呪水
雨が降り続く夜だった。
町のあちこちに水溜まりができ、街灯の光を揺らしている。
その中のひとつ、小さな公園の池はいつもより濁っていた。
「呪われた水だ」
地元の老人はそう言い、池を見つめて目を伏せた。
「いったい、何を言うんです。おじいさん」
「おぉ、あなたは大越ダイアモンド?」
「いやぁ、有名人になって困っちゃうな」
「首から大越ダイアモンドとプラカードをさげていたので。ともかく、この池には水ができると不吉なのじゃよ」
「水だ!」
突如、後ろで声が聞こえた。見れば、100人ほどの群衆が池へと走り出している。
まるでムーの群れである。見たことはない。
「正しくはヌーだ」
「エクスターミネーターマン! 早く逃げるんじゃ! 巻き込まれてしまう!」
群衆は池へとそのままジャブジャブと深みへと入っていく。
水をぐびぐびと口をつけて飲み始めた。
このままでは、感染症になってしまう。
「もう、この街は終わりじゃ……この勢いで街の人間がどんどん水を飲みに」
「おじいさん」
大越ダイアモンドは、拳を強く握り、エクスターミネーターマンに変身した。
「お前、おじいさんじゃないな! とっさにエクスターミネーターマンと呼んだ」
「くっバレたか」
おじいさんは、突如、ばっと服を脱ぐと老人のよぼよぼの身体を晒した。
これを読んでいる君も、書いている私も、いつかは老いる。
「私はフジヒエダ。エクスターミネーターマン。だが、遅い。この群衆はすでにこの呪水によって手遅れだ。すぐに暴れ始めて、手も付けられないぞ」
「エクスターミネータビーム!」
「ぐああああああああああぁぁあああ」
青いチェレンコフ光が、フジヒエダの身体を粉微塵に消し飛ばした。
「ついでに」
「ぐああああああああああぁぁあああ」
群衆も粉微塵に消えた。
「呪水。恐ろしいホラー現象だった」
戦えエクスターミネーターマン、正義の為に。