞ。」



「格好が悪いでござる。」



少し空気が穏やかになった。二人の呼吸が安定し、笑顔を見せる余裕まである。



「この部屋の奥に二人、二階に6人いる。なるべく早く上にいるテロリストに圧を掛けたい。奥の二人を頼みたいのだが、いけるか?」



「任せてくれ。一つ聞きたいのだが、師匠は何故敵の居場所がわかる?東田の第六感みたいなものか?」



「いや、これについては魔術だ。辰みたいに敵の強さはわからないが、敵の数とおおよその場所はわかる。レーダーに近いな。」



「軍で使う魔力探知魔道具みたいなものか。」



「そんな感じだな。話はここまでにして、ふたりともいけるか?」



「あぁ、準備は出来ている。」



「エル?無理してないか?」



「大丈夫でござる。」



一瞬、これ以上無理をさせないためにエルをスリープで寝かせてみようかと思ったがやめた。エルの覚悟を無下にする行為だからだ。



「よし、じゃあ行こうか。ここから先は悪いが無理してもらうぞ。さっきと同じでカウントダウンして突撃する。……3、2、1、GO!」



廊下出て走り、ドアを火炎魔術で吹き飛ばしてから先程と同じようにエルが煙幕を貼る。ドアはやはり吹き飛ばすに限る。一々開けていてはそれだけでリスクだ。



「任せた!」



マギーとエルに任せて階段を登る。サーチでわかってはいたがやはり二階の敵は全員一箇所に纏まっている。だが、流石に下のごたついた音で侵入を察知しただろう。何故最初の戦闘で駆けつけなかったかはわからないが、きっと自分たちが学生なんかに負けるとは思っていなかったのだろう。



今この二階には味方がいない。つまり自分だけを守ればいい。



自分に身体強化魔術や硬化魔術などバフをマトリョシカみたいに複数掛けし、備える。身体強化魔術などの自分の身体に関与させる魔術は身体に負担がかかるため複数がけは危険なのだが、俺は熟練の鍛えられた勇者だ。そのくらい何の支障がない。俺が魔術を使い終わるのを待っていたかのようにふたり廊下に出てきた。



「タイミングがいいな。」



「止まれ!何者だ!」



「ここの生徒に決まってるだろう?それとも、帝都高の生徒が本校の資料館に来るのはそんなに不自然か?」



「うるさい!この場は我々解放軍が占拠した!今すぐこの場を去らねばお前を殺すぞ。」



「脅しなら無駄だ。優に脅しが通用する段階を俺等は超えた。」



光剣を発動させ、手で握る。テロリストのうちの一人が防御魔術で盾を作り、もう一方が尖った石の塊を作って放つがその岩石を全て切り落としてそのまま盾ごとテロリストを斬る。



「化物が。」



そしてそのまま腕の向きを変えて岩石を撃ってきた方のテロリストも斬る。簡単な作業だ。人を斬るのは味噌汁を作るよりずっと簡単に出来る。本当はマギーやエルのように殺人に対して葛藤した方が良いのだろう。だが、もう出来ない。何万もの命を殺めてきた自分には、もうそんな感性なんぞ残っていないのだ。



テロリストの言う通り、俺はもう化物なのかもしれない。



「いや、防御魔術の盾をそのまま斬るのは確かに化物か。」



廊下を進み、今斬った二人を除いた残りの4人がいるであろう部屋の前まで来る。魔術を使い、また扉を吹き飛ばして資料館2階の最奥にある部屋に入った。













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