表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/153

エレノア2


「エレノア、大丈夫か?」


コウタロウ様がそう声をかけてくれる。


「はい。」


何とか体の震えは止まった。


短い紐と何か木の工芸品?を渡される。


「ありがとうございます。」


「安いものだが...。まあ、ないよりは。」


知っていて当然のモノなのだろうか?


夜の営み関連なのだろうか?


たらいをもって出て行かれすぐに戻ってきた。


水を捨てに行ったのだろう。


私が使ったのだから私が捨てておくべきだったのだ。


コウタロウ様は特に気にした様子も見せずに鎧を丁寧に脱いでいる。


腕もそうだが、服を着た状態でもわかる胸の筋肉。


ちらっと見えた腹筋は、引き締まり、厳つい縦筋が入っていて、綺麗だった。


こちらを見て少し怪訝な顔をされた後、少し考えるような素振りを見せた後、


「ベッドは好きに使ってくれ。」


そう言われた。


「私は奴隷ですよ?食事も綺麗な服も頂けてそれ以上していただくわけにはいきません。...。」


コウタロウ様は少し笑うとそれ以上何も言わなかった。


なぜここまでしてくれるのだろうか?


コウタロウ様はたらいとタオルをもって出ていかれた。


まさか私がいるからここで体を拭かれなかったのだろうか?


考え事をしていたのもあるがさっきからずっと考えが足りてない。


戻ってきたコウタロウ様は


「宿屋にいるときは楽にしてくれ。用があれば声をかけるから。」


と言われた。


「楽に、ですか?」


「ああ。」


何をすればいいのだろうか?


床に座っていいのだろうか?


とりあえず、壁にもたれかかる。


そういえば久しぶりに体を拭いた。


自由に動けるだけでもものすごく楽なのにこれ以上どうすれば私は楽になるだろうか?


コウタロウ様は所持金の計算をしている。


何も記録していないが、そう言ったスキルも持っているのだろうか?


計算が終わったようでお金をまとめてバックの中にしまっている。


そういえば私は短剣を渡されているが返しておいたほうがいいだろう。


明らかに高そうな短剣だ。


短剣を返そうと声をかけると


「それは持っていてくれないか?」


と言われた。


奴隷がどんな形であれ就寝時に武器を持つことに不安がないのだろうか?


確かに私のステータスは奴隷になる前より明らかに落ちてはいますが...。



「櫛の使い方はわかるか?」


「すみません、わかりません。」


何のことだろうか?クシ?


「髪を触ってもいいか?」


「え?はい。お好きなように。」


答えるとコウタロウ様は私からクシを受け取りベッドに向かわれた。


私にベッドに座るようにジェスチャーをされた。


心臓が音を立てる。


落ち着かせるために大きく息を吸って吐き、ベッドに座る。



タオルを頭からかぶせられた。


体が硬直する。


何をされるかわからない。


頭の中が恐怖でいっぱいになる。


タオル越しに優しく手で頭を揉まれている。


何をされているのだろうか?


「耳は触っても大丈夫か?、それと痛かったら言ってくれ。」


「大丈夫です。」


コウタロウ様は毎回確認をとってくださる。


もし私が拒否したらコウタロウ様は本当に触らないのだろうか?



耳を優しく揉まれる。


タオル越しに伝わる熱が心地良い。


優しく人に触られるのはいつぶりなのだろうか?


「答えたくなかったら答えなくてもいい。エレノアはいつから奴隷だったんだ?」


「12歳のころからです。」


「どうして?」


コウタロウ様の声音は優しい。


「村が族に襲われ、私もそうですが、最終的に女はほとんど売られ、男はみんな殺されました。」


少しの間のあと、


「そうか。」


コウタロウ様はそれだけ言われた。



気まずい沈黙が続く。


「質問しても構いませんか?」


「ああ。いくらでも好きに喋ってくれ。」


コウタロウ様の声は勘違いかもしれないが、少し嬉しそうだった。


「どうしてご主人様は私に確認をとるのですか?」


「なんでかな?俺がいい人でありたいから?かな。あと、ご主人様は止めてくれ。」


「なんとお呼びすれば?」


「コウタでもコウタロウでもサカモトでもなんでも大丈夫だ。」


「了解しましたコウタロウ様。」


声には出してはいなかったがお名前を呼んでいいとは今まで言われてはいなかった。


また失敗するところだった。



コウタロウ様はタオルを外し髪を少し触られた後、風よ、と小さな声で呟かれた。


風が後ろから流れてくる。


長い時間優しい風が吹き続けた。


魔法を使われていたため安易にお声がけできなかったが、本当に尊敬する。


最初はすごく驚いたがコウタロウ様は3つの属性を使えるようだ。


風が止んだ。


すごく気持ちよかった。


質問はいくらでもして良いとのことだったのでしてみる。


「コウタロウ様は魔法を3属性使えるんですか?」


「いくつか使えるけど本当にこのくらいしかできないよ。」


コウタロウ様はそう言いつつ、クシを髪の毛先に通した?


何をされているのだろうか?


「エレノアは文字は書ける?」


「いえ、すみません。」


私はこの国の言葉は書けない。


「大丈夫、気にしないでいいからね。」


そう言ってはくれたがステータスも低いうえ、気も利かず、字も書けない。


何とか挽回しなければならない。



「鑑定のスキルってどうやって習得するかわかるか?」


「鑑定ですか?ほとんどの人は生まれながらに持っていると聞きます。商人の家系に多いのだとか。」


「なるほど。」


「私の両親も鑑定ができました。私もできればよかったのですが...。」


「ありがとう。」


「何がですか?」


「いや、何でもないよ。痛くはないかな?」


「はい。ものすごく気持ちいいです。」


鑑定は生まれつきのスキルのはずだ。


本当に私は使えない。


なのに性奴隷にはなりたくないと思っている。


貰ったのに何も返せない。どこまで最低なのだろうか。


「そう、良かった。」


コウタロウ様は優しく髪にクシを通しながら、悲しそうに呟いた。



このクシ?は髪磨きとはやはり違うようだ。


私の母も使っていたのだが、形状は少し違うが、髪磨きは髪の毛についた汚れを落とすためのものだった。


髪がたくさん抜けてすごく痛くて嫌だったのを思い出した。


今は痛くないどころか優しく頭に当たる木の感覚が心地いい。


髪も引っかかったりしないし、そういうマッサージをする道具なのだろうか?


前髪や、横髪もクシでされたがやはり痛くない。



コウタロウ様は笑顔で頷くと


「じゃあ、俺は床で寝るからベッドを使ってね。お休み。」


そう言われた。


何とか断り、コウタロウ様にベッドで寝てもらった。


襲われることもなかった。


コウタロウ様がしてくれた髪は自分の髪ではないくらいに柔らかく、指どおりが良くなっていた。



気づけば寝ていたのだろう。


部屋は暗い。


今コウタロウ様に持ち上げられている。


何をされるのだろうか?


やはりその、されるのだろうか?



だがベッドに私を寝かせると、コウタロウ様は私に布団をかけてくださった。


体が柔らかいベッドに沈み込む。


布団が暖かい。


抱きしめられているみたいだ。



あまりにも気持ちよく意識はすぐに途切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