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4話目-1部

少女は小さな胸を張ってふふんと意気込んで

「貴女、今から私の事は姉弟子と言いなさいなのよね、それか若奥様でも構わないのよね」

完全に二人を置き去りにして少女はこれが確定事項だとでも言うような態度で話をした。

「おいおいニイナ、僕は君を嫁に貰うなんて一言も言ってないぞ」

いつもは見せないセイの少しの慌てっぷりが少女の言葉に確信を持たせるかのような表現になってしまっているのにナスカは思いを馳せる。

だがそれとは別に胸の中から怒りに満ちた感情も膨れ上がっていた。

「あらセイ、なんだかそうでもない感じじゃない?!」

にこやかに微笑みを浮かべながらナスカの纏っているオーラは黒黒しいセイに圧迫を与えるかのような気配を漂わせていた。

「ナスカ、君までそんな事言わないでくれないか」

「私は先生の奥さんになるの!!」

「ニイナ、君は元の集落に帰るんだ」

「ヤダヤダ、私は先生が好きだから追いかけて来たんだもん、それに・・」

「それに?」

ニイナは言いずらそうに顔を背ける。

なんかモジモジしてるけどなんなんだろうか?

ナスカは少し呆れ顔。

セイは困った表情。

そしてニイナは今にも泣きそうだ。

「先生は私のことが嫌い?」

意を決してニイナがそう聞いてきた。今にも泣き出しそうな姿を見てセイは小さなため息を吐く。

「ニイナ、集落の長には村を出るって話してきたのかい?」

ビクリと少女の身体が震えそして涙目のニイナは無言のまま小さく頭を横に振る。

少しの沈黙が流れセイはニイナの膝に手を置いた、それだけでニイナは蛇に睨まれた蛙のように固まる。

「ニイナ、君の事は嫌いではないよただ僕にとっては仲良くなった仲間としか思えない、そして無断で集落を飛び出したのはいただけない、僕達が送ってあげるからニイナは集落に戻るんだ」

言われるかもしれないと思っていたのだろうニイナはセイの言葉に泣すがるような瞳で彼を見つめた。

「先生・・・」

ニイナはその言葉に涙を流した、彼を慕う思いとも思われる涙だ。これまで幾つもの危機を乗り越えここまでやって来たその想いが爆発したようにニイナは言葉を紡ぐ。

「私絶対帰らない!私は先生が好きなの!強くならなきゃ集落からも出しては貰えないだから村の修練だって欠かしたこと無かった、白夜に入れてからも沢山修練をしたし戦いもした他に劣らないよう頑張った、それは全部先生に会いたかったから!だから私集落には帰らない、お願い先生私をそばにいさせて欲しいのよね!」

「ニイナ」

セイは困り果てた、ニイナの性格は一度決めたら貫くタイプだと思い出したからだ、あの集落での日々を思い返すと説得だけでは帰ってくれそうもない。だからってここに置いて行くのも出来ない、セイは自然とナスカに振り向く。そして

「《どうしたものだろうか?》」

「《そんな事私に聞かれたって、セイが決めなさいよ》」

ナスカはムスッとした顔でセイに全てを手放した。

「《なんだ、怒ってるのか?》」

「《怒ってないわよ》」

「《そうか》『だが不機嫌そうだな』」

「なんで二人で見つめあってるのよね!」

「「えっ」」

念話を知らないニイナにとってセイとナスカの見方は恋人同士みたいに見えたのだろう、見つめ合う二人の空気感が何やら怪しく見えたみたいだ。

「ねぇ先生、その人なんなの?!」

なんなのと言われてもな・・なんかさっきも同じこと言ってなかったか?

「ナスカは仲間だ」

ツキンと心が痛んだ。仲間・・それだけ・・ナスカの心の痛みはセイが言葉を発する度に痛くなる。

なんなのこれは?!私とセイは彼が言うように仲間であり修行してもらってる師弟みたいなものなのに、なんであんな言葉一つで心が痛むの?!

「本当にそれだけ?さっきは連れ合いなんて言ってたけどやっぱり違うのよね!」

急に笑顔になりニイナはセイを見つめる。

「先生その人とは仲間なら私の事をお嫁さんにして欲しいのよね!」

「だから言っただろう、僕は誰とも番になる気は無いと」

それからいくら説得してもニイナの思いは変えられなく、仕方がないので暫く一緒にいることを了承したセイとナスカだった。

「やったぁ『一緒にいる時間が増えれば先生だって気持ちが変わるかもしれないわなのよね、しっかりと先生のサポート役を務めるのよね』」


そうこうしているうちに辺りはもう夕暮れ、お腹も空いてくる時間になった。

「セイ、獲物を取ってくるわね」

「ああ頼む、火はこちらでおこしておこう」

「了解よ」

その時、話に割り込むようにニイナが片腕を掲げる。

「ちょっと待ちなさいなのよね、妹弟子の狩りには姉弟子である私も同行するのよね」

はっ?まだそんなこと言ってるのね、てかこの子この森の過酷さ分かってるのかしら?

この森は魔樹の森、真猫族のいた森よりはるかに危険な場所。あっちでのAランクはこっちではCランクになるほどだと思うのだけど、この子の実力ってどの程度なのかしら?気にはなるわね。

「いや、ニイナはここに・・」

「いいわ、なら同行してもらおうかしら」

セイの言葉を遮るようにナスカは少女の申し出を受けた。

「《ナスカ、ニイナにこの森の狩りは難しいぞいくら白夜の出だからといっても多分まだ入ったばかりの見習い程度だと思うぞ》」

「《そんな事は承知の上よ、でも貴方を追いかけてこの森まで入ってこれたのならその実力も多少なりともあるんじゃないの?・・それに私もこの子の実力を見たいもの》」

ニヤリと笑うその笑みにはナスカの狡猾さが見え隠れしている。

遊びじゃないんだぞと思いながらニイナを見ると自信満々で仁王立ちしている姿が・・仕方ないか、と小さなため息を吐きナスカに念話で話しかける。

「《ナスカ、ニイナが危なくなったら助ける事が出来るか?》」

「《何言ってるの、そう始めから思ってたわよ》」

「《そうかそれなら頼む》」

セイがこんな風に言うのは初めてね、誰かを甘やかすなんて見たことないわ、私との戦闘訓練でもこんな甘やかしは無かったものそれだけこの子が大事ってことなのかしら?

そう思うとナスカは顔を伏せた。知らない感情に振り回されてセイの一挙一動に不安を煽られる彼の言葉に心が波打つ、その感情がなんなのか分からない。

ナスカは小さく頭を振り気持ちを押し殺した。

「それじゃあ行きましょうか?姉弟子のニイナちゃん」

ちょっと嫌味っぽくニコリと微笑みながら言うとニイナから苦情がかえってきた。どうやら嫌味は伝わったらしい。

ニイナを先頭に二人は獲物を狩るため森の中へと走っていく、その後ろ姿をセイが静かに見つめていた。


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