ずっとずっと、昔から ※
依り代から溢れ出した彼女らの記憶はつらい記憶ばかりだった。
頬を水が伝い泣いていたことに気づく。
「契約は破棄されたはずです。」
カケルはそう言った。
「貴方たちのモノだけを、返すべきなのかもしれませんが、私にはそんな高度なことはできないので、魔力を使って契約自体を壊しました。異名はどうなっていますか?」
契約を破棄した?
ステータスを急いで開くと、凄まじく上がったステータス。
そして【虚空】という異名は消え、変わりに【継承者】と【違反者】いう異名を獲得していた。
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【虚空】
カリス
LV 21
EXP 36893/37000
SP 7
HP 17/17
MP 8/8
STR 12
ATK 12
VIT 8
DEF 9
INT 6
RES 6
DEX 8
AGI 10
LUK 3
スキル
ファイヤエンチャントLV1
ファイヤーボールLV1
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【継承者】【違反者】
カリス
LV 21
EXP 36893/37000
SP 758
HP 82/82
MP 47/47
STR 76
ATK 76
VIT 64
DEF 72
INT 37
RES 31
DEX 61
AGI 59
LUK 20
スキル
ファイヤエンチャントLV1
ファイヤーボールLV1
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体があまりにも軽い。
これが本当に俺なのだろうか?
レベルが違うが、カナシロさんのステータスと同じくらいはあるはずだ。
「虚空はなくなり変わりに継承者と違反者という異名が...。それにステータスが...。」
「そうですか。なら、まあ、成功ですね。継承者とは他人の何かを何かしらの形で引き継いだ者に与えられるそうです。まあ、そう書いてある本を読んだだけなのでなんとも言えないのですが。違反者は」
カケルは少し考えこんだ後
「まあ、無理やり契約を破壊したのですから。私も違反者は獲得していますね。継承者は獲得していませんよ?」
カケルはそう言って笑った。
「いえ。」
カケルは
「これからダンジョンの攻略を行います。もしよければ同行されませんか?」
そう言ってきた。
「いいんですか?」
「ええ。勇者も今回の戦闘で心身に深い傷を負ったものも多いです。手伝っていただけるならうれしい限りです。」
俺だけではなくレイとアンも同じようにステータスが上昇していた。
俺たちは、その日初めてダンジョンボスと言われるモンスターを討伐した。
ダンジョンにはカケル、カナシロ、ニシオとイトシマそれに加え俺たちの7人で入った。
俺たちが前まで苦労していたオークが驚くほど簡単に倒せる。
オークの持つ切れ味の悪い剣を受け止めるとそのまま押し返せてしまう。
体も動く。
剣を弾いたタイミングでオークの頭を跳ね飛ばす。
その先にいるオークをレイがもう見えないほどの速度で斬り飛ばす。
アンのファイヤ―スピアは威力もそうだがそもそもの大きさが明らかに拡大している。
ダンジョンが大きくはないため、もはやアンの魔法を躱すことの方が大変だ。
俺も含め三人とも明らかに力が制御できていない。
勇者はあくまでアシストに徹してくれていた。
イトシマはダンジョントラップまで見破ることができるそうで、道中も何の問題もなかった。
ダンジョンボスはオークロードと言われるオークの上位種だった。
4mほどの体躯だが、その巨体から繰り出される剛剣さえ簡単に受け流すことができた。そのままレイと二人でオークロードを切り刻み、機動力を奪う。
オークロードが手をついた直後ファイヤ―スピアがオークロードを焼き焦がす。
俺たちの力はまるで勇者のそれだ。
三人ではオークさえ勝てないことがざらだったのだ。
勿論三人が死ぬ気でかかれば勝てたかもしれないが。
オークロードを倒すとオークロードと戦った部屋の奥に小部屋が現れダンジョンコアと言われるアイテムが浮かんでいた。
このアイテムはダンジョンの核と言われるものだ。
獲ればダンジョンはその機能を失う。
初めて見るが、噂で聞いた話によればどんなに小さいものでもしばらくは働かなくていいくらいの大金になるらしい。
大きさは縦横奥行きが10cm程度。大きいのか小さいのかはわからない。
闇オークションなんかでもない限りは流通せず国が買い取っているらしい。
と言っても、ステータスを結果的にここまで伸ばしてもらったのだ。
これは間違いなく勇者たちのモノだろう。
「私たちの呪いのようなモノを解除してくださり本当にありがとうございます。このダンジョンコアは勇者さ」
「そんなわけにはいきません。我々は今回何もしておりません。このコアはカリスさんたちのものですよ。」
カケルは食い気味に答えた。
しばらく問答が続いたが勇者たちは先に戻っていると言って戻ってしまった。
本当にもらってしまっていいのだろうか?
ダンジョンから出る。
隣には、完全に朽ちはてた依り代があった。
この依り代には一体何が憑いていたのだろうか?




