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一人でも大丈夫。


「無事だったんでござるね、幸多朗殿。」


「良かったンゴ。」


浅沼と宮田は完全に感極まった様子で声をかけてくる。


「ああ。なんとかな。」


「勇者が死んだ理由はわかりますか?」


「俺は見ていない。」


「そうですか。」


俺は目撃したわけではないが、おそらくは王族が関わっているはずだ。


ただ、これは確定情報ではない。


三人に伝えるべきなのだろうか?


「見ていないということは、心当たりみたいなものがあるんですか?」


「それは、まあ。ただ、見ていない以上確定ではないんだ。」


「それでも情報があればお願いします。当たり前ですが、もし、幸多朗さんに迷惑がかかるような情報なら部外者には流しません。」


本当に言うべきなのだろうか?


場合によっては勇者全体が王族に目を付けられる可能性があるのだ。


だが、シルヴァ先生が命令を聞いているのだ。


エンデ王以外に誰が主犯と考えられるのだろうか?


それに、勇者全体が敵になることが王族のメリットになるとは考えづらい。


「殺したのはシルヴァ先生か、シルヴァ先生に命令を出せる立場にある人間だと思う。」


「幸多朗さんはなぜ生きているんですか?」


「隙をついて逃げてきたからだ。」


嘘ではないが嘘だ。


「何をしていたんです?」


「なんでも周辺にダンジョンができて、早急に制圧する必要があったことと、勇者の育成を魔王軍の動き上早く行う必要があったとか。」


「勇者はまだ、王都にもいたはずでは?」


「そうみたいだな。だが、結果として勇者は死んでいるんだろ?ダンジョンの入り口にはシルヴァ先生がいた。王族がわざわざ召喚した勇者に攻撃をする意味も分からないが。でも、魔王の仲間が王の近くにいるのならそもそも俺たちの召喚は妨害されているはずなんだ。シルヴァ先生が関わっていることは間違いないだろうが、いろいろあまりにも不自然なんだ。」


「そうですね。目的があって我々を召喚したでしょうからね。間引きみたいなことをするなら、最初にステータスを聞いた後でも良かったはずですもんね。」


「ああ。」


「だから俺はわからない。ただ、もし仮に王族が関わっているのなら俺を今匿っているお前らにも迷惑がかかるだろうし、俺は行くよ。」


「そうですか。久しぶりの再会なのに、質問攻めにしてしまいましたね。」


「いや、大丈夫だ。」




「そういえばお前らはどうして三人一緒なんだ?」


「それはでござるね」


浅沼が食い気味に答えた。


それからこれまでのいきさつを聞いた。


「王都に来るなって言われたあとすぐに行ったのか...。」


「ンゴ!」


「それで?」


「しばらく王都周辺に滞在したンゴが、授業とかでいた兵士に見つかってつまみ出されてンゴ。」


「王都から?」


「ンゴ!!。」


王都からつまみ出されるとはどういうことだろうか。


そのあとしばらく話したが三人は変わっていなかった。


まったく変わっていなかった。


まあ、一番大きな変化は宮田に彼女ができそうなことくらいだろうか?



1時間ほど話した。



「幸多朗さんはこれからどこに行くんですか?」


「まあ、別の国だろうな。」


「エンデ国の東にあるオウリス王国とかでござるか?」


「ああ。アズリレ王国もいいかと思ったんだが、オウリス王国の方が冒険者に寛容らしいしな。」


「魔王討伐の時にはさっそうと現れてくれるンゴね?」


「それまでにレベルが上がってたらな。」


「移動はどうするでござるか?歩きだと3、4か月はかかると聞いたでござるが...。」


「所持金もそんなに多いというわけではないし、歩きで行くよ。」


「貸すンゴよ?あ、いや、あげるンゴよ?」


つい笑ってしまう。


「いやいいよ。返せるかはわからないからな。」


「ですが、危険で時間もかかるでざるよ?」


浅沼の顔は真剣そのものだ。


俺を心配してくれているのだろう。


「大丈夫だ。心配されるほど弱くはないよ。」


「しかし、」


「浅沼さん。」


木ノ下が浅沼を止めると


「幸多朗さんの幸運を祈ります。もし何かあれば噂でも聞くと思いますが、お互いいきていければいいですね。」


穏やかな顔でそういった。


「ああ。ありがとう。三人と話せてうれしかったよ。」


「私たちもです。」


「その、カリスたちに協力してやってくれないか?」


「さっき一緒にいた異名持ちの方たちですよね?」


「ああ。」


「我々にできる範囲で全力で行いますよ。」


「ありがとう。助かるよ。」




俺は荷物を、まとめて宿屋を出た。


おかみさんとゴレスには挨拶をした。


ゴレスにあいさつしたときに少し割安に鉄の剣と盾、短剣を売ってくれた。


財布はかなり寂しい。


ゴレスはもう少し壊れるようならすぐに鎧を買い替えるようにと言ってきた。


こんな軽い鎧を着ていただけに他の鎧を着れるだろうか?


思えば滞在期間はほんの数日だったのだ。


言うほど思い入れもない。


カリスたちに三人は本当に協力してくれるだろう。


カリスたちとあんな別れ方をしたのにギルドでばったりなんて恥ずかしくて眠れなくなる。


ギルドにはいかず、地図や携帯食料、ポーションを買い、村を出た。



どうか次の村まで無事に過ごせますように。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結局カリス達に金を浪費しただけの結果に成ってしまった……
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