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気にしないわけが、ない

──馬車ってこんななんだ、思ったより揺れるな。


 怪しまれないようにしないといけないとは思いつつ、周りの様子が気になり窓の外から目が離せない。車よりゆっくりと流れていくその景色は何もかもが可愛らしく、まるで街ごと全部がどこかのテーマパークのようだ。人々の服装もどこか中世ヨーロッパ風。まさに正しい異世界というべきか…。


「そんなに珍しいか?」


 斜め向かいに座るダニエルには凛花の様子は丸見えだったに違いない。食い入るように窓の外ばかり見ていたのだから流石に怪しまれたか…。


「何もかもが、私の目には新鮮に映るので…。」

「記憶を無くしたというのは本当だったのだな…。何も見覚えがないのか?」

「見覚えは…ない…というか…馴染みはないですね。全部が目新しいです。」


 窓の外に再び視線を戻した凛花の顔を目がけてダニエルの手が伸びてきて、そのまま一直線に耳へと向かう。


「痛い!」

「すまない、赤くなっているから腫れているのではないかと思って…。」


 穴を開けて三日目のピアスはまだ傷口だ。確かに少しジンジンしていたけれど、本当は声を上げるほど痛かった訳ではない。いきなりイケメンに耳を触られてびっくりしただけだ。


「まだ三日前に穴を開けたばかりなんです。」


 ダニエルは手を引っ込めると不思議そうにまだ凛花の耳を見ている。


「その記憶はあるのか…。」


──不味かったかも…。これ以上ピアスの話題には触れないで欲しい。


「見たところ熱を持って膿んでいる、後で消毒をした方がいいだろう。」

「えぇ。あなたもいきなり女の子の耳に触らないでよね?」


 窓の外に大きな建物が見えてきた。次の角を曲がったら正面に門が見えるかもしれない。

 ダニエルは凛花の言葉には何も答えない。何か気に障ったのかともう一度ダニエルに視線を戻すと、僅かに戸惑った様子でこちらを見ていた。


「今から会ってもらうのは騎士団の幹部だ。その…もう少し丁寧な言葉を使ってもらえると…助かる。」

「…もちろん、そこはキチンとします。」


──そういう事ね。同い年位だとみて気軽に話しかけ過ぎたか……。また失敗した。


「ごめんなさい、私今まで普通に話しかけていましたけど、ダニエル様だって副団長でしたよね?もう少し気をつけるべきでした。」

「俺はいい、そういう事は求めていないから。」


──お前なんか相手にするのも無駄だってね、ハイハイ了解です。


「第一、第二騎士団の団長と副団長が集まる。その後で時間があればもっと身分の高い方が来られるかもしれない…。」

「身分の高い方?」

「それ以上は今は言えない。」


──そろそろ来たんじゃない?メインの登場?王太子殿下か、宰相の息子辺り?王様…とかもあったんじゃないかな。このまま訳の分からない難癖付けられて断罪エンドとかは絶対避けたいところだけど。


「私、そのまま牢獄に入れられたりする可能性もあるんでしょうか?」

「なんでそうなる…?」

「…何だか急に心配になって来ました。」


 ダニエルは真顔になると凛花にキッパリと告げた。


「記憶が無いだけの理由では処分はされない、安心しろ。ただし何かを裏で企てているようならば話は別だ。」

「私が裏で国家転覆でも目論んでいるように見えますか?」

「いや、それはないだろう。」

「即答……。」


 ダニエルは窓の外を顎で示した。


「あれが騎士団の本部だ。そろそろ着くぞ。」

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