宮田のイライラ耐久レース
ダンジョンへ到着した。
みんな緊張からか誰も喋らない。
騎士が目的であるダンジョンのマッピングのやり方について説明した後、冒険者がこのダンジョン内に出現する魔物の説明をする。
いるのは基本的にはゴブリン・コボルト・スライムだそうだ。
この種類のモンスターはどこのダンジョンでも生息が確認される。
なぜどこにいるのかというと、ダンジョンから生まれることもよくあるだろうが、ダンジョン外から侵入しているのではないか?と言われている。
ダンジョン内でモンスターが生まれる瞬間を見たことがある人間がそもそも少ないため、まだ正確な情報はわからないそうだ。
このダンジョンは初心者~中級者向けでボス部屋までのマッピング行うが、ボスとの戦闘は行わない。
中級者向けダンジョンは数がなぜか少ないらしく、ダンジョンボスが倒れるとダンジョンの機能が失われるため、絶対に倒すなと言われた。
ランタンやナイフなど道具の準備もできた。
「宮田君戦闘にいってくれないかな?魔物が怖くて...。」
「わかったンゴ...。」
「ありがとう!!」
そういいつつ西田さんが自然に手を握ってくる。
都合いいンゴね...。
とりあえずは自分を先頭に、後ろに男を一人、次人女が二人、前が自分を含め男3人だ。
そのあとに冒険者たちが続くが基本戦闘には参加してくれないため、特に関係ないだろう。
ダンジョン内は外とは魔物の出現率が違い、非常に戦闘が多くなった。
一回目の戦闘はゴブリン二匹だった。
戦闘場所は左右が狭く、二人で並んで通れるかわからないくらいだった。
「行くぜ!」
大剣をもている佐伯が先行したため続く。
ただ動ける範囲が少なく佐伯はうまく剣を振れていなかった。
なので壁を蹴り、ゴブリンを挟み込むように佐伯の逆側に立ち剣を抜く。
「え、すご...。」
西田さんがそう言っているが、なぜ戦闘に参加しないのか...。
佐伯が詰めるのと同時に詰める。
ゴブリンが棍棒を振ってきたのを躱し、腕を軽く切る。
軽く切り傷を付けるつもりだったがゴブリンの細い腕が落ちる。
ゴブリンが狂ったように叫んだ。
距離を一気に詰め、ゴブリンの背面から喉元に剣を突き刺し切り払う。
血が噴出し、そのあと粒子になって壁や天井に吸い込まれる。
その瞬間けたたましい音が脳内で鳴り響いた。
全員音が鳴った用で皆驚いている。
今のがレベル上昇時に鳴ると言われている祝音だろうか?
中毒になりそうな音ンゴねぇ...。
が、今は戦闘中だ。
ステータスが気になるが後回しだ。
西田さんはどうやら確認しているようで喜んでいた。
まだ、戦っている仲間がいるンゴよ...?
「オラァ!!」
佐伯が強引に剣を振っている。
剣は壁に当たり火花を散らし、ゴブリンに当たらず床に激突する。
「くそッガァ!!」
と叫び無理やり大剣を振り払い、ゴブリンの胴体を吹き飛ばした。
ゴブリンが壁まで血をまき散らしながら吹き飛ぶ。
「イエーイ」
大剣を地面に突き刺しピースを作っている。
土煙を出していたところから、内臓を垂らした状態のゴブリンが決死の形相で小型のナイフを構えて油断している佐伯に向かって走る。
そのゴブリンを蹴り飛ばし、2mほど転がったゴブリンにやり投げの要領で剣を投げつける。
「大丈夫ンゴか?」
「あぁ...。助かったぜ。ありがとな。」
佐伯は少し青ざめた顔で笑っていた。
この世界では敵を倒すと経験値が手に入る。
ならば、総獲得経験値上昇の有無で倒したかどうかは確認できるはずだ。
まあ、そんなことを言ってもこいつらには無駄だろうが...。
ステータスを見ようかとも思ったが、今ステータスの確認を行っても仕方ないだろう。
スキルの習得に関しては後から考えたいため、今は周囲の警戒を行う。
「スキル習得できるけど何にする?」
「けっこういっぱいあるね。」
「まじそれ、本当に悩むわー」
ゴブリンが一匹自分たちを見つけて走ってくる。
自分以外は冒険者と騎士以外は気づいていない。
「ゴブリン!!」
そう声を上げるが、
「なんだゴブリンかよ...。驚かせるなよ宮田。」
「宮田君お願い!」
本当にイライラするンゴ...。
ゴブリンが振った棍棒の軌道に合わせ剣を振り棍棒を打ち払えなかった。
ゴブリンは衝撃を逃がし飛んで、体を地面と水平にし、一回転させながら、棍棒を頭めがけて振っ
てくる。
無理やりそこから飛びのく。
態勢を崩し転がるが、頭に棍棒がぶつかるよりはいいだろう。
油断していた...。
ステータスで大きく上回っていなかったら攻撃が当たっていただろう。
やはり自分の剣は弱いのだろう。
ゴブリン相手に攻めあぐねている。
つばぜり合いになったため、自分の体でゴブリンを壁まで押し込み、そのまま上に切り払う。
血が壁を塗り、すぐに粒子になって消える。
この世界はゲームではないのだ。
ゴブリンと言っても武器の習熟度や戦闘技能の違いは勿論あるだろう。
ドロップアイテムの中に魔石が落ちている。
ごく自然にバックパックの中に入れる。
他のアイテムは騎士の方に預ける。
貯金は大事ンゴ。
すると
「宮田くん、ゴブリンなんかに手間取ったの?」
「え?」
「いや、何でもないよ。」
西田さんの顔には嘲笑と侮蔑が明らかに含まれていた。
非常に不愉快ンゴ。
早く終わらないンゴかねぇ。




