第3話【闇に堕ちるけども】
ボッチなりに、TRPGをやる手段は幾つもある。
その中で一番手っ取り早いのが、「特定コミュニティに所属する事」である。
宇辻も、幾つかの特定コミュニティに所属した経験がある。
そのコミュニティ内で活動していけば、リアルがいくらボッチだろうと、TRPGの募集を出してくれるGMが何人か所属していれば、卓にありつくことができるのだ。
ただ、そのコミュニティに所属するにも問題がある。
「……会話めんどくせぇ」
そう特にボッチには。
近年、TRPGは内輪的になってきたと、宇辻は思っている。
ちょっと前までは【X】での応募などがあり、そちらが活発だった時もあったが、ディスコードのコミュニティ機能に依存した安定した【システム】の話題がある程度のPLたちの欲求を満たしてくれる。
これは【X】での呟きだけでは得られないコミュニケーションによる欲求の解放と同時に、同じ【システム】を持つ同志としての感覚を共有できる。
そしてコミュニティに所属するだけで、誰かが勝手に卓を、GMをやってくれるという安心感。
GM側からすれば、誰かが卓を立ててくれればPLとして来てくれるという期待。
そうしたモノがこうした現状を加速させていったのだと宇辻は思っていた。
宇辻も自身が特にやりたいと思っている【システム】に関してはコミュニティに所属し、時々卓の募集を眺める事をしている(参加するかは別)。
コミュニティ内での信頼のために、雑談チャットに交じり会話をした方が良いとは思うのだが、
「何か俺が思ってる意見と違う……。これ火種だ。やめよう」
GMとしての自身の感覚を完全に掴んでしまっている宇辻は、【固い意志】を持っていた。
その意志はそう簡単に崩れる事はなく、他人との衝突の種であると長年の経験から分かってしまっている(というか衝突した)。
自身の意見と違う感覚の意見については、穏便に「何もチャットしない」という静止を続ける。
そうし続ける事で争いを避け、何も言わない。
ただ、雑談チャットはそれだけでは止まらない。
「……あ、火種投下した」
別の人が声高々に発言してしまい、それに反発して雑談チャットは大荒れとなる。
「………暫くこのコミュニティには近寄らないでおこう」
軽い炎上状態となったチャット欄の通知をオフにして閉じる。
――何故皆静かに過ごせないのだろうか。
始まった事に憐憫を覚えつつも、どうしようか考える。
「……しばらくはTRPGできないかもな」
そう、ボッチの生命線は短い。
こうしたちょっとしたことでも糸はぷっつりと消え、数か月ほどTRPGができない事もあるのだ。
こういう時にはリアルで友達がいればTRPGをやれる人もいるが、ボッチにはそういった人もいない。
悲しみ事実に、宇辻は次の卓を何とか探そうと、コミュニティから離れ、ネットの海に沈んでいった。




