13話:ダウジング棒は時代遅れですか?
「ダンジョン内でのイレギュラー。あの血気盛んな女との付き合いで秋葉原ダンジョンに潜ったらケルベロスのいる特殊なボス部屋に遭遇したと。ソナタはほんと面倒事が大好きなようだなぁ。」
「せめて巻き込まれ体質と言って欲しい。」
勉強会が終わり、帰宅しようとしていたところでジェヘラに捕まり、言われるがままジェヘラを待っていたリムジンに乗せられて彼女の家に招かれた。
ジェヘラの住む西地区は富裕層住宅街だ。西地区にはゴミひとつ落ちていない道路に如何にも高そうな街路樹が並んでいる。スーパーどころかコンビニすらないので、一番くじなんかやってる店は西地区に存在しないのだろう。
その富裕層住宅街である西地区で1番大きな家がジェヘラの住む屋敷。魔族の大貴族や王族が帝都高に通うだけのために建てられた仮住まいだ。
魔族は魔王討伐後の歴史を敗北の2文字を飾ってはいるが、世界に与える影響力は今もなお絶大で、特に魔族の多く住む魔王直系の王族が治めている魔族の国はGDPが3位となっている。ちなみに2位は大和国で1位がアメリゴ連邦となっている。
*
「優希の関わっている事件を全て巻き込まれただけと言うのはちと強引ではないか?黒ゴブリンに魔術研究部、ダンジョンの件までソナタが行動を起こさなければ避けられた事象であろうよ。」
「ぐぅの音も出ない正論。いやそもそもなんで黒いゴブリンの件知ってるんだよ。」
「そりゃあ我は魔王であるからな。諜報活動が出来る使役モンスターくらいは手持ちにある。あの黒いゴブリン、ガーディアン協会と冒険者教会で話し合ってエクストラゴブリンと名付けたそうだが、知っておったか?」
「知らなかったよ。お前ってほんとおっかねぇな。」
エクストラゴブリンと名付けた。つまりはモンスターに関わる教会が黒いゴブリンをイレギュラーであると認めたに他ならない。
「それで、ジェヘラはダンジョンでの遭遇についてどう思う?」
「それの答えはソナタの中でもう付いているのではないか?」
「質問の答えになってないが、まぁ付いてはいる。ダンジョンでのイレギュラー。あれは偶然ではなく故意だ。これは俺の妄想でしかないのだが、邪神にはもう既に意識があってダンジョンを操作する力を持っている。秋葉原ダンジョンの件は俺の今の実力を測りたくて試してきたに過ぎない。どうか?」
「我がその場にいた訳ではない故にわからぬことはあるが、少なからずダンジョンを操作する力については正解である。ダンジョンとは邪神が人の魂を集める為の罠場。であるならばダンジョンの中を弄ることなんぞ造作もない。我も実際邪神の力を借りてダンジョンを基地にしておった事もあったしな。」
紅茶を啜りながらジェヘラはクッキーを口にする。紅茶もクッキーもその辺で買えるような安物ではないのだろう。
「それにしても邪神に意識が戻ったとなると、不味いことになったな。」
「と、言うと?」
「邪神に意識がある。それはつまり邪神復活が近いことを意味するのだ。良く見積って70%、悪く見て90%と言った所であろう。」
「かなり深刻じゃねぇか。どうするんだよ。」
「せっかく集まったことだし、今から邪神の核の破片を探しに行く。付いてまいれ。」
・・・・・・・
ダウジング棒を両手に持ってジェヘラと俺は帝都高の周辺を散策していた。どうやらジェヘラには邪神の元使徒だった事で邪神の核の破片を探せる力があるらしい。正確な場所どころか破片の方位すらわからないが、破片が自分から近いか遠いかは若干わかるらしい、のだが……。
「破片のオーラが強すぎて逆にわからぬ。」
「駄目じゃねぇか。ちなみにそのダウジング棒は何の意味があるんだ?」
「何の意味もない。ただの雰囲気である。」
「なら今すぐやめてくれ。不審者すぎる。」
ファンタジー兄妹、ダウジング棒を持って高校の外周を徘徊か、なんてSNSで写真と一緒に回された日には俺のスクールライフはおしまいだ。まぁ、実のところ既に終わりかけてはいるのだが。
「帝都高の周辺にあるのは事実なんだろ?ひとつひとつしらみ潰しに探すしかないな。」
「で、あるな。」
とりあえず校内周辺にある店や公園に入り、オーラの強弱とやらを測ることにした。強すぎるオーラ故に強弱がわからないが、間近にあればわかるらしい。魔王印のジェヘラレーダーは精度と信頼性に疑問が残るがそれしか方法がないのだから頼るしかない。
