故障
『メッセージがきたよ!』
スマートフォンからお知らせがあった。メッセージアプリに新着があったようだ。
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炊飯器のちようしが悪いのでみてください
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義母からのメッセージだった。
炊飯器の調子は、電気屋さんに見て貰った方が良いと考えるのが一般的ではあるが、前科があるので、まずは私に声をかけてくださいと伝えてあるのだ。
どんな前科かと言うと、孫の為に買ったテレビゲームのリモコンが動かなくなり、保証期間の故障と言うことでメーカーに送ったら、すぐにメッセージ付きで送り返されたらしい。
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電池切れのようです。電池を新しいものにお取り替えください。
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天然なのか、マジボケなのか、メーカーってこんな客ばかりだったら大変だろうなと、気の毒に思ったのだ。
とりあえず仕事中のため、簡単な返信を送っておいた。
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帰ったらすぐに確認しますね。
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義父母のキッチンにある炊飯器は、割りと最近買ったものだ。そうすると、初期不良か、何か誤った使い方をしたのか、もしかすると、私が教えた炊飯器で作る柔らか煮豚を作って、動作異常を出したのか、空焚きでもしたのかもしれない。仕事が終わったら急いで帰り、見てみよう。
「何、又、買い物頼まれたの?」
私がスマートフォンを確認していたので、同僚から声をかけられた。
「いえ、炊飯器が不調らしく、見て欲しいようです」
「凄い! 家電の修理が出来るの?」
「できませんよ。ちょっと頼られただけです」
仕事が終わり、家路を急ぐ。
玄関を開けると、なんと、炊飯器の取扱い説明書を持った義母が待ち構えていた。
「お帰りなさい。待ってたわよ! はい、これ!」
私の言葉を待たず、炊飯器の取扱い説明書を渡された。
「兎に角、隅から隅まで読んでちょうだい」
婚家の人たちは、説明書を全く読まない。だからこそ、ゲーム機をメーカーに送ったと思われる。最近の取扱い説明書は、電池切れの心配まで書いてあるのだ。なので、文字を読むのは、本好きの私の担当になった。
「ただいま戻りました。ところで、どんな風に調子が悪いんですか?」
私は、取扱い説明書に目を通す前に質問してみた。
「兎に角、うんともすんとも言わないのよ。まだ新しいのに」
その返答に、私は結果を予想してしまった。
「えーと、確認ですけど、コンセントが抜けているなんて事は無いですよね?」
「え?」
そしてキッチンへ行くと、炊飯器のコンセントは、見事に抜けていた。
そりゃ動くはず無いよね。