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烈火のごとく顔から烈火。


夜中目が覚めた。


寝る前よりはだいぶ気分がいい。


少し風に当たってみようと思って外に静かに出る。


念のため帯剣はしているが村の中だし安全だろう。


外からはまだ、賑やかな声が聞こえてくる。


声の方に行くとカリスを中心に村の人がずっと大騒ぎしている。


少しこの村の中を歩いた。


村の中にある畑も大きく、牛?みたいな動物もいる。


ほとんどこの村だけで自給自足が成り立つのだろうか?


まあ、依頼料から見てもこの村に定住する理由は薄い。


俺には関係のない話だが。


王都からなんだかんだ近いため、もしカリスたちが残るというならここでお別れだろう。


騒いでいる場所を中心に宿屋の反対側に来た頃だろうか?


上の展望台?みたいなところから人の気配を感じた。





緩やかなスロープを上ると村を見渡せるような場所についた。


公園の休憩所?みたいな表現が一番近いだろうか?


「レイ?」


「コウタなの?」


レイは振り向かずに聞き返してきた。


「ああ。」


「ガシャガシャいつもみたいに怯えて震えてないから誰だかわからなかったわ。」


そう言うレイの声は震えていた。


「この村の中が怖いとは思わないからな。」


どちらも喋らない時間が続いた。


なんか元カレと元カノってこんな感じなんだろうか?


彼氏も彼女もいたことがないから全く分からないが。


レイの方にゆっくり近づき1mほど離れたところからレイが見ていたと思われる方向をボーっと眺める。


レイはバカ騒ぎしている集団を眺めているようだった。


顔を見ていないから何とも言えないが。


それからまた沈黙が続いた。


何か喋ったほうがいいんだろうか?


そう思っていると、


「なにも聞かないの?」


レイが先に口を開いた。


「女性と話した経験がなさ過ぎて何を聞かないのかって言われてるのかさえ分からないな。」


「そう...。あんたって存外優しくて紳士的なのかもね。チキンだけど。」


「ありがとう。チキンは本当だけど言わなくても良くないかな?」


秋の夜風を思い出させるような心地よい風が吹いた。


「あんたが外に行ってくれた時にカリスが起きたでしょ?あの時カリスは開口一番なんて言ったと思う?」


「三人とも無事か?だろ?」


「そうだったらいいんだけどね...。」


レイは一瞬言いよどんで話を変えた。


「アンと私は姉妹なのよ。」


「ああ。」


軽く相槌をうつ。


「でもほら、私ってアンと比べて言葉遣いも粗暴だし、いろいろ雑だし、やっぱりアンの方がお似合いよね。」


つまり、どうすればいいのだろうか?


そうだねって言って肯定すればいいのか?いや幸多朗君、きっとそうじゃないね。はぁ、。


「レイも綺麗だし、可愛いだろ?」


少し声が上ずったが噛まなかった。


可愛いと綺麗って言葉的に矛盾するんじゃ?と言う関係ない疑問が羞恥心をかき消そうと必死になっている。


「そんなこと言ってくれるの?」


「両方とも事実だしな。」


「あぁ、...そう。まあ、ありがとう。」


すこし声が明るくなった後、


「でもカリスはね、起きた時にアンは無事か?って私に向かって言ったのよ?あの時、誰を向けて撃たれた魔法かはわからなかったし、私なら躱せると思ってその、アンを守ってのかもしれないけど...。アンにケガして欲しかったってことじゃないのよ?」


凄まじい速度で声のトーンが下がった。


主語はどこだろうか?


「…。」


つまりどうして欲しいのだろうか?


選択肢が欲しい。あとヒントも。


少し考えたが、まだ誰かに聞いている時点で諦めてはいないのだろう。


「そうだな...。もし仮にアンの方がお前より優れていたとしても、それとお前の気持ちにどういう関係があるのか俺にはわからない。結論が決まってるのにお前がどうするべきかを他人に聞いて安心しようとするなよ。ただ頑張ればいいだろ?今のレイはらしくないよ。」


語調が強くなりすぎただろうか?


でもまだ諦めていないのだ。


多分間違いではないとは思うのだが...。


怖くてレイを見れない。



レイは少し押し黙った後、


「あんたが私のどういう私らしさを知っているか細かく教えて欲しいわね。」


声のトーンがいつものように明るく、そして力強くなった。


「そういう棘のある物言いがレイらしさなんじゃないのか?俺はそう思ってるよ。」


どうやら選択肢は正解のようだ。


「あんたも十分棘があると思うけど?」


「全くないね。ツルスベだ。」


「その...まぁ、ありがとうは言っておくわ。」


「お役に立てたようならよかったです、お嬢さま」


レイの顔を見てみると目が充血し、周りが腫れている。


本当に好きなら好きなままじゃダメなのだろうか?まあ、知らんが。


「バカにしてんの?」


両手を上にあげ降参をアピールする。


俺の体調もかなり良くなった。感謝は伝えておくべきだろう。


「ありがとう、本当に助かった。その、レイをアンより応援してるわけでも、アンをレイより応援してるわけでもないけどまあ、頑張って。そんだけ。」


「なんで話を聞いてもらった私があんたに感謝されるわけ?ねぇ!」


恥ずかしすぎてレイの問いは無視した。


らしくなかったのは俺だ。


もう2度と防具脱がない。


でもまあ、俺にできる100点の動きじゃなかろうか?


めっちゃ恥ずかしかった。


少しくどかっただろうか?


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。


俺の脳はいつも反省会をしている。


できれば素早く忘れて欲しい。



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