共食い。 ※
「で、コウタ君は何を知っているのかな?」
「はぁ、何も知らないよ。」
「わかるんですけど?」
あれからずっと同じことを質問されている。
無視すれば相手は判断できない。
答えれる答えれないに関わらず、時々質問を無視している。
相手は推理しにくくなるだろう?
「カナシロさんは本当に勇者なんですか?」
少し会話が途切れた時にアンがおずおずと金城に聞く、会話を遮ってくれるのは本当にありがたい。
「ええ。」
金城は特に躊躇うこともなくステータスを開示する。
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【勇者】
金城美咲
LV 14
EXP 12631/15000
SP 93
HP 74/88
MP 32/54
STR 75
ATK 75
VIT 71
DEF 57
INT 64
RES 45
DEX 62
AGI 64
LUK 12
スキル
真偽
加速Ⅱ
感覚強化Ⅱ
回復強化
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「ね?勇者でしょ?」
化け物だろうか?
総合値がだいぶいかれている。
体力とMP以外の数値が俺の3倍以上だ。
やはり殺さないように手加減してくれていたのだろう。
「すごい...。これが勇者様のステータスなんですね...。」
アンは勿論のこと、俺たちはステータスをみて唖然としていた。
「すごいって...。まあ、ありがとう。でも、私のステータスなんか低いほうだよ。」
じゃあ俺は?笑えるな。
スキルのレベルもだが、魔法なども持っているのだろうが見えない。
開示設定によるのだろうか。
金城は何人かの勇者とスリアの村で活動しているようだった。
スリアの村から移動はできるだけ早くするべきだろう。
「で?コウタ君?教えてくれるかしら?」
はぁ。
「まただんまり?困ったわね?」
「答える気ないと思いますよ?」
「貴方のことなんだけどね。」
魔物との戦闘はなく、キャンプのためのテントを立てた。
「そういえばあなたたちは何をしに言っていたの?」
金城はずっと誰かと喋っている。
カリスたちとも完全に打ち解けたようだ。
「アスガの村にゴブリンの討伐に行っていました。」
「アスガの村周辺に強いハウンドが出たことは聞いた?私はそれを探してたの。なんでも銀8の冒険者たちが大けがしたとかで。」
「ハウンド?」
カリスはこちらを見てきた。金城たちとはあまり関わりたくないが言うべきだろう。
頷くとカリスは
「魔法を使うハウンドなら。」
「魔法?」
「はい。風系の魔法で魔法とは関係なしに防御力が高かったです。」
「それは攻撃を避けられたってこと?」
「いえ、勿論素早かったのですがコウタの持っている短剣も折れましたし、レイの攻撃も弾かれました。」
金城の顔つきが真剣なものになる。
「それはどのあたりで見たの?」
「えーと...。」
「もしそのハウンドを探していたのなら倒しましたよ。」
地図などを持っていないため具体的な場所は何とも言えない。
「貴方たちのランクは銅じゃないの?」
「ええ。とても運がよかったですね。」
まあこうなるだろう。
「もしかして貴方たちレベルがすごく高かったりするの?」
どうするべきだろうか?
