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 楽しい日々ばかりだと、時間の流れはあまりにも早くもう十二月。

 あっという間に冬休みに入り、クリスマスまであと三日だ。



 そしてクリスマスといえば、やはり家族や友達、恋人などとプレゼント交換をするものだろう。

 今まで一度もそこまで親しい相手はできたことがないので、プレゼント交換なんてイベントはやったことがないけれど。

 けれど、今年は違う。今の要にはプレゼントを贈りたいと思う相手がちゃんといる。



 だから里香へと贈るプレゼントを買うために、助っ人を呼ぶことにした。



「というわけで木野、プレゼント選び手伝ってくれ」

「なんで私に頼むの?」

「不本意だけどお前が一番里香のことを知っているし、あと女子受けする店に入るのに男一人だと辛い」

「里香連れてったらいいじゃん」

「サプライズで渡したいんだ」

「あー、なるほど。しょうがない、付き合ってあげる。でも、代わりにチキン買って」

「分かった」



 というわけで。要はプレゼントを買うため由莉奈と一緒に、地元から少し離れた大型のショッピングモールへとやって来た。



 ショッピンモールは冬休みのためか、平日だというのに人が多かった。

 ぱっと見、高校生くらいの客が多かったので、おそらく彼等彼女等も自分と同じ目的でここに訪れているのだろう。



 誰かへ贈るためのプレゼントを真剣に吟味している人たちの姿を横目に見ながら、自分も彼女に喜んでもらえる物を選ぶぞと、改めて気合を入れた。



 そうしてあっちこっちの店を見て回り、じっくりと商品を吟味したけれど、いまいちピンと来る物が見つけられない。



 いっそお菓子などの消え物にしようかとも思ったけれど、付き合い始めて初のクリスマスなのだ。それではあまりにも味気ない。

 なにより要自身が、ちゃんと形に残る物を選びたかった。

 とは言っても、未だ良い物を見つけることはできず、歩き回って疲れたと言った由莉奈ののため目に付いた喫茶店に入る。



「あといくつジュエリーショップがあるんだ?」

「んー、あと四店舗くらいだね。それで見つからなかったから今日はもう帰ろうよ。流石にちょっと疲れた」

「散々付き合わせちまったもんな。悪い。でも、木野もなんかプレゼント買わなくていいのか?」

「もう買ってる」

「……マジかよ」

「マジマジ。さっさと買っといた方が、直前になって慌てずに済むし」



 優雅に紅茶を飲みながら、既にプレゼントは買っているという由莉奈の言葉に、要は暫く呆然と固まった。

 そしてとある事実に気がつく。



「も、もしかして、里香も……?」

「そうだと思うよ。冬休み前にクリスマスプレゼントの準備してるよって言ってたし」

「マジかよ」



 女子たちの行動の速さに唖然とした。



 喫茶店を出てから、残りの店のうち三店を回ったけれど、それでもやはりピンと来るものが見つからない。

 残るは一店。ここで見つからなければ、また別の店を探さなくてはならない。



 光を反射してキラキラと輝くアクセサリーたちを吟味し、やはりどうしてもこれだと思う物がなくて、諦めかけたその時。

 ふと、目を引く物があった。



 近づいて見てみれば、それは真珠を持ったイルカのネックレスだった。

 モチーフとしてはよくある物だし、ペアで二つ合わせるとハートの形になるというものまた、実にありがちな物だ。

 しかし、そのネックレスが置いてある台座の横に置いてある看板に『ご自由にお好きな言葉を入れられます』と書いてあった。



「これにする」

「あ、決まったの。……イルカじゃん。里香好きなんだよね。値段は……え、ちょ、これほんとに買うわけ?」

「買う」

「……里香には絶対、値段は言わない方がいいよこれ」

「そんなバカなこと誰がするかよ」



 そもそもプレゼントの値段をわざわざ教えるのはちょっとどうかと思う。

 少しジト目で由莉奈の方を見て、要は近くにいた店員に声をかけた。

 数十分後、店から出た要はひどくご機嫌だった。見送ってくれた店員もほくほく顔だった。



 それから、数日経ったクリスマス当日のお昼過ぎに里香が要の家に来た。



 里香からのプレゼントは、手編みのマフラーと手袋のセットと、要の推しのアニメキャラクターの編みぐるみだった。



「いやぁ、徹夜して作ってなんとか間に合いました……」



 ちなみに由莉奈へのプレゼントは、手袋と彼女の好きなアニメの推しキャラ三体をデフォルメした編みぐるみ。

 渡した瞬間、ぎゅっと抱きしめられて二つのおメロン様に埋もれたそうだ。



「手作りしてくれたんだ。ありがとう、大事にする。今度は俺からも。メリークリスマス」

「ありがとう! 開けて良い?」

「もちろん」



 里香は要から渡されたプレゼントの箱をゆっくりと開け、中に入ったイルカのネックレスに目を輝かせた。



「可愛い! ありがとう!」

「ちなみにそれ、俺とお揃い。くっ付けるとハートの形になるんだ」



 既に身に付けていたネックレスのイルカの部分をくっ付けて見せると、ちょっと驚いた顔をした後照れ臭そうに笑った。



「……ほんとだ、お揃いだね。凄く嬉しい」

「裏も見て」

「裏?」



 言われるがままに手に持ったイルカをひっくり返すと、そこにこう書かれていた。



『大好き』



 茹で蛸のように真っ赤になった彼女を見て、要は心底幸せそうに笑った。

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