17話:バブみのある天使様に慰められるのは合法ですか?
俺の身体は真っ二つになった。しかし、今こうして生きている。理由は簡単。モモ先生の回復魔術だ。
現代魔術において回復魔術とは傷を塞ぐ力。しかし10万年前の魔術、言うなれば古代魔術としては回復魔術とは欠損部位を生やす力だ。
回復魔術を使えば腕を生やすなんぞ容易。身体の半分である下半身を生やすことも可能で、頭さえあれば首から下まで生えてくる。
そんなまるでトカゲの尻尾みたいな回復魔術。殺意の高い魔術や剣術を使うクセして再生と慈愛の天使であるモモ先生にとって真っ二つになった身体をくっつける事なんか造作もないのだ。どうせ直せるのだからと体を真っ二つにするモモ先生は鬼だ。
「やはり、弱まりましたね。」
「すいません。先生の修行無駄にして。」
「いえいえ。魔王を倒すための修行でしたので、目的を果たせた今となっては例え赤子ほどの力になっても良いのですよ。」
天使の笑みを浮かべる大天使モモ。その笑みは後光のように眩しく暖かい。きっと宗教画の笑みを浮かべる女神のモデルを実際の目で見たら、同じ感想を浮かべるかもしれない。
「それに、貴方が弱ければ弱いほどボロ雑巾のように鍛え直す楽しみが生まれますしね。」
やっぱモモ先生は悪魔だ。心に鬼の角が生えているに違いない。
「お茶を頂けますか?貴方が昔言っていた緑茶とやらを是非飲んでみたいです。」
俺って確か召喚主だよな?なんで使用人みたいな事をと少し思うが、こちら戦闘技術を教えていただく身。茶を出すことくらい普通であると納得しておく。
給湯室から茶葉を出し、急須に入れてから電気ポットでお湯を注ぐ。あまり焦らずゆっくりお湯を注ぐのがポイントだ。
そして冷蔵庫から和菓子を出して、お皿に乗せた。何故用意周到に茶菓子まであるかと言えば、習慣とかしか言い様が無い。
10万年前の世界、つまりは旧時代において娯楽は少ない。当時の人間の楽しみと言えば酒か女かギャンブルか。本も一応娯楽に含むが、印刷技術が乏しかった為に冊数が少なく貴重であった。
貴重が貴重なので読書を趣味とすることが出来ないとなれば、残るはやはり酒女ギャンブル。だがそれら全て俺と相性が悪い。
まずはお酒。俺はそれはもう凄く酒癖が悪いらしく、だる絡みが酷いらしい。特に女の子へのだる絡みは見てられないほど酷く、仲間から今後絶対に飲むなと言われたほどだ。
そうは言っても、戦勝パーティーなどのどうしても飲まなくてはならない場面があるので、その時はお酒に解毒魔術を使いアルコールを抜いている。
またどうしても酔いたくなる日については、旅の仲間全員から魔力を使用不可にする魔術と力を弱くする魔術の2種類のデバフ魔術を使って貰ってから飲みに行く事にしている。
次に女。当時の俺は極めて女の子に甘く、騙されやすかった。金を貸すのは日常茶飯事で、ハニートラップも面白いくらい引っかかった。
魔王軍のスパイである魔族からのハニートラップは流石の俺も引っかからなかったが、魔族以外からはよく引っ掛かった。
悪い意味で場数を踏んできた今の俺はもうハニートラップに引っ掛かりなんかはしない。そう、自分を信じたい。
最後のギャンブルについてだが、俺はギャンブルが極めて弱く、有り金全て使ってしまう。有り金とは財布の中身のお金ではなく、銀行口座を含めた全てのお金だ。ついでに旅で使う共有資金まで使ってしまった。使っちゃいけないお金を賭けてからがギャンブルとは言うが、それは冗談であって本当にやってはいけない。
共有資金を使ってしまったせいで無事俺はお小遣い制だ。そしてそれ以降、金銭管理を一切任されなくなった。
お酒も女遊びもギャンブルも駄目。読書は気軽にできない。そこで見つけた趣味がお茶だ。
「こちら、静岡産の緑茶と茶菓子の饅頭です。」
