ギルドと仲間?
今、冒険者ギルドの前にいる。
なんというか入りにくい。
特に注意書きがあるわけでもないが...。
ゲームセンターとかに初めて入る時に近いだろうか?
まあ、一度は行ってみたら変わるんだろうが。
扉を静かに押し中に入る。
扉は普通の建物からしたら大きく2m50cmはあるだろう。
おそらく押しても引いても開けられる構造にはなっていると思う。
一瞬視線が俺に集まった。
敵意ではないし警戒でもないような気がするが、すぐに霧散する。
よくイメージされる内装だ。
この中で食事や飲酒ができるようだ。
潰れて寝ている人もいる。
盗まれたりしないのだろうか?
とりあえずカウンターに行く。
人はまばらですぐに自分の番になった。
「こんにちは、どのようなご用件でしょうか?」
「冒険者に...。」
「はい、登録ですね、MPは10以上ございますか?」
「はっ、はい。」
「では大銅貨1枚(1000エン)になります。」
綺麗なお姉さんが満面の笑みで対応してくれた。
お金を払い、しばらくすると別の職員が来た。
細身でイケメンのお兄さんだ。
「ではこちらに」
ついていくと水晶があった。
こちらに魔力を流してください。
貴方のレベルが記録されます。
「レベルだけなんですか?」
水晶に手をかざしながら聞くと
「はい、冒険者登録はレベルしか。名前を知られたくない方はもちろんたくさんいますし、冒険者に
とってのステータスは文字通り生命線ですからね。」
なんとも言えない顔で肩をすくめた後
「この情報は国中の全ギルドで共有されます。なんといいましょうか、この情報の中のあなたはレベ
ルです。あなたを貴方だと証明はできます。よくわからない表現になってしまいましたね。」
言いたいことはわかる、名前ではなく存在自体が記録されるみたいなものだろう。
いきなり魔力を水晶に吸われた。
ステータスで確認したが吸われたMPは10だった。
だからあらかじめ確認したのだろう。
すると水晶が暗く光る。
暗く光るとは不思議な表現だがきっとこれが一番適切な表現だろう。
引き付けるような美しさがある。
しばらくすると水晶の中からペンダントが出てきた。
宝石のようなものと鉄のような色のタグが付いている。
「これはあなたのランクを示すものです。」
「ランク?」
「はい」
俺が持っている赤銅色のペンダントのタグにはおそらくこの世界の10の数字が書いてある。
「タグの色が金、銀、銅、の三つでそれぞれ数字が10~1までの30段階です。またクエストの受
注は依頼書をそのペンダント、ランクタグと一緒に水晶に押し当て魔力を流し込みます。これはやっ
てみればわかりますよ。」
押し当てる水晶はカウンターにあったものだろう。
「ランクはどうやったら上がるんですか?」
「基本的には依頼を一定数こなすことです。自身のレベルの上昇でも上がると言われていますがこれ
はなんとも。依頼の達成で上がらなかったとしても冒険者ギルドがランクを上げる場合がありま
す。この処理はギルドマスターしかできないんですけどね。それと、ランクで受注できる依頼が変わ
ります。自身のランク以上も受けれはしますが原則安全のため、ギルドのランクには従ってください
ね?」
いたずらそうにお兄さんは笑う。
「何かほかに聞きたいことはありますか?」
「今はありません。」
「何かあればお聞きくださいね。」
「はい。」
「それと、ランクタグの再発行にはお金がかかります。お気をつけください。」
「わかりました。」
冒険者ギルドの看板には一番後ろに球体、そして剣が交差しているマークだ。
水晶は冒険者ギルドの象徴のようなものなのだろう。
クエストはかなり多かった。
害獣の駆除、薬草採取、ゴブリンの掃討、王都までの警護、店番など様々だ。
最初はなにを受けるのがいいのだろうか?迷っていると、
「あんた一緒に行かないか?」
振り向くと俺ぐらいの年齢の若い冒険者がいた。
「俺の名前はカリスって言うんだ。」
「俺は幸多朗だ。」
「コウタロ?」
幸多朗などは発音しにくいのだろうか?