それから1時間かけて店や公園の中を散策したりと帝都高の外周を散策した。マンホールの中や林の中も見てみたが見つからず、それらしき反応もなし。
「なぁジェヘラ。ダンジョンで出たケルベロスなんだが、魔王城にいたやつと比べたらすっごく弱かったんだよ。なんで弱いケルベロスが出たんだと思う?」
「それはきっと生産コストであるな。ダンジョン内に出せるモンスターの数と強さはダンジョン事に違う。それはダンジョンごとに使えるポイントみたいなモノの量が違うが故。強ければ強いほどポイントを使うのであるが、ダンジョンのモンスターの種類を統一すればボーナスで強いモンスターが安くなる。」
「なんか凄い俗っぽいな。」
「今回のケルベロスの件。秋葉原ダンジョンのモンスターはゴブリンなどの雑魚かキメラが基本であろう?それはきっと秋葉原ダンジョンの使えるポイントが少ないから。その少ないポイントの中でケルベロスを出すとなると、完全体ではとてもポイントが払えない。故に、不完全な個体を出すしかなかったのであろう。」
その話からすると、もし挑んだダンジョンが秋葉原ダンジョンみたいな難易度が高くないダンジョンだったから不完全なケルベロスで済んだが、もし高難易度なダンジョンであったのなら完全体ケルベロスが出ていた訳だ。
「よくわかった。やっぱ元使徒な魔王なだけあって詳しいな。」
「そうであろう?気になった事があれば何でも我に聞けば良い。」
「じゃあそんな頼りになる魔王様に質問なんだが、核の破片は見つかりそうか?」
「一向に見つからん。ここら辺にあるのは間違いないのであるが、何故か見つからん。オーラの強さも変わらないのだからお手上げよ。」
「なんで見つからないんだろうな。高校の周辺にあるのは確かなんだろ?なのに、なんで……。ん?周辺?」
高校の周辺を探しているが見つからず、オーラの強さは同じ。近付くほどオーラは強くなり、遠くなればオーラは弱くなる。なのに、移動してもオーラの強さは変わらない。何故ならオーラが強すぎるから、ではなく。
「俺らって帝都高の周りをぐるぐる探していたよな?」
「そうであるぞ?それがどうした?」
「ジェヘラ。そもそもなのだが、帝都高の敷地内は探したのか?オーラの強さはどうだった?」
「いや、探してはおらん。オーラも見てはおらんかった。」
「オーラの強さが変わらないのってオーラが強すぎるんじゃなくて、単に距離が変わってないからでは?」
「……。」
ジェヘラが珍しく目を逸らす。
「俺ら馬鹿じゃん。とんだ馬鹿野郎じゃん。」
「校内に今すぐ行こう。夜の敷地内は結界で守られておるが、帝都高生な我らなら入れるであろう。」
「そうだな。どうする?わざわざ正門から入るか?」
「それは愚問であるぞ。フェンスからに決まっておろう。行くぞ!」
身体強化魔術で地面を踏み蹴り、身体を高く飛ばしてから身体強化魔術を切って敷地内に侵入。落ちると同時に身体を反重力魔術で着地にかかる勢いを軽減させた。
身体強化魔術を切って貼り直したのは結界に触れた際の身体強化魔術との接触が履歴として残るのを回避するため。身体強化魔術の切り貼りは高等技術ではあるが、俺らからしたら朝飯前だ。
音を立てずに着地し、辺りを見渡す。警備員も誰もいなかった為、気絶させる必要はないみたいだ。隠蔽魔術を使い自らを透明化させた。
「手馴れておるな。流石は勇者。我が部下の城をめちゃくちゃにしてくれただけある。」
勇者パーティは少数精鋭な為、魔王討伐の旅で魔族の貴族が所有する城を攻める時は暗殺や工作活動が多かった。城に忍び込んで城主を襲って、を繰り返していくうちに慣れてしまったのだ。
脳内に直接語り掛けることの出来る念話魔術を使い、ジェヘラに話しかける。
「この先は念話での情報共有とする。いけるか?」
「もちろんだとも。」
「核のオーラはどうだ?」
「強くなったのぅ。やはり校内で間違いないようだ。」
「何故今まで校内のオーラを見ていなかったんだ……。」
「灯台下暗しであったのだよ。優希よ、思っている事が念話に乗っておるぞ?」
帝都高の敷地は広い。高校の範疇を超えもはや大学並み。流石は大和国で1位2位を争う魔術の進学校なだけはある。
