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「うそこくじゃ、ない……?」



 布団に包まってみっともなくぴぃぴぃとみっともなく泣いてたら、青崎君に布団ひん剥かれてあの時の告白が嘘告でないことを必死で、それはもう本当に必死の形相で説明された。

 え……ほんとうに? マジのマジで? うそぉ……。



「嘘じゃねーよ。それだけは嘘じゃない。つーか、そもそもなんで嘘告だなんて思ったんだよ!?」

「だって、わたし美人じゃないし、可愛くもないし……青崎君が付き合ってきた子たちよりそんな綺麗じゃないでしょ」

「確かにそうだけど」

「否定くらいしてよぉ……」

「事実だし。それでも俺は里香のことが好きだし」

「あぅ」



 真っ直ぐ見つめられて、恥ずかしがることもなく青崎君にはっきりと言われた。

 あんまりにも真っ直ぐ見つめてくるものだから、嫌でも分かる。ようやく、分かった。



 ……そっか。ちゃんと好きだっだんだ。

 わたしのことが本当に好きで、だから告白してくれたんだ。あんなに優しくしてくれたんだ。



 ……そう考えると控えめに言ってもわたしだいぶ最低だな?



 青崎君はわたしのことが本当に好きだから告白してくれたのに、それを最初から疑って、嘘告だとか遊びだとか思ってたわけだし。

 いくら女遊びが激しいって噂があっても、もっと早くちゃんと青崎君と話しとけばよかった……。わたしのばか……。



「まあ俺ももっとちゃんと言葉で伝えてたら良かったよな。ただでさえそこそこ自分の悪い噂あるわけだし」

「……横取りとか、女子を取っ替え引っ替えしてたとか?」

「横取りはデマ。取っ替え引っ替えは……まあしてたけど。あ、でも今は里香一筋だからな!? 他の女になんか興味ねえし!」

「お、おう。そんな食い気味に言わんでも。そのあたりはまあ……付き合ってからのこととさっきの説明で信用するけど」



 そう言えば安心したように青崎君は笑った。

 やっぱイケメンの笑顔って破壊力あるなぁ。しかも嬉しそうな笑顔とか、破壊力が倍増するような気がする。



「で、さあ。里香も俺のこと好きってことでいいんだよな?」

「え? ……えっと。うん、そうだと思う……。たぶん」

「たぶんってなんだよ」

「誰かのこと好きになったことなんてないし」



 青崎君と付き合うまではこちとら彼氏なんていたことないし、付き合いたいと思った人もいないんだぞ。

 だから好きかどうかはよく分からないんだわ。



「じゃあ、俺とキスした時嫌だった? 気持ち悪いって思った?」

「ええっと、その……そうは、思わなかった……けど」



 そうだ。嫌じゃなかった。

 びっくりはしたけど、全然嫌だとか気持ち悪いとかはこれっぽっちも思わなかった。



「そっかぁ。それじゃあ俺のこと好きってことだな」

「……キスだけでそこまで断言できる?」

「できるよ。だって嫌いな奴にされたって気色悪いだけだろ」

「た、確かに……」



 なるほどと頷き……ん? それってつまりわたしは青崎君のことを好きと認めたも同然では。

 いやまあ好きなんだけど、好きなんだけども! 好きで間違い無いんだけども!

 でも今までそういう意味で好きとか考えたことなくて、ずっと友達としての好きでして!



 あっ、ダメだダメだ。意識し出したらなんか熱出した時みたいに全身が……これ今絶対顔赤い。分かる。

 だってこっち見て青崎君めっちゃニヤニヤしてらっしゃるんだもの。やめて、そんな顔向けてこないで。



 嗚呼、穴があるなら埋まりたい気持ちってこういう気持ちなのね……。なるほど……。



 あんまり知りたくなかったことを知り、この場から逃げ出そうと立ち上がりかけた時、いつの間にか目の前まで迫って来ていた青崎君に押し倒された。

 あらやだデジャブ。



「こーら。逃げない逃げない」

「どうしてそんなに楽しそうなの!?」

「いやぁ、だって好きな子に好きだって言われたら嬉しいだろ?」

「好きとは言ってない! 言ってないよ!?」

「頷いた時点で言ってるのと一緒なんだよなぁ」



 うわぁぁぁもぉぉぉ! わたしの上から退いてくれ! そんなイイ笑顔で見下ろさないで!

 今から自分の墓穴を掘りに行くんだからよぉ!!



「もうちょっと俺と楽しいことしような、りぃーかちゃん」

「めっちゃ悪いお顔してらっしゃいますよ青崎君」

「前から言ってたけど、苗字じゃなくて名前で呼べよ。両想いなんだからさ」

「いや、あの、心の準備が全くこれっぽっちもできてないんで名前呼びは勘弁していただければ……」

「だぁーめ。……両想い確認できた記念ってことで。親も仕事で今日家にいないから、いっぱいいちゃつこうな」



 語尾にハートマークが付きそうなくらいに甘ったるい声で楽しげに告げる青崎君の目は、ギラギラとした光を宿していて、ちっとも笑ってなんかいなかった。

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