「ああ、コウタだ。」
「よろしくな」
まだ行くと言っていないんだが...。
話だけ聞きに行くことにした。
クエストは近くのアスガという村をたびたび襲撃しているというゴブリンの掃討だ。
数は10体いないらしいが女性が攫われたりと被害が出ているらしい。
カリスは10体くらいなら楽勝だと言っていた。
が、実際に女性が攫われている。
数はわからないが頭数自体は増えているだろう。
「カリス、本当にこいつ連れていくの?」
「顔だってその、わからないし...。」
目の前で言うのか...。
カリスはレイとアンという双子とパーティーを組んでいる。
この世界は綺麗な女性が多い。
というか綺麗じゃない女性を見ていない。
男性もそうだ。
「モテモテだな。」
そう言うとカリスは
「そうかな。」
と言って照れていた。
「私たちはそういう関係じゃないから!!」
レイが顔を真っ赤にして言い、アンはうつむいて耳まで真っ赤だ。
なんだこれ...。
三人は同じ村出身でゴブリンに出身の村が襲われたこともあり行きたいそうだ。
ただ、ゴブリンの掃討は賃金が安く装備や移動費だけでも取り返せないことがほとんどだ。
それを頭割りするんだから当然誰を誘っても来ない。
三人のレベルはカリスは21残りの二人は19で、ランクは銅の7だった。依頼もそれなりにこなし
ており経験はあるらしい。
ただのゴブリン退治ではお金も稼げないからアスガまで薬草を回収、魔物を倒しながら進み、アスガ
で売却。ゴブリンを倒したのちまたアイテムやドロップを集めるそうだ。
売却して貯まったお金とクエストの報酬金はクエスト達成後に俺に3割くれるそうだ。
レイとアンはカリスに抗議していた。
悪くはないが宿屋を開けることになる。
俺には仲間がいないからこういう経験は貴重だろう。
「いつ出発するんだ?」
カリスは急に真面目な顔で
「できる限り早く出発したい。ゴブリンの被害が大きくなっても困るからな」
と悲しそうに言った。
女二人はカリスを見ている。
カリスはいたって真面目なことを言っているだけだが嫉妬でおかしくなりそうだ。
一周回ってもうどうでもいいが。
「わかった。ただ準備をさせてほしい。一日待ってくれ。」
「ああ分かった。ありがとうコタロー」
コタローって誰だよ。そもそも幸多朗だし、コウタって言っただろ。
「コウタだ。それと分け前は四人で等分にしてくれ」
「コウタだな、すまない」
カリスは頬を申し訳なさそうにかいている。いちいちイケメンは絵になるな。
「等分でいいのか?」
「俺はクエストを受けるのが初めてだ。なのにレベルの高い三人とクエストを受けれるんだ。分け前
が少し少なくても文句を言えないような立場だろ?」
「本当にありがとうコウタ。これからよろしく」
そういってカリスは手を出してくる。
答えないわけにはいけないだろう。
フルフェイスヘルムをとってカリスの手を握り返し
「こちらこそ」
そのあとアンの方を見て
「顔はこれだ。」
そういってヘルムを被る
アンは面食らっていた。
「ありがとうコウタ。」
「いや、明日ここでいいか?」
「ああ。わかった。」
パーティー申請が来た。承認するとHPとMPがゲージのような形で見えるようになった。
数値としてはわからないがこれだけわかれば十分だ。
俺は組んだことがなかったため知らなかったが情報の開示設定があり本当にゲームの様だった。
「あんたらを警戒しているわけじゃないが、まだレベルは隠させてくれ。」
「ああ、構わないよ!」
「ありがとう。」
そう言い、俺はギルドから出た。
道具買わなきゃな。
あとレベルだ。早いところ20くらいまで上げてしまいたい。