その帝都高の敷地内をしらみ潰しに探すのも良いが、今日はめぼしい場所にいくつもりだ。
「ちょっと思ったんだが、核の破片が地中に埋まっているってことはないのか?」
「それはない。ハッキリと言える。核の破片が地中に埋まっているのであればオーラを感じん。それに、核の破片は動くしのぅ。」
「えっ、核って水晶体じゃないのか?生き物の中に埋め込まれているとか?」
「そうではなく、核の破片は個々に動いて集まろうとするのだ。邪神に意識があり、破片を動かせるのだから何時までも地中に埋もれているとは到底思えん。それに使徒化ができるのだから人間を使うなりモンスターを使うなりで掘らせるであろう。」
「あぁ、邪神の核には生き物を味方にする力があるもんな。破片にも同じ力があっても不思議じゃない訳だ。その邪神に操られた奴を使徒って言うんだっけか?」
「うむ、それで正しい。まぁ使徒って呼び方は我がそう呼んでいるだけであるがな。」
「核の破片にも同じく操る力があるなら校内は使徒まみれなんじゃないか?」
「そこについてはわからんとしか言いようがない。この目で見てみんとわからんな。」
のんびりと歩いて念話で話しながら破片を探す。潜入先が城や基地ではなく高校なため焦る必要がない。見つからなくても明日探せばいい。今日見つけられなくて大変なことになるのならとっくの昔に大変なことになっているはず。邪神の核の破片だなんてこの世を壊しかねない呪物なのに歩いて探しているだなんて我ながら呑気なものだ。
「たぶんあれであるな。」
「おっ、見つかったか?」
「あぁ。恐らくあの建物の中だ。」
「職員会館か。そこなら確かに隠せそうだよな。どうする?今日行ってみるか?」
「もちろん行くとも。」
職員会館とは教員や用務員のオフィス、使わない教材をしまう倉庫がある学校職員用の建物だ。学生証の再発行か課業外の教員に用事がある時以外に立ち寄る用事のない為、生徒からしたら思い出が薄い。教員会館は校内に何かを隠すのにはぴったりなのだ。
職員会館の中を一階ずつ上がり、くまなく探す。
「今更なんだが、隠蔽魔術って防犯カメラにも有効なのか?」
「半分有効で、半分有効ではない。」
「と、言うと?」
「魔道具を使った隠蔽魔術は映るが、魔道具を使わん隠蔽魔術であるなら映らん。魔術としての精度次第なわけだ。」
「流石魔王だな。現代の魔術事情にも詳しい。」
「ふっ、隠蔽魔術の性能ぐらい履修済みよ。」
職員会館を散策する途中、教員や用務員とすれ違うが俺等に気付く気配がない。このまま職員会館を全て散策できそうな勢いで一部屋ずつジェヘラレーダーを使い邪神の核を探していく。一階、二階と散策し、そして最上階にある理事長室まで来た。
「ここであるな、間違いない。」
「ようやくって感じだな。よし、入るか。解錠魔術で開けるぞ?」
「いや、待て。……どうやら結界が張られているようだ。」
「結界?隠蔽魔術かかってんだからすり抜けられるだろ。」
「それが、そう出来ないほどの結界を作れる相当な術者らしい。ソナタも見てみよ。こりゃ我らの全盛期ですらおらん術者の結界であるぞ。」
手のひらを理事長室に向け、魔術を探る。確かに結界がある。それも注意して探らないと見えない特殊な結界が貼られてあった。
この結界が張られたこの理事長室は例えるなら金庫だ。12桁の暗証番号が必要で、3回間違えると警報がなる。もちろんゴリ押しで開けても警報が鳴り、一度触れて時間が経っても鳴る。俺のエクスカリバーなら結界の効果を打ち消して警報を鳴らすことなく破れるのだろうが、そんなことをしたら街の魔力探知システムの方が警報を鳴らすだろう。
つまり、ツミなのだ。
「一旦引き上げるか。帰って策を考えよう。どうせ核は逃げないんだからな。いや、逃げはするのか?まぁ、とりあえず帰ろう。」
「で、あるな。」
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「連載しろ!!」
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作者大歓喜します!!
★5をつけてもらえるとモチベがすごぉぉおく
上がって、「また書くぞぉ!」となり、
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