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僕の家族(sideウィリアム)

僕に家族が増えた。

ブランシュっていうの。


ブランシュは僕が見つけた白い猫。木の上から下りられなくなっていたところをお姉ちゃんが助けてくれた。飼うって決まった時にブランシュって僕が名づけると、グルグルと喉を鳴らして喜んでたんだよ。その夜僕のせいで逃げちゃったけど、お姉ちゃんが説得して帰ってきてくれたの。


次の朝お姉ちゃんから「ちゃんと子猫を飼う環境を整えましょうね。」と手わたされたブランシュは、僕と2人きりになった途端、「おれはおれのためのねどこがほしい!」と喋り出したんだ。

誰か僕にいたずらしてるのかな?ときょろきょろしていると「おまえ!うぃりあむとかいったか。おれはこのいえにすむことにしたから、ねどことめしをくれ。」とやっぱり腕の中にいるフワフワな子猫が言っている。

「ね、猫ちゃんがしゃべった!!!!」と慌ててブランシュを抱っこしたまま、お姉ちゃんやザンダーさんに報告に行こうとしたけど、「おれがあるじとさだめたにんげんにしかきこえないぞ。」という言葉でとどまった。ただでさえみんな僕に気を遣ってくれているのに、頭が変になったと心配されたくない。


「あとおれはねこじゃない。しんじゅうだ。」

「神獣……?」

「そうだ、とうときけものにゃんだから、うやまえよ!」

「わかった……神獣は何を食べるの?」半信半疑の僕は疑問に思って聞いた。お姉ちゃんは猫専用のご飯があるって言ってたけど……

「ええと、きのうたべたべーこんってやつがうまかったから、それがたべたい。」

キッチンのコックさんに頼んで、ベーコンとポテトとアスパラガスを炒めたものを作ってもらって、部屋に持って帰ると、ブランシュは「うみゃうみゃ」と言いながらガツガツと全部平らげてしまった。コックさんは僕が食べるんだと思って人間1人分の量を作ってくれたから、ちょっと食べ過ぎじゃないかな?


神獣だって言い張るけど、食べ終わって陽の光を浴びながら僕のベッドを占領して仰向けにでろーんと伸びて寝る姿は猫ちゃんにしか見えない。可愛いくて、もふもふなお腹にほおずりすると「やめろ!」とひんやりとした肉球でパンチしてきた。ふふっ、やっぱり猫ちゃんだ。



そこからはこっそりお願いして作ってもらったサンドイッチや僕のおやつとかをあげることにした。ブランシュはいつもいつも美味しそうに食べて、終わったら僕の膝で丸くなってお昼寝か、なでてなでて攻撃。犬みたいに庭でボール遊びをするときも。夜はバスケットとふかふかのクッションで作ったベッドで眠る。機嫌が良い時は、いそいそと僕のベッドに入ってくることもあるんだよ。


せっかく話せるから、なんであのとき逃げちゃったのか聞いてみた。

「あー、なんだかおまえのねえちゃんのそばにいるとぞわーってするっていうか。まりょくがはんぱつするからにげたんだ。いいやつだとはおもうんだけどにゃ。」とブランシュが耳をかきかきしながら答えてくれた。言葉はわからないながらも、お姉ちゃんもそんなブランシュの様子を気遣って、最近ではお互い近づかないようにしてるんだって。


そんなブランシュはあんなにちいちゃかったのに、座ったら頭が僕の胸くらいにあってもう抱っこができないくらい大きくなった。しゃべり方も前より大人っぽくなった気がする。図鑑でみた猫ちゃんよりもかなり大きいし、普通じゃないご飯を食べるブランシュの健康が不安になった僕は、しゃべる件は黙っておいて、たまたま通りがかったお姉ちゃんの従者さんに相談することにした。

「いや……その猫、普通じゃねえから。魔獣か一種の精霊かなんかだろう。随分お前に懐いているみたいだし、そいつが欲しがるなら、別に好きな飯やっても問題ないぞ?」とお姉ちゃんの従者さんが頭を掻きながら言う。このお兄さんは他の使用人さんたちと違って、ちゃんと僕がダメなことをした時は叱ってくれるし、なぜか魔法や魔獣にとてもくわしいから信用できる。だから僕は安心して、おやつやご飯を今まで通りあげることにした。



僕のおやつのチョコチップクッキーをわけてあげて、幸せそうにブランシュが食べている時、ここにきて僕が自然に過ごせるようになった頃のことを思い出した。

僕がチョコでお姉ちゃんがイチゴのパンケーキを食べていたんだけど、イチゴも美味しそうだなって思っていたらお姉ちゃんが「半分こしようか?」って言って、半分くれたの。それがすごく美味しくて、だから僕もチョコの方を半分あげたらお姉ちゃんがすごく喜んでくれて。

これまでご飯だっておやつだって取られることしかなかったし、誰かにあげられるものなんて持って無かったから。「半分こ」できるのってあったかくてとても嬉しいことなんだなあと思ったんだ。

ブランシュがやってきて、半分こできる存在がさらに増えて、僕は今本当に幸せだ。


「ブランシュはよく食べるから、そんなに大きくなったの?」

「ううん。お前からもらってる飯で成長したわけじゃなくて、お前の魔力で大きくなってるんだ。」何でも、一緒にいる主の魔力を少しずつもらって成長していくらしい。僕とは魔力の相性もすごくいいし、魔力量も多いからここまでのスピードで大きくなれたんだって。僕があげているご飯は「食べる楽しみだにゃ!」と趣味で楽しんでいるみたいだ。

「大きくなって何をするの?」

「うーん、大事な使命があるって神様に言われた。だけどおれ……起きるタイミングも、登る木も間違えた気がする。」

「神獣なんだよね……それって大変なことじゃないの?」神様に怒られない?と僕は心配になった。

「わかんにゃい……でもおれはお前の魔力に呼ばれたし。おかげで随分力も戻ってきた。それにお前のそばは居心地がいいから、たぶん大丈夫。」たっぷりクッキーを食べたブランシュは満足気に毛づくろいしながら言う。


「居心地がいい」のほとんどは侯爵家のご飯が美味しいというのもあるんじゃないかな。やっぱりちょっと変わった食い意地のはった猫なんだと思う。


(というわけで、22話で登場した猫ちゃんが実は乙女ゲームだとお助けキャラでした。ブランシュという名前ですが、神獣なので性別はありません。ディアナが軌道修正して、ウィルがすくすく真っすぐに成長しているので、その強い魔力に惹かれてフライングしてしまったようです。)

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