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お嬢の様子がおかしい(sideカイン)

「(はあぁー)」

今日も朝から登校のお嬢を見送り、ベッドメイクをしながら俺は何度目になるのかわからない、大きなため息をついた。

この前のデートから(俺はデートだと思ってるんだよなんか文句あっか?)お嬢の様子がおかしいのだ。


夜も眠れていないくせに、俺が起こしに行く前にすでに起きていて身支度まで整えている。ほとんど授業なんて残っていないはずなのに、「勉強するから。」と言って毎日朝から登校する。前みたいに、今日あったことを楽しそうに俺に話すこともない。何よりも……ずっと下を向いて、俺と目を合わせてくれない。

「そんなにマズかったかなあ……。」ベッドをキレイに整え終わった後は、部屋の書棚や窓の桟などの掃除。はたきを片手に素早くホコリをとっていく。


確かに気の利いたことは言えなかったが、途中まではお嬢も楽しそうにしていたはず。なのになんで……。ただ、俺のことを嫌いになったとかそういうんじゃなく、何かに怯えているような、自分の心を隠しているようなそんなかんじなのだ、俺の勘だが。


「あそこは告白するべきでしたね。」とお嬢の本を1つ1つはたきできれいにしていた俺の後ろに、すかさずクソ上司が忍び寄って囁いた。俺は横に飛びのいて距離を取り、お嬢考案の暗器「KUNAI」を投げるが、避けられた。ちっ。

涼しい顔をして「古い教会の時計塔に行って、2人きりきれいな景色をバックになんてシチュエーションで、なんで愛の言葉が言えないのか、理解に苦しみますね。」と言う。この過保護メイド、実は俺たちのデートを 追跡し(つけ)ていたのである。

「んだよ、良い感じになった場面いっぱいあったろ!?だいたいあんたさえいなけりゃ、『お嬢、愛してる』ってキスの1つや2つしてたわ俺も!」そうしたかったが、スキンシップが過ぎると、隠れながら俺だけにものすごい殺気をぶつけてきてたんだよこの女は。

「侯爵家にいるうちは、そんなことは絶対に許しませんよ。」

「出た後ならいいのかよ?」

「…………お嬢様があなたの思いを、受け入れられるのであれば。」と熟考した後に答える。そう、この女は別に俺たちの仲について邪魔をする気はないのだ。

「なあ、あんたは王家の”影”なんだろ?オウジサマの意向はいいのかよ。」あいつお嬢のこと好きで、法律に余裕でアウトの魔道具を送ったり、内緒で夜中に王国の半分の距離を駆け抜けたりしてんぞ。

「私はなんでも願いを叶えるランプの精霊ではないのですよ。それに王家に仕えているのですから、王家にとって利益になる方を支援します。リリネシアの王女との婚姻で国が栄えるのなら、王子一個人の希望なんて関係なく、そうするべきだと思いますよ。」

「建前はそれとして、本音は?」

「ディアナ様に王宮(あそこ)は窮屈すぎます。私はあの方に、笑顔でいて欲しいのです。」とサラッと言った。

このクソ上司はイケすかねえが、お嬢第一なのは間違いがない。だから俺はこいつに逆らわずにいるところもある。


にしたって、お嬢の様子は気になるし、なにより目の下にクマもできているほどの状態だから、体調だって心配だ。俺が原因ならそう言って欲しい。お嬢から離れること以外なら、なんでもするから。


お嬢が帰ってくる前に気持ちが落ち着く作用のあるアロマをほんのりたいたり、夜は眠気を誘うハーブティーを淹れたり、枕やコンフォーターを変えたりと、よりお嬢が屋敷でくつろげるようにして、それ以外はお嬢からのアクションがない限り、静観することにした。「涙ぐましいですね」とクソ上司は言っていたが、俺にできることはそれしかない。


そんなある日、学校から戻ったお嬢に呼び出され、思いもよらない”お願い”をされることになったのだ。


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