エンチャント ※
食事後先に鍛冶屋に鎧を取りに行く。
「おう。待ってたぜ?」
鍛冶屋の中にあったのは笑顔だ。
厳つい顔が歪んでいるようにしか見えないが、笑っているのだろう。
「いいエンチャントがついてな。普通ならこの値段じゃ売らないな。」
エンチャントは鍛冶師なら誰でもできるのだろうか?
だが、前に行った鍛冶屋は重量軽減のエンチャントが苦手だと言っていた。
「エンチャントってなんなんだ?」
もう率直に聞くしかないだろう。
「は?そんなことも知らないのか?」
「ああ。」
鍛冶師は呆れた様子でため息をつく。
「鍛冶師の言うエンチャントはそうだな...。簡単に言うと装備に能力を付与することだ。あんたの鎧もエンチャントされてるだろ?」
「ああ、ある。鑑定ができるのか?」
鍛冶師は笑いながら頷く。
「鍛冶師が鑑定ができなかったら商売にならないだろ?。
でだ、エンチャントは大まかに2種類、装備の作成時に時々エンチャントがつくのと、作成後にエンチャントを付与する方法だ。まあ、あるだけでラッキーってこったな。」
「どのくらいの確立なんだ?」
「そうだな...。どっちの方法でも20本に1本できれば上出来だな。鍛冶師にでもなるのか?」
「いや。鍛冶師にはならないよ。あいにく鑑定がないからな。」
鍛冶師は鼻で笑った後続ける。
「二つ目の、完成した装備にエンチャントする方法だが、これは一部のエンチャント以外失敗する可能性がある。失敗したら魔物みたいに霧散する。まあ、鍛冶師に今後頼むならそこを理解して頼むんだな。」
「重量軽減はその一部の失敗しても大丈夫なエンチャントになるのか?」
「ああ、そうだ。ただ、魔力を尋常じゃなく使うから、軽い鎧が主流の今、効果の割には高額なエンチャントだろうな。」
「かなり話が逸れたな。これが完成した鎧だ。エンチャントは作成時に作成者はわかる。あとは鑑定があれば見える。で、この鎧のエンチャントは増幅だ。」
「増幅?」
「魔力だったり筋力だったりが少し上がるって認識が近いだろうな。あいにく使ったことはないんでね。気になるなら実際に試してくれ。相場は大金貨(500000エン)を軽く超えるくらいだ。良い鉱石で作ってたらかなりの間遊べる金になったな。」
なるほどね。今の所持金より多いのか...。
勿論エレノアに使わせるが。
「わかった。わざわざ詳しくありがとう。」
「気にするな。」
「エレノア装備を。」
「本当に私が使ってよろしいのでしょうか?」
「ああ。」
「ありがとうございます。」
エレノアのステータスは買った時よりも上がるというか、徐々に回復していた。
が、鎧をエレノアが身につけた途端に数値が上昇した。
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【奴隷(境本幸多朗)】
エレノア
LV 10
EXP 6089/8000
SP 71
HP 10/10
MP 8/8
STR 6→8
ATK 6→8
VIT 4→5
DEF 4→5
INT 3→4
RES 1→2
DEX 5→6
AGI 6→8
LAK 1
スキル
身体能力強化Ⅰ
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確かにこのエンチャントの付与された装備は高くなるだろう。
「すごいですね。」
エレノアは驚きつつ手を握ったり開いたりしている。
「本当だな。」
常に増幅されるのか...。
「ありがとうございます。」
エレノアは鍛冶師にもお礼を言っている。
鍛冶師は相変わらず凶悪な顔だが、優しい顔にも見える。
「いくら装備が良くても絶対に油断するんじゃないぞ。」
「はっはい!」
その後鍛冶師はエレノアに見られてないところで俺を睨み、近づいてきて
「こんなにいい子を傷つけてみろ、ただじゃおかないぞ?」
俺だけに聞こえるようにそう言ってカウンターに戻った。
エレノアは獣人だ。
聞えていてもおかしくない。
勿論意図的に傷つけるつもりはない。
鍛冶師に再度礼を言い店を出る。
リラさんの店に外套を取りに行く。
リラさんはエレノアの鎧をまじまじと見ると
「やっぱりあの頑固鍛冶師センスがないわね。エレノアちゃんも可愛いほうがいいよね?」
そう言ってエレノアに詰め寄っている。
リラさんは外套を着せたエレノアを見てうんうんと頷いている。
外套は型が入っているのと、エレノアの顔が小さいのが合わさり、耳があるようには見えない。
尻尾は今の外套でも見えはしないから大丈夫だろうとのことだった。
リラさんにも再度小声で、無理はさせないで欲しいと言われた。
エレノアを連れ久しぶりに町の外に出た。
奴隷は人としてカウントしないため、通行証は必要がないそうだ。
エレノアは外に出るとあたりを見回している。
「俺もできる限りアシストはする。安全第一で行こう。」
「はいっ!」
エレノアの元気な声が響く。




