第二話 パズルの色
時間が出来たので第二話を書いてみました。
「ーー 今の騒音はなんですか」
葛城進一が丸山警部に尋ねた。
「あの騒音は警察の緊急車両の音ですよ。最近は物騒な時代になりまして」
「そうですか」
「シンね、警部となに世間話しているのよ」
葛城恵子の声に少女が反応した。
「お姉さんの言う通りよ。今日は私に用があるのでしょう」
丸山警部は門田警部補を一瞥して、右手で拳を作り口もとに当て軽く咳払いをする仕草をした。
「丸山さん、風邪ですか? 」
「ちょっと喉がーー 門田、そうじゃなくて」
「良かった。風邪、うつると嫌じゃないですか」
門田の的外れの会話に葛城夫妻は他人の素ぶりを決めていた。
しかし少女には我慢する理由も無く堰を切ったように大声で笑う。
小さな身体から出て来た大きな笑い声。
人通りの少ない骨董屋の前で救われた門田は少女に微笑み言った。
「受けた?良かったーー ところで、それは」
「これ、ただの紫色の花よ」
「じゃあ、トリカブトじゃないのかな」
「刑事さん、そんなの当たり前じゃないですか? 」
「そうだよな。女子高生ですよね」
「そうよ、普通のアルバイトの女子高生ですよ」
「ええええ、アルバイトなの」
「そうよ、普通のアルバイトよ」
「じゃあ、あの亡くなっていた男の娘さんじゃないんですか」
「刑事さんたちの思い込みよ」
「じゃあ、なんでここにいるの」
「あの日は、お給料日だったのよ」
「でも、シャッターが閉まっていたよね」
「店長から営業時間以外はシャッターを閉めるように言われたので」
「でも、今日は」
「この店、実は私たちの家なのよ」
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門田は、少女から伝えられるキーワードを頭の中で整理出来ずに、不機嫌な表情になった。
「門田さん、そんな顔をするといけないわよ」
恵子の声に少女が微笑みを返す。
恵子が少女に優しく尋ねた。
「亡くなっていた店長。握られていた盗難品。そしてアルバイトなのに自宅。合っているかしら」
「盗難品は知らないけど、合っているわ」
「つまり、あなたがあの店長にお店を貸してアルバイトをしていたと言うことですか」
「そうなるわね」
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「ところで、あなたの名前ーー 教えてくれる? 」
「それってーー 任意ですか?命令ですか? 」
「どちらでもないわね。呼びずらいだけね」
少女は頷き言った。
「ーー 佐伯雫です」
「じゃあ、雫ちゃんと呼んでいい」
「いいけど、みんなシズと呼んでいるわよ」
「じゃあ、シズちゃんね」
「いいわ」
「シズちゃんには双子の妹がいるわね」
「零のことね」
「あの時、最初に遭遇したのは零ちゃんよね」
「シズちゃんは、次の中古ピアノ店で会ったのよね」
「そうなるわ」
「ここは、お二人の自宅でしょう」
「そうよ。ここの上がそうよ」
「出入り口はこの骨董屋のシャッターだけですか? 」
「裏口もあるけど。不便なのでこちらを使っているわね 」
「なるほど。裏口もあるのね」
⬜︎⬜︎⬜︎
佐伯雫と葛城恵子の会話を聞いていた丸山が間に入る。
「佐伯さん、いやシズちゃんでしたね。おじさんにも教えてくれる」
「いいわよ。オヤジ嫌いじゃないから」
「あの日、零ちゃんが目撃して、後日、シズちゃんと私たちが中古ピアノ店で出会った。そして皇居近くの喫茶店で2人と出会ったまで合っているかな」
「合っているわ」
「でもさ、あの時、なんで喫茶店まで付いて来れたの」
「それは零が知っているわね」
「意味がわからないんですけど」
「零はちょっとし能力者で催眠術が得意なの」
「・・・・・・ 」
「なんと説明すればいいかな」
「・・・・・・ 」
「相手の記憶に目隠しするのよ。相手の目の前にいないように見えるように」
女子高生の佐伯雫の説明を傍で聞いていた門田警部補が掌を拳で叩き言った。
「佐伯さん、それ凄いよ。異世界アニメみたい」
「門田さん、これは現実なのよ」
少女はほっぺたを膨らませ、不貞腐れた声で門田に言った。
押し黙っていた葛城進一が門田を無視して少女に尋ねる。
「雫さんも、それ出来るんですか? 」
「わからないわ。ただ・・・・・・ 」
「ただーー なんですか」
「零は意図的に出来るみたいすけど、私の場合、わからないのよ」
「双子ですよね」
隣の恵子が進一の袖を掴み、進一の耳元で雫に聞こえる声で囁く。
「シン、双子って能力ーー 同じじゃないかしら? 」
「お姉さん、そんなことないわ。零だけ特別なの・・・・・・ 」
恵子は少女を見て笑みを浮かべ呟いた。
「まるで色の違うパズルね・・・・・・ 」
「パズルですか? 零とわたし」
少女のほっぺたがみるみる赤く大きくなった。
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三日月未来




