表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/73

僕のお姉ちゃん(sideウィリアム)

3つのときにママとパパが死んだ。


雨の中、大人たちが真っ黒な服を着て集まっていたこと。僕をどうするかひそひそ話し合っていたこと。それが僕の最初の記憶。


もうママもパパの顔も、はっきりとは思い出せない。


そこからはいろいろな親戚のところへ預けられてきた。よく眠れる家もあったし、ひどいことをされることもあった。でも結局長くはいられなくて、僕はずっと転々と移り住んできた。


いつか行くところがなくなったら、僕はどうなるのだろう?ずっとそう思っていた。


そんなとき、僕は強い魔力があるのがわかって、すごく遠縁のおじさんの家に引き取られることになった、その家はえらい貴族の家で、僕はずっとそこに住んでいつかその家の主人になるって言ってた。


もうどこにも行かなくていいのかな?本当?


僕を引き取りに来たおじさんは、僕とそっくりの髪の毛と目の色をした人だった。僕みたいな遠い親族にここまで特徴が出るのは珍しいと驚いていた。見たことのない豪華な馬車に乗せられて、僕は僕がずっといられるというお屋敷に連れていかれた。


迎えてくれたのは、赤い髪の女の人と、おんなじ色をした女の子。「ディアナでも……お姉ちゃんでも好きなように呼んでくれていいからね。」とちょっぴり怖そうな女の子だったけど、そう言ってくれた。


僕を連れてきた男の人はそれから1回も見なかった。お屋敷での生活は地獄だった。何か失敗すれば、むちで打たれる。なんでこの女の人は僕があの男の人の子だと言うの?僕のママとパパは、ここからとおく離れた冷たい墓地に、もうずっと眠っているのに。でも何か言えばまた鞭で打たれるから、僕は何も言えなくなった。


殴られ、たくさんモノを投げつけられ、僕はずっと赤い髪の女の人と、白髪のおばあさんにこれまでで一番ひどいことをされ続けた。


毎朝起きるたび、どんどん身体が痛くなって、重くなっていく。僕はずっとここで生きていかないといけないの?


そんなとき、お屋敷が火事になった。どんどんとドアを叩く音、「お坊ちゃま!火事です!」と呼びかける執事の男の人の声。そうかここは燃えるのか。熱いのは怖いけど、ママとパパのところへ行けるなら、それでもいいや。


だけど、その後ドアから入ってきたのは、僕がここに来た時にいた暗い髪の女の人。その女の人はすぐにおばあさんにかけよると、その首を、しめた。


「???」


僕がそれを呆然と見ていると、すぐにあの日の赤い髪の女の子が入ってきた。

この子はあの女の人の子供だというのはわかっていた。この子も僕をむちで叩きに来たの?鋭い痛みに備えて身体が縮こまる。だけど、女の子は座り込む僕の前に来ると、僕をギュッと抱きしめた。


「よかった…!生きてた!!!」女の子はそう言った。そんなことをされたことがなくて、僕はどうしていいかわからない。

「すぐに助けてあげられなくて、ごめんね!!ダメなお姉ちゃんでごめんね……!」そのままボロボロと泣く女の子。

「お嬢様、ザンダーさんが戻ってきますから。」

「わかったわ。」

女の子は僕を放した。そのまま、僕を横抱きにすると、お屋敷の奥に走り出した。

「そっち火事…!火事だから逃げないと!」と僕はかすれる声で言った。僕はもう良いけど、この子には死んで欲しくない。

「大丈夫、火事なんか起きてないわ。そう思わせてるだけ。」そう彼女は僕にやわらかく笑いかけた。

大きなドアの前につくと、女の子に右手をドアの赤い石の上にかざすように言われた。「我、この部屋の主ディアナの名のもとに、この者を受け入れる。」するとドアが開いて、大きなベッドと可愛い机のある、すごいお部屋に入った。


女の子は僕をそっとベッドに寝かせる。


僕は不安になって彼女を見上げた。ここにいていいの?もう、ひどいことされない?

「ここはもう安全だから。バーンスタイン侯爵家の子女として、あなたを何者からも守ると誓います。」彼女は僕の手を握って、真っすぐに真剣に言った。


ここにきて初めて、ううん、もしかしたら生まれて初めて心から安心して、僕はそのまま目を閉じた。


ありがとう、お姉ちゃん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