もしああいった魔物が多くいるなら大変だが。
弱かったという風に伝えて...。
これではだめな気がする。
「運よくアンの魔法が当たって何とか倒すことができたんですよ。」
カリスはそう言った。
「そうなのね。助かったわ。これ以上被害が出たら大変だったもの。」
「魔変鉱がそのハウンドからドロップしたりした?」
「はい。しました。」
アンが答える。
「まだ持っているかしら?良ければ少し見せてくれないかしら?」
「はい。」
アンは魔変鉱を取り出し金城に渡す。
金城は魔変鉱を一通り眺めた後アンに返しながら、
「最近魔変鉱をドロップする強力な上位種が多くこのあたりで確認されているの。特徴としては強さのわりに経験値が低いことと、魔変鉱をドロップすることくらいなんだけどね。もしかして経験値も?」
俺たちは頷くと
「そう。あなたたちが無事でよかったわ。」
そう言った。
「そのハウンドでほかに気になることはあったかしら?」
「いえ、特には。」
「そう。ありがとう。」
「もしよければ私たち勇者が数人いるところに話を聞かせに来てくれないかしら?」
勇者という要素は正教では大きな意味をもつ。
「俺たちでいいんですか?」
「ええ。勿論。」
金城はこちらを見て
「コウタ君もいいかな?」
そう笑顔で言った
すごく嫌だ。
「食事の準備をしなきゃな。」
「コウタ君は私のことが嫌いなのかな?」
「まあ。」
「えーショックだなぁ。食材調達に行くんでしょ?なら、私と行こうよ。」
顔は可愛いのだが、この世界の住人はみんな顔が綺麗だ。
だが、金城も記憶の中より顔が整っているような気がする。
ため息を大きくつき、
「カリス、行こう。」
カリスに声をかける。
「えー。」
「じゃあ、行ってくるから。三人は休んでて。」
カリスは少しだけ驚いていた。
キャンプの場所を見失わないように木にしるしをつけながら歩く。
「カリス、さっきはありがとうな。」
「いや、大丈夫だ。聞かれたくないことがあるんだろ?」
「すまない。」
カリスは優しく首を横に振る。
茂みの中から鹿みたいな太った鹿が顔を出す。
保存食をふり、鹿の前に投げる。
俺たちが少し離れると鹿は疑っていたようだが、匂いを嗅ぎに来た。
この世界の鹿は積極的に肉も食べるのだろうか?
投げた保存食は鹿の干し肉なのだが。
食べようとした鹿をカリスが横から斬り付ける。
頭が落ち、血が噴き出す。
味が落ちるが、まあ、仕方ない。
カリスはこういったことが得意だ。
森の中を歩く速度がめちゃくちゃ早い。
「ナイス。」
カリスは親指を立てた後、捌き始める。
鹿は大きく、二人で運ぶにはかなりきつい。
捌いている最中に
「コウタ。その...。」
「なんだ?」
滑らかに肉を骨から外しながらカリスは言葉を続ける。
「俺たちは異名もちなんだ。」
「異名?」
通り名みたいなものだろうか?
「勇者みたいな?」
「ああ。なるほど。」
あれは異名っていうのか。
「それと関係あるかはわからないんだけど、レベルが上がっても俺たちはステータスが上がらないんだ。」
「いつから?」
「レベル15くらいから。村を出た時だな。」
「原因はわかってるのか?無理に話さなくてもいいが。」
「怒らないのか?」
「なんで?」
「俺たちはレベル21と言ってお前を騙したんだぞ?」
「それは事実なんだろ?なら、騙されてないよ。これくらいでいいか?」
肉を持ちあげる。
「だが!!」
「なら俺にどうして欲しいんだ?感謝こそすれ、怒ったりなんか絶対にしないよ。依頼も問題なく終わったしな。」
カリスはうつむいている。
「暗くなる。早く戻ろう。」
「ああ。」
答えるカリスの声は少し湿っぽい。
指摘するのも違うだろうが。
「戻ったら金城に聞いてみようぜ。勇者様が何か知ってるかもしれないしな。」
「ありがとう。」
カリスたちが今後もレベルが上がらないのなら、一緒に行動することはそれなりに難しくなるだろう。
俺はできる限り王都から離れなければならない。
だが王都から離れれば離れるほど、魔物も強くなると言われている。
そこまで大きくは変わらないようだが、頻繁に掃討されるこのあたりとは違うのだろう。
俺の都合だけで三人を危険にはさらせない。
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【勇者】
境本 幸多朗
LV 5
EXP 642/1000
SP 248
HP 31/37
MP 5/23
STR 22
ATK 22
VIT 20
DEF 15
INT 13
RES 11
DEX 12
AGI 20
LUK 5
スキル
地属性の適正Ⅰ LV2
獲得経験値増加 LV1




