恐怖 ※
目が覚めるとまあ、土の上でした。
壁側によけてある。
さっき起こったことは夢だろうか?
夢じゃないとむかつきすぎて頭がおかしくなりそうだ。
伊藤が俺の頭を蹴り飛ばしたのかはわからないがきっと伊藤だろう。
時間もそこまでたっていなそうだ。
LV 4
EXP 253/500
SP 220
HP 10/30
MP 13/13
STR 14
ATK 14
VIT 16
DEF 12
INT 9
RES 7
DEX 8
AGI 14
LUK 5
最初のステータスから防御面もかなり上昇しているにもかかわらずHPが20
減っている。
レベルが上がっていなかったらきっと死んでいただろう。
俺があの強さで死ななかったからと言ってほかの人間にも同じことをしないだろうか?
他の人間の耐久力やできるかは知らないがステータスからのダメージの計算などわからないためなん
とも言えないが...。
同級生が人殺しはなんというか...。
まあ、人は獣ではない。きっと大丈夫だろう。
頭の左側がずきずき痛む。
ミクリデとの戦闘やハウンドとの戦闘後もそうだったが、HPが減っている時はその受けた痛みが回
復するまで残り続ける。
ただ、HPが完全に回復しても痛みが出るときがあった。
これは日数がばらばらで傷が深いほうが完全に痛みが消えるまで時間がかかった。
そういう世界の作りなのかは知らないが、不思議だ。
それはそうとして、2時間ほどだろうか?
壁に背中を預け休んでいた。
HPは20程まで回復した。
よくよく考えると気絶していた時間にも体力は回復していただろうから、20ダメージ以上はもらっ
ていたのだろう。
近くにいた騎士に近づき、今何をやっているか質問する。
騎士は少しばつの悪そうな顔をすると
「今は5属性の魔法の自主練習中だ...。その、さっきはすまなかった。」
「気にしないでくれ」
何か思うところがあったら医務室に連れて行けよと心の中で毒づく。
「サイグレ・ミリアルド様に医務室には連れて行くなと言われてしまってな。立てるようで何より
だ。これはサイグレ・ミリアルド様には言わないでくれよ」
すまなそうに言った後、厳つい顔で俺に見えるように笑い、肩を叩いた。
あの貴族勇者が死んだらどうするつもりだよ...。
いや、もしかしたら弱い勇者はそもそも勇者として認識していないのかもしれないが。
練習用の誰も使っていない案山子の前に行く。
確か5属性は火水風雷土だったはずだ。
火は「火よ」だったから、
「水よ」
そう唱えると体の中心から手に、手から体外に何かが流れる。
魔法を使うときは毎回こうだが、本当に不思議だ。
火は球体を作れたが水は100ccも作れず止まる。
この水は飲めるのだろうか?
口をつけようとした時、スキルと魔法の違いが少し頭によぎる。
今俺は体内の魔力のみを使って魔法を行使した。
もしかしてこの水は魔力の塊みたいなものではないのだろうか?
アイテムの講習で魔力を回復する マジックポーションと呼ばれるものがあるらしい。
俺みたいな魔力を安定して使うことができないやつが作ったものは飲めるのだろうか?
考えた末飲まないことにした。
そうこうしていると、伊藤が近づいてくる。
純粋に怖い。
「あんたって水出すくらいの簡単な魔法も使えないの?ほんとダサくない?」
本当にこいつはなんなんだろうか?
「ああ、伊藤さんと違ってこういう魔法にも一苦労なんだ。」
(だから邪魔するな。)そう心の中で叫ぶ。
「ここ私たちが使うからどいてくんない?」
なぜ、さっきまで使っていた場所で練習を続けないのか?
「わかった。」
取り巻きの奴らはただニヤニヤしている。
俺が離れると、本当にキモイやうざいなどと暴言が飛ぶ。
レベルが上がってから動体視力や聴力が少し上がった気がする。
まあ、それだけ陰口を俺が気にしてしまっているということだろうが。
勇者全体で言えることだが、弱い勇者はとことん軽視されるようになった。
俺も例外じゃない。
きっと今の状態でやれば一対一、同じクラスまでなら全員に勝てるだろう。
伊藤の攻撃だって見えないことはない。
ただ、これは伊藤等がレベルが上がった時にまた負けるだろう。
きっとこれは一生埋まらない差だ。
レベルは普通の大人が20だったはずだ。
俺はどこまで強くなれるだろうか?
強くなれなければ勇者に殺されかねない。
今でもそう思うのだ。
他人を殺すことに慣れてしまったとしたら俺はすぐに殺されるのではないだろうか?
もし、元の世界に戻れたとしても、そこで殺人を立証する方法はないだろう。
殺された状態で元の世界に帰れるのならまあ、できるかもしれないが...。




