犬猿の仲のEとF
気になることはあるが、シルヴァ先生が嘘をついているようには見えなかった。
が、ダンジョンの遠征中に抜け出せということはやはり残りの勇者は殺すのだろう。
見捨てて本当にいいのだろうか?
勇者が多ければ多いほど魔王とやらの討伐も、各地で起こる魔物による被害も減るんじゃないだろう
か?
殺すことに意味があるのだろうか?
勇者は普通の人間や魔物より経験値が多いのだろうか?
疑問は尽きないが、そうでもない限り勇者自体を減らす理由が考えられない。
明日はE、Fクラス合同の作戦会議だ。
名前がわかる人間もいる。
翔という優しくてハイスペックなイケメンにいじめられていた俺の名前を知らない人は逆にいないか
ら単純な会話は問題ないだろう。
もし本当に見捨てるのなら俺は作戦会議に参加する必要はないだろう。
死にたくないのは事実だが、死ぬ人間がそばにいて助けない人間を本当に人間と言えるのだろうか?
頭がおかしくなりそうだ。
今日はもう寝よう。
三人がいたならどうしただろうか?
きっと三人が全力でシルヴァ先生と戦ったとしても勝てないだろう。
部屋には俺以外いないのに騒がしい。
胸が...いや、心臓はいつも通り同じペースで動いている。
はぁ...。
考えたら眠れなくなる性質なんだ。
翌朝目が覚めた時には、まあ、ずっとまどろんでいたような感覚だったが。
疲れはある程度とれていて眠くはない。
まあ、話だけは聞きに行くか。
班は15人でEクラスが7人Fクラスが8人だった。
「足手まといが8人もいるのかよ。」
それが話し合いのスタートだった。
まあ、終わっているのだが。
もう喧嘩だった。
ほぼステータスが変わらないという主張と、実際にFクラスだと判断されているという主張がぶつか
っていた。
1班だけは完全にまとまっていた。
伊藤たちがいた班だ。
伊藤の戦闘スキルはE、Fクラスではそこそこ有名で、顔もいいためほとんど揉めなかったようだ。
生き残るならあの班だろう。
うちの班の話に戻るが、E、Fクラスが仲が悪いため、そのFクラスの中でも最低の評価の俺が何を言っ
ても基本意味がないだろう。
「とりあえず明日のことを話さないか?」
だが、とりあえず話は振ってみる。
できないのとやらないことは同義ではない。
「一番弱いお前が何指揮ってんの?」
じゃあお前が仕切ればいいだろう...。
やはりダメでした。
なんだかこいつらなら死んでもいい気がする。
言い合いはしばらく続いたが、
「Eクラスはそんなに優秀ならお前らが前に行けよ。」
とうちのクラスの奴が言った。すると、
「いやいや、よく考えろよ、俺らが不意打ちでケガしたらどうするんだよ?」
本当にめんどくさい。
そのあともずっと言い合いをしていた。
昼食前には全く決まる様子はなかったが最終的には俺一人が戦闘で決まった。
なぜ一番弱いやつを先頭にするのか?魔法型は俺以外の全員で守るそうだ。
俺要らなくないか?
まあ悪いが、こんな奴らが死のうがなんとも思わない。
なんとも思わないは言い過ぎかもしれない。
どす黒い感情と理性がせめぎ合う。
他のことについては何も決まらなかった。
どうせ実戦でも揉めるだろう。
まあ、リーダーがいなければこうなるよな。
伊藤の班は戦闘の際の確認に行き俺たちはまだくだらない言い争うをしている。
シルヴァ先生に教えてもらっていて本当に良かった。
こいつらと仲良く死ぬなんてごめんだ。
だからと言って主体的に死んでほしいかと言われればそうではない。
話し合いは中途半端なところで終わった。
まあ、俺たちには高いステータスもある。
戦闘中に立て直すことなど簡単なことだろう。
好きにしてくれ。
俺は部屋に戻り今は素振りをしている。
筋力は上がったが他は言うほど上がらない。
今はステータス上昇というよりは武器をうまく扱うために使っている。
剣筋は初めて模擬剣を握ったよりうまくなっているは勿論綺麗になっているが、剣筋自体が綺麗かと
いわれると首をかしげざる得ないが、上手くなっているのだろう。
繰り返すことは大事なはずだ。
剣を振り、筋トレを終えて寝る。
窓から入る風が気持ちよかった。
俺は明日どうするべきだろうか?
わからない。
ただただ時間は過ぎる。