「これが緑茶ですか。うん、流石は優希。良い茶器を使っていますね。」
「すいませんそれ百均です。」
「よく見たら柄が不揃いで安っぽく見えますね。」
すまし顔で茶を啜るモモ先生。格付けチェックで移す価値なしにされそうな間違いをした女とは思えない振る舞いだ。
「それで、どうです?起きてからは。」
「世界が全然違くてびっくりです。なんか俺が御神体になってる宗教あるし、世界中がまるで前いた世界みたいになってるし。知り合い全員死んでるし。」
「それは凄い。ではこの今の世界、気に入っていますか?」
「気に入ってると言うか、楽ではありますよね。」
「そうですか。」
どこか寂しそうな顔をしながら微笑む。それはまるで母親のようで、慈愛の天使らしい表情であった。勝手に何かを察したのだろう。彼女の悪い癖だ。自分のことは隠すくせに相手のことを知りたがる。そして勝手に察して納得するのだ。自分の世界に当てはまるよう相手の感情を読み取る。まるで自分の心を読みられているようで少し不快だ。
「ところで、貴方は私が飼っていた柴犬に似ていますね。」
「……急ですね。」
「実は最近、その犬が亡くなりましてね。頭貸して貰えますか?」
「頭、ですか?」
「はい、とりあえず隣に座ってください。」
言われたままモモ先生の座るソファに移動する。すると頭が横に引き寄せられ、膝に優しく押し付けられた。膝枕だ。
「寂しくはなかったですか?」
「はい?えっと、何の話ですか?」
「さぁ、何の話でしょうかね。」
優しく微笑みながら彼女は頭を撫でる。まるで自分の子供を撫でるかのように。
「一緒に旅してきた仲間も、立ち寄った街で知り合った友人も、知り合い全員いない世界で一人ぼっち。街中に知っている場所なんてなくて、まるで自分が異物のよう。心細かったでしょう。寂しかったでしょう。……よく、頑張りましたね。」
何も知らないのに、何でも知っているかのような言い方をする。彼女のその慰めでしかない言葉が胸に刺さった。温かい水が体内に染み渡るように、心に響く。
モモ先生が頭を撫でる。モモ先生の話が終わり、少しの間を設けた後、俺は口を開いた。
「俺、頑張ったんですよ。運動したことないのに戦闘の訓練をさせられて、戦ったことがないのにモンスターと戦わされて、知り合いが死んで、仲間に裏切られて、人を救ったのに石投げられて。でも。俺は勇者だから。俺は勇者だから頑張って、頑張って、頑張って頑張って頑張って。耐えてきたのに。ようやく魔王倒したのに。なのに一眠りしたら誰も頑張りを知らない。勇者の伝説は誰もが知っているのに、俺の努力は誰も知らない!俺を誰も知らないんですよ。誰一人、俺って人間を知らないんです。一人ぼっちです。ずっと、ずっと、寂しかった。」
彼女の顔は見えない。どんな表情をしているのかも、わからない。
「でも、最近は悪くないんですよ。友達が出来ましたんです。よく、友達とか先輩が頼ってくれるんですよ。おかしいですよね。世界の英雄だった頃はあんなに尊敬されていたのに、今はその大多数の尊敬よりひとりのお願いの方が嬉しい。きっと、寂しかったんでしょうね。すいません、自分語りして。」
「何の話ですか?私撫でるのに夢中になりすぎて聞いていませんでした。」
嫌になるくらい気遣いのできる女だ。もし人間だったなら良い母親になっていたに違いない。
「少し寝られてはいかがです?眠くなってきたでしょう?」
「眠くなっては来ていませんね。」
「いいえ、眠くなってきたはずです。」
言われた通り眠くなってきた。きっとモモ先生がスリープの魔術を使ったのだろう。
視界がぼやけ、意識が遠のき、まぶたが重くなる。そして、眠りに付くのだった。
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