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2話目-4部

夢を見ていたのだろう

一人の女性が魔樹の森の中に佇んでいた。その女性は黒髪に銀の瞳を輝かせ静かに空を見上げていたのだ、悲しそうな表情切なさが伝わってくるような雰囲気を醸し出すその女性は月明かりの中にいた。

ナスカは横になったまま薄目を開け、夢か現実か分からないそんな曖昧な感覚の中女性を見つめている、僅かな沈黙が流れこちらを向いた女性がナスカの方に歩み寄ってすぐ側で腰を落とした。髪に触れる優しい手、温かな波動が感じられナスカは目を閉じる。

「の・・あげ・・・ナスカ」

なんて言ったの?--

しかしナスカの意識は深い深い夢の中へと落ちていくのだった。


膝蹴りが飛び交う身体を回転させ相手の隙をつこうと攻撃を仕掛ける、がクルリと交わされてあと一歩届かない再度攻撃を仕掛けるがそれも簡単に回避された。

「どうしたナスカそんなんじゃ僕には届かないぞ」

「うるさいわね、これからよっ」

ナスカは高い木の枝から枝へとその身を自由に移動させ相手の隙をつく、どこから攻撃が来るのか分からないように移動を繰り返しその姿をくらます

あいつの後ろを取った--

その瞬間、ナスカの手刀が空を切る

しかしセイはさらにその上の速さでナスカの襟元を咥え地に転がした。

「きゃっ」

ズザッとナスカの身体が地面を擦るとそれと同時にセイは前足をナスカの首元に添えた。

「これで二十勝二十敗だな」

「くっ・・まだよ、私はまだ本気出してないんだから」

「そうだな、だが人間の姿でここまでやれるのは凄い事だぞ」

「片手間で抑えられてるあんたに言われるとムカつくわ」

ふふっとセイは笑ってみせる。

あーほんとムカついてくるわ、こいつの隙をつこうとしてもそれ以上の速さで交わされて逆にこっちがやられちゃう

何としてもこいつに一発かましてやらないと気が済まないわ--

「もう一度!」

ナスカは立ち上がって再度挑戦する。


ハァハァと息をついて汗を拭う

四十八勝0勝

「今日はこれくらいにするか」

「まだよ!」

肩で息を繰り返しながらナスカは口にする。

どうしても一発かましたいらしい、その根性は賞賛に値するが無茶だ

時はもう夕方近くになっていた。

だがナスカは諦めていない

「ナスカの体力と魔法力は底をついている、自分の力量も分からないほど愚かではないだろう」

「くっ・・・」

ナスカの表情が悔しさを物語っていた。

諦めたくないと思いながら己の気力が尽きかけている事は分かっていた、これ以上やっても意味は無いむしろ無駄な体力を使って味わいたくない敗北を味わうことになる・・

息を吐き出し悔しさを滲ませながらナスカは言った。

「ごめん、少しムキになりすぎてたわ、明日またお願いできるかしら?」

「ナスカはいい子だ」

完全に子供扱いよねこれって、額に青筋を浮かばせて唇を固く結びセイを睨みつける。

「今日はゆっくり休むんだ」

「・・ええ、そうするわ」

岩に腰かけてふぅと息を吐くとナスカは顔を伏せて思い詰めたように考え始めた、だが負けた悔しさからではない本来の姿の方が力は上だが素早い身のこなし細かな動作、小さな者相手に本来の身体は大きすぎる、それにより隙も生まれやすいいくら魔法を展開してもあいつを追い詰めることなんて出来ない、それよりも人の姿で立ち回った方がいいのかも、とナスカは考え暫くの間その場には沈黙が流れた。

「ナスカ」

「なに?」

突然セイが声を掛けてきた。

「ナスカは動きを考えすぎる、目で追うのではなく本能で感じ取れ、相手の動きに惑わされるな」

何かと思いきやアドバイスだった。

「わかってるわ、でも相手を認識しなくちゃ先が読めないじゃない」

「感覚を研ぎ澄ませろ、そうすれば見えてくる」

何よ見えるって意味が分からないわ--

一度はそうと思ったがナスカはセイの言ってる意味を少し考えてみた。はっきりとはしないがあと一つ何かが足りない事を心の奥底で掴みかけていたのだ。


修行の日々は続く、最速で攻撃をしてもセイには避けられる、魔法で油断を誘っても別の魔法で対処されてしまったり交わされたりしてしまう。

もはやナスカは人の姿をとっておらず本来の姿で修行をしていた。

それはナスカにとって屈辱でもあり自らの弱さをさらけ出した最後の手段だった、ナスカは認めていたのだ、この小さな獣に自分が劣っている事を・・・

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