宮田の憂鬱
同じ班の5人はずっと人の悪口を言っていた。
よくそんなに飽きないものンゴね。
まあ、言わないだけで考えている自分も同じようなものンゴが...。
魔物にあれ以上遭遇することもなく、キャンプ地に到着した。
キャンプ地にでは、何度か行った実習の通りにある程度開けた場所にテントを密集させてたて、火を
四か所テントを囲うように焚いた。
魔物は火を嫌うものも多く、この地域は人間がいることがあらかじめわかっていれば近づいてこない
魔物や獣が他の地域に比べ多いためあえて目立つように火を用意するようだ。
見張りは自分から申し出た。
「さっきまで寝てたから見張りはやるンゴ。」
「ありがとう、宮田君!」
「よろしくな!」
実際のところ、生き物を自身の手で殺したという事実のインパクトが強い過ぎて、保存食の味もわか
らなかった。
よく吐かなかったと褒めてもらいたいレベルンゴ。
レベルは上がらなかった。
どうやらハウンド一体の経験値は3のようで今EXPが9/10だ。
何かを倒せばもう上がるだろう。
幸多朗氏が倒したハウンドは250だと聞いている。
「一体どれほど強いハウンドだったンゴか?」
つい声に出てしまう。
そんな通常のハウンドの約80倍の経験値を持つ化け物みたいなハウンドを一対一で倒したのだ。
ハウンドはそもそも獣と魔物の中間のような魔物で、魔力量が非常に少ない魔物だ。。
ハウンドは弱い魔物に分類されるが、それは魔力量の少なさに起因している。
もしハウンドが通常の魔物のように魔力を持てば危険な魔物に早変わりするだろう。
魔力はこの世界では通常の行動に当たり前のように使ったりする。
力を入れるという動作にかなり近いだろう。
重いものをつかむのや、高く飛ぶためなど、用途は様々で、魔物だって例外ではない。
魔力が少ない状態で素早く、走り、攻撃ができるのだ。
幸多朗氏が自分より強いということはステータス的には絶対に考えられない、が、きっと幸多朗氏は
自分より冷静で強いのだ。
自分たち三人が隣にいるということが幸多朗氏にかけているストレスは決して軽くはないだろう。
それはお前は弱いと目の前で言っているようなものだ。
だから、王族主導でステータス、スキルで教室を分けたと自分は思っている。
だが、幸多朗氏は今も努力を続けている。
そう考えれば、幸多朗氏が一番の化け物なのかもしれないが...。
ただ、この世界ではない、同じ魔物でも強さが全く違うことがある。
王都周辺地域はほかの地域より魔物が定期的に掃討されているため、弱い。
中には通常種のハウンドでありながら、今の自分より総合値の高いものもいるかもしれない。
警戒するにこしたことはないだろうが...。
まあ、今は考えても仕方ないだろう。
「切り替えるンゴ」
顔を自分で軽く叩く。
しばらく無心で筋トレをしていた。
よく考えたら。
まだ全員レベルは1だ。
「ンゴ?」
(パーティーメンバーの経験値は均等に割り振られます。)
つまり、今回一人だったとしたら、ハウンド1体は18、総獲得経験値は54だったのだろうか?
「…。はぁ...。」
悲しい気持ちになる。
だがそれでも通常のハウンド13体ほどだろうか?
少し自分の注意力が恥ずかしくなった。
パーティーの作り方なのだが、大体20m以内にいる人間に要請することができる。
要請が来たとき本当にゲームの中にいるようでテンションが上がったことは秘密ンゴ...。
体幹トレーニングが終わったので、次は剣を抜き、振る。
この世界の魔物や人間などは体内に多くの魔力を宿しており、死ぬと、魔力を抑えることができなく
なり、霧散する。
その際に、ドロップが魔物は起こるのだが、人間でも同じくドロップという現象はおこるのだろう
か?
試してみようとは決して思わないンゴが...。
霧散するものは血などもそうで、剣についた血が一瞬で落ちた時は驚いた。
そのため剣の手入れは少なくても問題なさそうだ。
だから剣の手入れについての講習が少なかったのだろうか?
このパーティーでは槍や大剣を持っている者もいるが、ダンジョンでうまく振り回すことはできるの
だろうか?
自身の剣を型を意識して右上から振り下ろし、左足を引き、態勢を変えながら右に薙ぎ払いつつ後退
する。
まだ、綺麗な型で振ることはできない。
幸多朗氏はそれに比べとても綺麗な剣筋で戦う。
剣筋が読みやすいというわけでもなく、純粋に剣筋と型が綺麗で作品のようなのだ。
こんな言い方はよくないが、きっとステータスやスキルが翔氏と同じであれば幸多朗氏の方が強かった
だろうと思う。
テントから西田さんの喘ぎ声のようなものが微かに聞こえていたが、まあ、緊張感のないものだ。
よくよく考えれば考えるほど、話せば話すほど、西田さんが可愛いとは思えなくなっていく。
王宮で給仕をいていたメイドや食事の準備をしていた人たちの方が、顔もそうだが、スタイルや言葉
遣いも丁寧だと思う。
きっと西田さんへの自分の思いは、所詮痛いオタクの幻想だったのだろう。
少し前なら西田さんの喘ぎ声を聞こうものなら思うところもあったかもしれないが、今は嫌悪感は
あれど、ほかには何も思わない。
一心に剣を振る。
結局魔物からの襲撃はなかった。
軽く朝食をとり、火を消して、ダンジョンへ向かって出発した。
一人で旅するようになったら、性格も含めて可愛い子と旅をしたいンゴねぇ...。




