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第五話 女の子として

 父さんたちは、ボクを元の身体に戻す薬を開発中。でも、それが完成するまでは女の子として生活しなきゃならないらしい。……とはいえ、正直まだ全然慣れないし、どうすればいいのか分からないことだらけだ。


 それに、同級生たちが『女の子の楓太』をどう受け止めるのかも不安だった。新しい環境に飛び込むのが怖いわけではないけれど、やっぱり周囲の目が気になる。

 そんなわけで、両親と妹の勧めもあって、思い切ってしばらく休学することに決めた。


「何か困ったことない? 学校のことでも、着る服のことでも、何でもいいから、あたしに言ってよ!」

「……ありがとな、紗希。でも、なんかさ、全部が新しくて……どうしていいかわからないんだ」

「そんなの、あたしと一緒に頑張ればいいじゃん! お兄ちゃんが女の子になったって、好きなお兄ちゃんには変わりないんだから!」

 紗は少しむくれて、じっとボクを見つめたあと、そう言った。少し驚いたけれど、そんな風に言れると、なんだか気が楽になる。


「……ありがと。でも、妹にばっかり頼ってるのも好悪いよな」

「えっ? 格好悪いとか関係ないでしょ! あたしが助けたいの! 不安で困ってるなら、あたしは何でもするよ? もっとあたしを頼ってよ」

 紗希の言葉に、少し笑って肩の力を抜いた。

「そっか。じゃ、頼ってもいいかな?」


「もちろん! 何でも言ってよ! お兄ちゃんが一人悩んでるの、見てられないもん!

 紗希は満面の笑みでうなずいた。正直、彼女その笑顔に救われている部分もある。



 紗希のブラコンっぷりは学校でも有名だ。

 そのおかげで、ボクは男子同級生から『妹に溺愛される兄』として羨ましがられている。

 一方、主に紗の同級生の女子からは、紗希がボクのことを自慢しているので『お兄さんはカッコいい』と思われているらしい。たしかに、紗希が言うように、身長はあるし、やや切れ長の目で冷静な印象があったと思うけれど、それは男子だった頃の話だ。


 夏休み明けには、ボクや紗希の同級生から休学の理由を聞かれるだろう。そのとき、紗希が困らないような答えを考えなきゃならない。


「紗希、夏休み明けにボクの同級生や、紗希の同級生の子からいろいろ聞かれると思うんだ」

「そうだよね……」

「『健康上の問題』として休むけど、命に関わる病気じゃないって言ってくれないかな。絶対に女の子になったなんて思わせないように」

「その辺は、まかせて!」

「すまないけど、しばらく我慢してくれ」

「うん。……って、もしもだよ? 薬の開発が遅れて留年したら、お兄ちゃんあたしの後輩になっちゃうよね!」

「えっ、ちょっと待ってそれは困る! そんなこと考えてなかった!」


「ふだん冷静なのに、こういうとこたま〜に抜けてるよね〜」

「う、うるさい! そんなこと言うなよ」

「ふふっ、そんなかわいい顔して怒っても全然こわくないよ〜だ」


 紗希のからかいに、つい顔が熱くなってしまったけれど、どうしても気になるのは薬の開発だ。一日でも早く終わってくないと、このブラコン妹の後輩になるなんて……考えただけでぞっとする!


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