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【レクレッタ】と【ヒール】

僕の名前は芦田(よしだ) (かける)だ。


僕は日本で幸多朗に嫌がらせをしていた。


理由はもう、正確にはわからない。


きっと我慢できなかったんだと思う。


幸多朗は僕とは違って何でも器用にこなし、それでいていつも本気でやっていなかった。


だからこそ羨ましかった。


僕は笑顔の練習だって、人とうまく話せるように練習した。


勉強だって運動だってそこそこにはやったさ。


でも、幸多朗は誰の前でも変わらなかった。


幸多朗の在り方がただ眩しかった。


当て付けのようにも感じた。


ある時、力量で負けた。


そしてつい身長のせいにしてしまった。


僕の身長は翔より11cm低く、161cmだ。


「努力が足りないんじゃないのか?」


その通りでなにも言葉が出なかった。


ただ、幸多朗にだけは言われたくなかった。


悲しいのか悔しいのか、やるせないのか。


めちゃくちゃに気持ちが混ざりあって溢れた。


きっと僕は幸多朗を下にみてたんだと思う。




しばらくたって再戦したときには勝ちを譲られた。


そして僕は諦めてしまった。


本当に僕は最低だ。





「僕が勇者?」


よくわからないが、今は、エンデという国にいるらしい。


勇者召喚のパーティーで初めてよくわからないスキルを使った。


レクレッタという名前のスキルで、他のスキルは説明が表示されるのにこのスキルにはそう言った


説明が一切無かった。


【レクレッタ】


おっかなびっくりそう唱えると、僕ではない何かが僕のなかに流れ込んできて、とても不思議な気分だった。


気がつくと僕は物語の中の勇者のような姿をしていた。


アルノヴァ王に


「他に何かスキルはありますか?」


と言われスキル欄を確認すると先程まで無かった、ヒールという文字が追加されていた。



後のこの世界についての講義中に説明を受けたが基本的にヒール等の神聖魔法と呼ばれるものは、聖教の敬虔な信徒が厳しい修行をしない限り習得できないそうだ。










僕がこちらの世界に来てしまったのはきっと償うためだったんだろう。

そして僕は何も変わらなかった。

日本にいたときも、この世界にいる今も。

それでも僕はただ進む。

歩けないなら這ってでも。

それが僕にできる償いだと思うから。





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