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いつも通りの居残り練習


翔たちは昨日かなり遅くに戻って来たらしく、兵士に見つかり事情を聴かれたと言っていた。


その時は


「ダンジョンでの実戦で思いついた戦闘方があり、どうしても魔物相手に試したかった」


といい、軽く注意されたそうだ。


清田たちは死んでいたそうだ。


翔も


「清田だけなら逃げ切れたはずだ。」


といっていた。


仲間を守るためか、完全に不意打ちだったのかはわからない。


それに同行した騎士や冒険者もいなかったらしい。


どうなっているのだろうか?


俺が清田を殺すならきっと騎士、冒険者もその場で殺すだろう。


まさか騎士と冒険者に疑いを向け、王族がそもそも関わっていると思わせないためだろうか?


騎士、冒険者だけ先に殺され、ダンジョンに吸収された可能性も考えられるため、一人で考え結論を


出すのはよくないだろう。


それに、まだエンデ王があの人かもわからない。


わからないことだらけだ。


今日はこの世界のことについての講義だった。


うちのクラスは日がたつにつれて私語が多くなっている。


学者や、貴族が教えに来るため、勇者相手に強く出れないみたいで完全に無法地帯だ。


今あっているのは「ポーションについて」の講義だ。


ポーションは場所や地域によって名前が変わるらしく、等級もまちまちらしい。


効果が薄いものは治癒力を上昇させる程度のものらしいが、元の世界にあれば、それだけでもすさ


まじい効果だ。


そういう品は下級ポーションや粗品ポーションなどと言うらしい。


上級ポーションなどは流通数こそ少ないが、欠損した小さい部位を治すほど強力で、


中級ポーションでも刺し傷や切り傷をふさぐことはできるそうだ。


また、ポーションの材料はわかっているが、調合方法は薬師や調合師と呼ばれる人たちが一子相伝で


引き継いでおり、エンデ王によって貴族がポーションを作り販売することを原則禁止しているためら


しい。


貴族による市場の独占は前にはよくあったことらしいが、今は職を増やし、市民の生活を守るために


その法律が作られたそうだ。


また、正教会が「祝水」なるものを販売しているらしいが、これも基本的にはポーションに近いもの


らしい。


ただ、アンデット系の魔物に効果があるとか、周囲にまけば魔物が近づきにくくなるなどの効果があ


ったりもするらしい。


今は材料の薬草の見分け方についての講義中だ。


授業ペースもちょうどよくわかりやすいのだが、教室のやる気が足りない。


今回の先生がかわいそうだ。


清田の班など、まだ帰ってきていない班があるため、やんわり、もしかしたら死ぬのでは?


という雰囲気ができつつある。


だが、高くなった身体能力や魔法もあり、ほとんどの勇者が心配していないように感じる。


授業終わりにわからなかった薬草の見分け方について質問しに行く。


見てみないとやはりわからないだろうが、大体の特徴はわかった。




俺はまだハウンドに後れを取った雑魚勇者というレッテルを張られている。


ハウンドは倒したため、ぎりぎり勝ったから後れは取っていないと思うのだが、日本語的な指摘は無


意味だろう。


理由はここが異世界であることと、複数の人間が俺のことをそう思っているからだ。




今日もシルヴァ先生が指導してくれる。


今日は剣と盾を持って練習するらしい。


盾は思っていたより扱いが難しかった。


何度か受けたが、持ち手が思っていたより広く、剣を受けると中心からずれ、受け止めきれなかった


り、剣をわざと盾に沿って滑らされたときは対応できずに、顎をカチあげられた。


何度か、受け止め方の指導を受けた後、試合を何度か行った。


勿論手加減をしてくれてはいたが、盾で剣を受けると体が浮く。


いったいどんなSTRをしているのだろうか?


盾で頭を守るように掲げ、剣をシルヴァ先生の死角になるように持ち距離を詰める。


これは盾の使い方の訓練だ。


おそらく、盾に向かってシルヴァ先生は攻撃してくれるだろう。


シルヴァ先生が動いた瞬間盾から手を離し深くしゃがみ込み、時計周りに剣を両手で巻き上げる。


盾が吹き飛ばされそこにはシルヴァ先生の驚いた顔があった。


剣が当たりそうになったその瞬間あり得ない速度で剣が戻り渾身の回転切りを弾かれ、盾で押し倒さ


れる。


はぁ、と気だるそうに息を吐いたあと、


「小細工はきちんと武器を扱えるようになってからにしろ」


と言われ、頭を小突かれた。


「すみません」


そう笑いながら答える。


シルヴァ先生が小突いてくるときは基本動きが悪くなかった時だ。


めちゃくちゃうれしい。


シルヴァ先生が、もう一度、ため息をついた後、


「腕が上がらなくなるまで素振りして終われ。」


そういい、ここを出ようと歩き出す。


「わかりました!!」


と答え剣を振るう。


毎回なのだが、最初に剣を振って型を見てくれる。


おかげで、剣筋がめちゃくちゃ綺麗になった。


最初とは比べられないぐらい速度が速くなり、だいぶ思い通りに剣が動くようになった。



シルヴァ先生がふと立ち止まり、


「コウタロウお前昨日そのまま帰ったか?」


と聞いてきた。


俺の心臓が早鐘のように打つ。


「そっ、そのまま帰りました。どうかしましたか?」


「そうか...。それならいいんだ。」


今聞くべきだっただろうか?


あの時何をしに行ったのか。


どうして清田を助けに行かなかったのか。


シルヴァ先生はそれ以降何も言うことはなく、その場を去った。


俺は無心で剣を振るう。


汗がしたたり落ちる。


これは、運動で出た汗だろうか...?


それとも冷汗だろうか...?



閲覧、ブックマーク、評価本当にありがとうございます。

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